3月15日

3月15日 真田千尋編
 
今日は香苗と一緒に渋谷でお買い物してきたよー!
来月から大学生になるんだし、お洋服とかいっぱい用意しておかないと。
憧れのキャンバスライフ、あれキャンパスライフだっけ?まあどっちでもいいや(笑)
何のサークルに入るか今から迷っちゃう!
 
そしてついに明日は卒業式。3年間、あっという間だったなあ。
色んなことあったけど、なんだかんだいって一高に通えてよかった!
こんなこと書いてたらもうすでに泣いちゃいそう(笑)
明日は最高の思い出作るぞー!
 
 
3月15日 福原香苗編
 
今日は千尋に誘われて渋谷へ。
別に悪い子じゃないし、嫌いってわけでもないんだけど、ぐいぐい来るところがちょっと苦手なんだよね。こんなこと口がさけても言えないけど(笑)
まあ大学も違うし、そのうち会わなくなるっしょ。
 
そんなことより明日卒業式じゃん。まあ別に特に何とも思わないけどさ。
てか一番泣くのは間違いなくコバセンだと思う(笑)
 
 
3月15日 木場紀彦編
 
明日の準備に追われて結構バタバタしたけど何とか帰宅。明日はついに卒業式か。
教師になって早4年、僕にとって初めての卒業生。
去年高三の担任を任せられた時は本当にできるのか不安だったけど、一年経って、本当にやってみてよかったと思えた。
 
でも心残りがないわけではない。
やっぱり卒業式にはクラス全員に出席してほしかった。
早川くんは明日志望校の二次試験があるということで残念ながら卒業式には出られない。
とても残念ではあるけど、こればかりは仕方ない。彼の元にも桜咲きますように!
そしてもう一人、桜井くん。
桜井くんはもともと不登校気味だったらしく、出席日数ぎりぎりで進級したものの高三になってからはほとんど学校に来ることがなかった。
僕自身、電話をしたり、何度か家まで足を運んだけど彼と接触することはできず、夏休みが明けてすぐ親御さんが退学届けを持ってきた。
結局彼とはそれ以来連絡を取っていないから今どうしているのかはとても気になる。
社会と関わりを断つ時間が長くなればなるほど、社会復帰へのハードルは精神的にも現実的にも上がっていく。
だからこそまだ若い今のうちに立ち上がってほしい。
よし、明日の卒業式が終わったら久しぶりに彼に連絡を取ってみよう。
彼がどう思おうと、桜井くんは僕の生徒だからね。
 
 
3月15日 早川智編
 
明日は聖峰大学医学部の二次試験。
第一志望はもちろん桜京大学医学部だけどまだ合否が分からない以上、受けるしかない。
学費的な面でも私立の聖峰より、国立の桜京の方がいいけど、こればっかりは蓋を開けてみないと。
しかも明日は卒業式。二年生になった頃から勉強ばっかりで行事に積極的に参加したわけではないし、特に思い出深いわけでもないけど、やっぱり三年間通った学び舎の修了式に足を運べないのは少しばかし寂しい気もする。
時間的に謝恩会には間に合いそうだから、まずは試験で全力を尽くすのみ。
明日のためにも今日は早く寝るとしよう。
 
 
3月15日 木場隆弘編
 
あと半月、あと半月でいよいよ社会人になってしまう。そう考えるだけで鬱になりそうだ。
なんとなく大学に入って、なんとなく就活して、なんとなく内定をもらったよくわからない会社で働く。
これから定年まで約40年。同じ会社で働き続けるつもりもないけど、これからずっと地獄なんだろうな。ブラック企業だったらもちろん最悪だし、ホワイトな企業でもずっと働き続けると思ったら真綿で首を締められてるようなもん。
80年生きられるこの時代に人生の半分を労働に費やすなんて、それ自体がまずバカげてるんだよ。
 
兄貴はいいよな。小さい頃からの夢だった学校の先生になって、大変そうだけど毎日楽しいみたいで。
てか今年のお盆に帰ってきたとき、今は高三の担任で大変だけどやりがいがある、なんて言ってたけど本当か?高三の担任だぞ?
進学にせよ就職にせよ、進路決定という人生でも指折りの大事な時期。そんな子たちの担任を務めようなんて正気の沙汰じゃない。
そういや兄貴のクラスには不登校のやつまでいるって言ってたし、考えられない!
 
はあ、とにもかくにも憂鬱だ。こんなことばっか考えてたらもっとダメになるな。
とりあえず明日はゼミ飲みあるし、そこで楽しむしかないな。
 
 
3月15日 青井達也編
 
もう半月で就職か。あと半月。半月しかない。
明日は久しぶりのゼミ飲み。ここで自分の思いを伝えないとダメだよな。
でも怖い。ただただ怖い。
多分こんな悩みを話したらみんな、もう最後のチャンスなんだし当たって砕けろ、なんて無責任なこと言うんだろうな。人の気も知らないで……僕は誰に怒ってるんだ。
でも本当にそうなんだよ。この気持ちはそう簡単に出していいものではない。
 
自分がそうだと気付いたのは中学生の時だった。
野球部のエース、内藤先輩。
放課後になると野球グラウンドが見える廊下に足を運び、練習風景をいつも見ていた。
でももちろん、そんな気持ちを伝えることはできなかった。
大学に入ってからネットを通じてそういう人と繋がったこともあったが、それでは何も満たされなかった。
もしかしたらあの時の感情は勘違いだったのかもしれない。そう思う日々もあったが、ゼミに入ってから間違っていなかったことを確信した。
 
僕は臆病だ。もし誰かにこの日記を見られたらと思うと、直接的な表現を書くことをためらってしまう。
ここまでの内容を読まれたらバレてしまうのは分かっているけど、それでも最後の一歩が踏み出せないのだ。
それは、思いを伝えるという点でもそうだ。
僕が思いを伝えたら、それは単にOKをもらえるかどうかで済む話ではなくなる。
いくら多様性の時代、マイノリティーが認められる時代といえど、現実問題そう簡単ではないこともわかっている。
 
ああどうしよう、木場くんに思いを伝えるべきか、伝えぬべきか。
多分明日この日記帳を開いた僕は、思いを伝えなかったことを激しく後悔し、それと同時に安心するのだろう。
 
 
3月15日 内藤賢太郎編
 
高校二年生になってケガで野球部引退して何気なく始めたギター。
まさかプロを目指すようになるなんて、あの時は思ってもみなかった。
でも今日で俺も24歳。気づけばいい歳になってしまった。
このまま続けていていいのだろうか。
大学にも行かず、俺はこれで食っていくんだと豪語したあの頃。
確かに周りを見れば、俺たちより年上のバンドマンなんて腐るほどいるが、たまにそんな奴らを見ていて妙に惨めな気持ちになる時がある。
夢を追っているうちは若者だ、って誰かも行ってたけど、そんなの言い訳にしか聞こえない。
いや、待てよ。今の、いいかもしれない。これならいけるかもしれない。
今の俺にしか書けない詩がある気がしてきた。
 
俺もまだ24歳。ここからだろ!
 
 
3月15日 桜井昭夫編
 
学校に行かなくなってからというもの、毎日に何の変化もなくなった。
だから日記を書き始めたのだ。
でも毎日に何の変化もないということは何も書くことがないというわけで、久しぶりにこの日記を取り出した。
前回書いたのは、9月か。
ああ、普段文字なんて書かないからもう疲れてきた。
そういえば卒業シーズンじゃないか。
 
おいマジかよ、調べてみたら明日うちの卒業式じゃんか。
ああうちじゃないか。確か退学届け出したってあいつらが言ってたな。
どうせ行く気なんてなかったけど、そういわれるとムカつく。
あいつらはいつだってそうだ。
 
だからって俺はニュースで見るような馬鹿な真似はしない。
もしあいつらを殺したりしてみろ、それこそお先真っ暗だ。
だからあいつらには俺を産んだ償いとして死ぬまで甘い蜜を提供してもらうんだ。
 
ああ、もう日が昇ってきた。寝よう。
 
 
3月15日 桜井徹編
 
明日は一高の卒業式だと母さんが言っていた。
どこで間違ったんだろうな……
 
 
3月15日 桜井道子編
 
明日は一高の卒業式です。
本当なら昭夫もそこにいたはずなのに。
 
今年の担任の木場先生はとても親身になってくれて、もしかしたら昭夫も変われるかも、そう思ったけど、昭夫は何も聞いてくれなかった。
 
私は、私たちは、どこで間違ったんでしょう。
せめて薫だけでも、いい企業に就職できますように。
 
 
3月15日 桜井薫編
 
お母さんから電話が来た。薫だけでも幸せになってね、って。
お父さんもお母さんも気づいてない、そういうところに問題が潜んでるということに。
別に私は昭夫の味方じゃないし、むしろ嫌いだけど、でも可哀想だとは思う。
 
昔っから昭夫は甘やかされていた。
多分うちの親戚に男の子が昭夫しかいなかったからだろうな。
それがよくなかったんだと思う。
甘やかされて育てられた子が学校とかにそのまま行ったら、そりゃあ浮いちゃうよ。
それでも高校まではなんとか行けたみたいだけど、これから先どうするんだろう。
まあ私には関係ないこと。
 
私は就職したらもう、実家とは縁を切るつもり。
育ててくれたことには感謝するけど、こっちにまで過干渉されたりしたらたまったもんじゃないし。
亮太くんともいい感じだし、とりあえず昭夫が事件とか起こさないことを祈ってる。
 
 
3月15日 諸岡亮太編
 
今日は合同説明会に行ってきたけど、たくさんためになる話を聞けて良かった!
はあ、最高に楽しい!最強かも(笑)
 
あでも中高生くらいの時は、今が一番最強なんて思ってたっけ(笑)
あの頃は楽しかったな。野球に明け暮れた中学時代、バンドに燃えた高校時代。
自分の小遣いじゃ届かなかったギター。親父に、お金を貸してくれって頭下げたら、出世払いだからな、って買ってくれたんだよ。今でも宝物だぜ!
最後の文化祭終わってからは受験勉強頑張って、今でも覚えてるよ、合格発表が卒業式の日だったんだ。合格ってわかった瞬間にみんな喜んでくれて、胴上げまでしてくれたんだよな(笑)
あの時の友達は今でも一緒に飲む最高の仲間、やっぱり友人は財産!
 
大学に入ってからも本当に楽しかったなあ。
サークルで薫ちゃんと出会ってさ、一目惚れだったけど全然思いなんて伝えられなくて、でも、当たって砕けろ、って周りからの言葉信じて告白したら見事成功!あの瞬間は忘れられないね!
 
まだどんな職種にするかとかは決まってないけど、きっと就職したらしたで楽しいんだろうなあ!
青臭い考えかもしれないけど、色んな人を笑顔にできる、そんな仕事がしたいな!
 
そしていつかは薫ちゃんと結婚!いやこれはさすがにまだ早いか?(笑)
でも薫ちゃんにOKをもらった時から、この人を一生幸せにしようって決めてたんだ。
だからいつかは薫ちゃんと結婚して、子供も欲しいな。
女の子一人に、男の子一人がいいかな。時に厳しく、時に優しく、真っ直ぐ育ってくれればそれだけで十分だよ。
 
あいけないいけない、変な妄想の話してたらもう日付回りそうだ。
明日も早いし、今日は寝よう。おやすみ!

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