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新人作家の出版SNS戦略を勝手に考える

noteをきちんと更新しようと決めてはじめた頃、数日目に書いたnoteでいきなり公式のおすすめに選ばれてクラッカーのポップアップが出た。

そこではじめて公式のおすすめ欄があるのを知って、それ以来はとりあえず何か新しいのを読みたいときは公式おすすめを読むようになった。

そして数日後、自分のnoteが読まれないという人はそもそもnoteを書いていることすらみんなに伝わっていないのでは?おもしろさとは無関係かもよ?という内容のnoteが公式おすすめに載っていた。

なかなかおもしろい着眼点だなぁ、と思ってアカウントを見に行ってみると、ほかのnoteもバッサリ系で好みだったのでフォローして、どうやら自分と似た時期から毎日更新をはじめた人だという事を知った。

それが、のちにcakes×noteFESで受賞してcakes連載を持つことになる吉玉サキさんだ。

このたび、彼女の連載がめでたく書籍化するらしい。出版社さん、PRさんもなにかとがんばってくれているらしいのだけれど、note同期として何かできないかなー?と思っていたらこんなことをご本人が言っていた。

あ、これなら力になれるかもしれない。

・・・というわけで、頼まれてもいないしプロのPRでもマーケの人でもないけど、新人作家さんの出版SNS戦略 吉玉サキ売込みverを考えてみます。


まずは、出版のゴールはどこなのか?

自分の作品が本になることを目指している人のゴールは、出版されることそのものだ。つまり、本になって刷り上がったら終わり。

正直いうと、これは自己満足なので自費出版と変わらない。出版社さんにとっても著者にとっても、本というのは一つの手段に過ぎない。ゴールはその先であり、届けたい色々な人の手元に届いて読まれてこそ価値がある。

願わくばさらに先の重版、そしてベストセラーになるなり、長く必要な人にじっくりと読まれる名版となるなりがゴールだろう。

では、そんなゴールを達成するにはどうすればいいんだろうか?

まずは売れること。そして、売れるためには注文される必要がある。

ざっくりと書くと本の流通はこういう事らしい。

この流れで普通に考えると、力を持っているのはどこだろう?

おそらく取次店だろう。出版社への注文の権限を持ち、書店へは卸す数や卸先を選べる力がある。

じゃあ、取次に営業をかけるのがいいのだろうか?

たぶん、著者本人が取次店に営業をかけても相手にされなそうだ。自分が取次店だとしたら、新人著者の発掘よりも間違いなく売れるであろうベストセラー候補をいかに早く大量に抑えるかを考える。

では新人著者はどこで勝負をすればいいんだろうか?


新著は毎日200冊、出版社は全国4000社以上

無名の新人でメジャー初出版の場合、前例がないからおそらく初版は数千部がいいところだろう。そうなると、必然的に全国津々浦々の大型書店すべてに配本は不可能なはずだ。

経済産業省・商業統計調査によると全国書店数は2006年度で14555店舗だったのが2017年度で10266店舗。右肩下がりなので2019年の今はおそらく9000〜9500前後だろう。大型書店に絞れば1000店舗くらいだろうか?

各大型店舗に10冊ずつでも10000冊。初版数千部では不可能だ。

新著が出版されるペースは1日当たり200冊。出版社は日本全国で4000社あるそうだ。毎日のように新著の入って来る大型書店で、1週間平場を独占できるのか?棚に入れられて背表紙になればまず売れないだろうし、普通にダンボールで送っても下手したらずっとバックヤードで開梱すらされずそのまんま返本される可能性すらある。

となると、そもそも勝ち目のある売れそうな(売ってくれそうな)書店に絞るか、もしくは露出の大きいメガ書店で確実に売り場に平置きで出られる戦法を練るしかない。

でもちょっとまてよ?本当にそこでしか戦えないのか?


先ほどの図をもうちょっと書き込んでみた。要するに本が売れればいいんだとしたら、著者ができることは「情報の流通量を増やす」ことと「買いやすい環境を整える」ことだろう。

そして現代はすでにネットもリアルも入り混じっているので、リアル書店での買いやすさと並行してネット書店への導線整備、感想のシェアなどの情報の流通量を増やして交流を促進する必要もある。

ならば、青い矢印で書いた方向性なら著者からも仕掛けられるんじゃないだろうか?

そう考え始めると、著者本人ができることがたくさんある。


新人作家の出版戦略

では、「情報の流通量を増やしながら、ネットでもリアルでも買いやすい環境を整える」ためには新人作家は何をすればいいのだろうか?

とりあえず、できることは片っ端から全部やるという前提で、できることを考えてみた。

左側は主にSNSなどでの情報流通を増やす戦略。右側はリアル書店での販促に繋がる方法だ。

細かくなるけどそれぞれ説明しよう。

(1)ハッシュタグ設計
本の感想をシェアしてもらったり、レビューを見て読むか決めるときにハッシュタグで検索しやすいように公式でハッシュタグを先に指定しておこう。

これをやらないとハッシュタグが乱立してアクセスがバラけるので不利だし不便だ。短めでミスタイプのしづらいものがいいだろう。できれば本の帯に入れてもらえればベストだ。


(2)NAVER感想まとめ
ハッシュタグ設計ができていれば、ハッシュタグを追うだけで感想ツイートなどを集められる。あとはNAVERで書籍の感想まとめページを作って各SNSのつぶやきを拾い集めればいい。

これの狙いは感想をまとめて読む→Amazonで注文などのルート作りなので、当然だが商品リンクは必須だ。本当はファンの人がやってくれれば1番いいし著者も楽なので、呼びかけて頼んでみるのも手だ。


(3)Amazon予約へ誘導
Amazonでの新著ランキングは今ではリアル書店も無視できない存在だ。逆に言えば、初速でAmazonランキングのどれだけ上位にタッチできるかが重版できるかを大きく左右する。

つまり、フォロワーさんやファンのみなさんに予約をお願いして回ろう。予約がたくさん入るほど、人気のある作家・ファンのついている作家だとPRできる。


(4)書籍販促アカウントを作る
これは一長一短なのだけれど、個人的には書籍の感想ツイートをRTしまくったり、お礼を言って回るなどの接触を著者本人のアカウントでやりすぎると、軽めのファン予備軍の人が離れやすいと思う。

濃いファンの囲い込みにはいいかもしれないが、本は買うほどじゃないけど・・・という人にフォローを外されるのは痛い。専用アカウントを作って、たまにそっちを誘導するくらいがいいと思う。


(5)二次創作の要素を入れる
ハッシュタグ設計の際に一緒にやれたらいいのだけれど、本の感想の盛り上がりを見つつ「自分はこうだった」を語れるように参加型の設計をする。

今回の吉玉さんの本は山小屋の話なので、例えば #わたしと山小屋 のハッシュタグで自分の山小屋トークを教えてください!と言って回るなど。情報の流通量を増やす=露出を増やせば本が売れる可能性が高まる。

よかった作品は著者本人がnoteでとりあげます!とかもいいと思う。BarBossaの林さんが恋愛小説を出版された時に #ファーストデートの思い出 というタグでこれをやっていた。


(6)ISBNコードを明示
ISBNコードとは国際標準図書番号と呼ばれるやつで、本の裏についている13桁の数字だ。これさえわかれば書店さんで本が置いていなくても注文ができる。

つまり、初版部数の少なくて全国の本屋に置いてもらえなくても、注文して買ってもらえる可能性が高まる。「書店さんにない場合はISBN _____で注文か、この画面を見せてください。」と書いておけばいいだろう。販売の機会損失を防ごう。

ちなみに今回の本は出版社が平凡社
ISBN-10: 4582838073
ISBN-13: 978-4582838077
これで書店さんは注文できる。


(7)手書きPOP配布
大型書店への配本の際には手書きPOPなどの売り場づくりグッズを作り込んで一緒に送ろう。

デカすぎると敬遠されるし、組み立て式も嫌がられる。置くだけ簡単で売り場が華やかになりつつ自分の本も目立つやつを考えよう。その際にはtwitterアカウントとハッシュタグ記載を忘れてはいけない。


(8)書店へ直筆の手紙
全国各地で置いて欲しいニッチだけどこだわりのある書店さんへ直接営業しよう。直筆の手紙とサンプル1冊献本くらいが良さそうだ。

これは出版の決まった段階で配本スケジュールを逆算して、書店さんが取次に注文できるくらいの余裕を持って行うのがベストだろう。もちろん出版社さんに相談して、こういうプロモーションを嫌がる売場は避けて、小さめのオーナーに直接つながる店を選ぼう。

発売直前の今のタイミングは正直いえばだいぶ後手だが、やらないよりは良いのでやるべきだ。


(9)販売特典をつける
書店さんとのタイアップや初回購入特典のポストカードやステッカーなど。

あと、売り先は何も書店とは限らない。全国の山小屋に直売するという方法もある。舞台が山小屋だけに、山小屋ユーザーや山小屋経営者には響きやすいはずだ。5冊や10冊くらいなら買ってくれる気もする。


(10)リアルイベント
わかりやすいのは対談やトークショーやサイン会。でも今回のは山小屋の話なので、話題性とかを考えたら僕だったらどこかの山小屋で開催する。聞きたい人には山を登ってきてもらう。

山小屋イベントはSNSでのシェアなど電波の面でかなり不利な気もするけれど、コアなファンが集まりそうだし話題性も高そうだ。集まっている写真も絵になると思う。


+αで、できること

他にもやれることはたくさんある。リアル書店で平置きしてくれているのを見つけたら写真撮って教えてくれたらシェアします!も有効だろう。これは買える本屋さんの情報をシェアするのが目的だ。

あとは当然だけどnoteでTOP固定で新著出ましたの告知ページを書いておく。取扱書店の情報をまとめたページを作っておくのも大事だ。

そして、当たり前だけれど、どんな思いでこの本を作ったのかを語る裏話のnoteも書いた方がいい。編集者の方が1冊の本作りの思いの過程を綴ったnoteなんかは思わず買いたいと思ってしまった。

狙って書けとは言わないし、狙って書いても読者にはバレるだろう。ただ、さらけ出せばいい。自分のハラワタをさらけ出すのは勇気がいるけれど、届く人にはきっと届く。そう信じて書くしかない。


以上、思いつく限りの戦略をざっと書いてみた。

全部を今すぐとりかかれ!!!というのが従来の僕のスパルタなスタンスなのだけれど、町田の結界に阻まれて自由に動けない吉玉さんの憂鬱な日々のことも見ているので、無理のない範囲でやってみて欲しい。

一冊でも多く本が売れることを1ファンとして願っています。

あ!吉祥寺のお店も営業許可出たのでスナック山小屋もやりましょう!せっかく本もできたんだし、本購入者限定でやるとかならここでも数冊は確実に売れるハズ。打てる手は全て打ちましょう。協力します。


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・・・関係ないけど、ペンネームの吉玉サキってすごく良い。検索で類似名がないのでほぼ一発で検索できる。思いつきでつけた(って読んだような気がする。違かったら訂正します)と言っていたけれど、偶然にしてもとても良いネーミングだと改めて思う。


これ書いたら即日で
twitterで新刊PR用アカウントを開設していた。
こういう人は、きっと伸びる。応援したい。


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