見出し画像

法律の上限超えて服役、福岡 地検が求刑誤り、裁判所気付かず(4/30追記)

↓こんなニュースが出ていますね・・。

法律の上限超えて服役、福岡 地検が求刑誤り、裁判所気付かず | 2016/4/26 - 共同通信 47NEWS 

 福岡地検は26日、法律の上限を超える懲役を求刑し、裁判所も気付かず、上限より2カ月長く服役させた例があったと発表した。地検は元受刑者に謝罪。有罪確定後に裁判などの法令違反が見つかった際、検事総長が最高裁へ申し立てる「非常上告」の手続きを取った。

 地検は「猛省し、今後はより厳密な確認作業を行って発生防止に努める」としている。元受刑者の性別、事件の内容は明らかにしていない。

 刑法などは、窃盗や詐欺といった罪名ごとに刑罰を規定。これに再犯の場合は刑を重くしたり、逆に未遂や自首は軽くしたりするなどの加減をした範囲で検察官が求刑する。

・・いやー、びっくりですね。

服役までしちゃったわけですか。あーあ。

これって、
① 検察官が求刑ミスをし、
② 弁護人もそれに気づかず、
③ 裁判所も求刑ミスに気づかず法律の上限を超えた量刑の判決を言渡し、
④ 検察も弁護人も判決の違法に気がつかずに控訴もせず判決が確定し、
⑤ その判決に基づいて、法律の上限より長く服役をさせてしまった、
ということですよね?

これ、全てのきっかけは①ですが、特にマズイのは③④⑤だと思っています。

まず①について見てみましょう。求刑のミスですが、、

そもそも「求刑」ってなに? 

という話を少しします。

そもそも、求刑ってよく聞きますが、何なのでしょうか?

求刑(Wikipedia)
求刑(きゅうけい)とは、刑事裁判の手続のうち、検察官が事実や適用される法律についての意見を述べる(論告)に際し、検察官が相当と考える刑罰の適用を、裁判所に求めること。科刑意見ともいう。

面倒くさいのでWikipedia先生に任せてしまいましたが、要するに、検察官が裁判所に述べる「量刑に関する意見」です。

これを間違えるのはプロの法律家である検察官としては恥ずかしいことです。

でも、検察官が「こういう風に刑罰法規を適用するのが良いと思います」と陳述する内容を間違えていたところで、刑事訴訟全体の手続きとしては、どうってことはないはずです。だって、何の強制力もないですからね。意見の内容を間違えたからといって国家賠償をしなければならなくなるような違法とはいえないでしょう。

てことで、上記の①は、単にみっともないというだけのような気がします。

同様に、②も、弁護人としては気がつくべきだったとは思いますが、依頼者との関係ではみっともないだけで、そこまででもないような気がします。

ちなみに、求刑のミスは時々あります。没収求刑を忘れる場面などはまあまあ見かけますよね。

問題は③以降です。

③裁判所が求刑ミスを見過ごして法律上あり得ない判決を言い渡した

これは完全に「アウト」です。

検察官の求刑は所詮は意見です。そんなの関係なく、裁判所がちゃんと法律を適用して法定内の量刑の判決を言い渡せば済む話です。

裁判所は、特定の事件に法を解釈適用するお仕事ですから、適用ミスは、仕事上のミスとしてはど真ん中のミスです。

ただ、ミスは誰にでもあります。
ミスがあり得るからこそ、日本の裁判は三審制を採用しているとも言えます。

判決内容に違法があるわけですから、検察官は控訴しておかなければなりませんし、弁護人も被告人の権利擁護に努める職務があるわけですから控訴しなければなりません。そういったチェックは、検察官や弁護人のお仕事です。

今回は、それを見過ごしているわけですから④はマズイです。弁護人が気がつかずに控訴せずに確定して身柄拘束の期間が延びてしまったら弁護過誤に問われるかもしれません。

そして、最後、⑤ですが、確定した判決の刑の執行は検察官の指揮の下で行われますが、これもそのときにきちんと気がつかなければダメです。法律を超えて刑務所に入れちゃったわけですから、当然違法な身柄拘束です。⑤もアウトです。

てことで、関係者全員、揃いも揃ってミスを見過ごしたわけですが、執行まで終わっていたというのは珍しいケースではないかと思います。

二度とこういうことが起きないよう、気をつけたいところです。

続報(4/30)

↓こんな記事が出てますね。

上限超え懲役刑判決、裁判所は「侵スベカラズ」なのか(前): http://www.data-max.co.jp/280429_ymh_01/

「・・・福岡地裁はデータ・マックスの取材に対し、「事実関係を確認しているところなので、お答えできない」とコメントした。・・・」

検察は謝罪していますが、裁判所は謝罪していないようですね。

こんなの、地検にどの件か問い合わせれば一瞬でわかるでしょう?

マッタク・・。

おわり

#ニュース #法律 #雑学 #裁判 #裁判官 #弁護士 #検察官 #刑事事件

写真:Marco Cortese


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?