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【目印を見つけるノート】1149. ボヘミアのミュシャ

今日は行く先々で蝶を見ました。
全部、白い蝶でした。

日中はいいお天気でしたね。
ほんのちょっとだけ、足を伸ばしてきました。

アルフォンス・ミュシャ(八王子夢美術館)の展覧会です。

ミュシャはとても人気のあるアーティストで、展覧会も頻繁に開かれます。日本人に好まれるということもあるでしょうが、この方が1枚の油彩画ではなく、ポスターをはじめあらゆる印刷物・パッケージに関わり制作し続けたことと無縁ではないでしょう。

1960年代にアンディ・ウォーホルが自身の作品を多く複製して広めたことは有名です。そのはるか前にそれを本格的にしていたのはミュシャを先頭とする、アール・ヌーヴォーの描き手、作り手です。その「仕事」は建築から市販製品のパッケージにいたるまで普及していたのです。

こちらの展覧会は個人収集家のコレクションで構成されていますが、膨大な数にのぼります。じっくり見ると結構時間がかかります😅 
当世きっての女優、サラ・ベルナール主演の舞台『ジスモンダ』のポスターから展覧会は始まります。世紀末の絢爛の欠片がそこできらりと光っていました。あ、ライトの反射か😅

1897年上演、サラ・ベルナール主演の『椿姫』『ロレンザッチオ』ポスター(ルネサンス劇場)。文字とイラストレーションの配置が美しい。

香水瓶のラベル。

私は微睡む女性が好きかな❤️

この方は貴族や裕福な人の居間に飾られるような「絵」ではなく、誰もが手にできる、見ることができる「アート」を次々と世に出していったのでした。咲き乱れる花、優美で魅惑的な女性、直線と曲線の配置などよく考えられたデザインの数々が並べられています。その中にはよく目にするものもありますし、食器、カレンダー、お菓子のパッケージ、本の挿絵、証券、切手など、「このようなものまで」と驚くぐらいいろいろありました。圧巻だったのは壁にところ狭しと展示された図案デザインです。作品の構図を考え抜いて制作していた様子がよく理解できます。

ルネサンス期にラファエロは工房を設け、構図を決めた上で弟子たちと分担して絵を描いていましたが、その緻密さをちょっと思い出しました。

ミュシャによる本の挿絵、よく描き込まれています。原画が見たいですね。

華やかなデザインと戦争の時代はだんだんそぐわなくなり、アール・ヌーボーはだんだん姿を消していきます。その中でミュシャは戦争の影響を色濃く受ける故国チェコのための作品を多く制作するようになります。実は私個人としては、それを見たいと思っていたのでした。
優美さは残しつつも、故国の困難を描く『スラブ叙事詩』の作品群は油彩で描かれた重厚な大作です。
ヤン・フスが登場する作品(演台の人物、部分)。

フスは宗教改革の先駆的な人物として有名な神学者ですが、ベーメン、ボヘミアと呼ばれたチェコの国民的英雄でもあります。
オーストリアのハプスブルグ王朝が解体し、チェコスロバキアが建国するとミュシャは古くて新しい国のために紙幣や切手、国章などのデザインを無償で請け負ったそうです。

少年の足下には解かれた足枷があります。

しかし、戦争は彼を打ちのめしました。1939年、ナチス・ドイツの侵攻によってチェコスロバキアは解体されミュシャはプラハで逮捕されました。
国際的な評価を得て、人々への影響力も大きいミュシャへの尋問は厳しいものだったそうです。釈放されたものの、その年の夏ミュシャは体調を崩して亡くなりました。

美しい絵、流麗なデザインだけではないミュシャという画家を見ることができて、個人的にたいへん感銘を受けました。民族と社会がどうあるべきかという議論も当時からあったようですが、時代の状況からすればやむにやまれぬものだったでしょう。
故国のために描くことは彼の画業のクライマックスだったのではないかと思ったりします。
この展覧会は所有者の方が許可してくださったので全て撮影OKでした。
素晴らしいことだと思います。
ありがとうございます。

アルフォンス・ミュシャさま、
あなたは類い稀なる創り手でした。
敬愛を込めて。

これしかないなあ🤔
スメタナ『モルダウ』(日本語合唱)

これね、私たちが中学で歌ったときは
♪ボヘミアの河よ モルダウよ
だったのですが、変わったのですね。
いつ変わったんだろう。
日本語がどうあれ、美しい曲です。
それでは、お読み下さってありがとうございます。

尾方佐羽

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