日本人の知らない日本語文法#1「とてもすてきですと思います」
ふと思い立ち、今回からシリーズを始めてみます。
シリーズ名は、「日本人の知らない日本語文法」です。
普段日本語を母語としている人たちは、日本語の文法を意識して使うことはほぼないのではないでしょうか。
もちろん、自信の日本語の使い方に自覚的であったり、繊細に言葉を使い分けているという人もいるでしょう。
「ら抜き言葉」など、有名な日本語の文法事項もあります。
しかしこのシリーズでは、そんな人達を含め多くの日本語母語話者が気づいていない日本語文法を、
留学生の文法の間違いから見つけていきたいと思います。
第1回である今回、取り上げるのは「とてもすてきですと思います」です。
ちなみに、どこが間違っているでしょうか?
答えは「すてきです」の部分です。
ここは、正しくは「すてきだ」ですね。
「とてもすてきだと思います」
これでしっくり来ます。
では、「すてきですと思います」はどんな文法規則に反しているのでしょうか?
この文の「思います」の前についている「と」は、
引用を示す格助詞です。
「~と思います」以外にも、
「~と言います」
「~と聞きます」などさまざまな動詞とセットで使われます。
その中で「~と思います」に関しては、
「と」の前に来る用言の形は普通体でなければならないという規則があるようです。
普通体というのは、いわゆる「です・ます」ではなく「だ・である」の方をイメージしてもらえればよいと思います。
つまり「すてきです」ではなく「すてきだ」、
「行きます」ではなく「行く」といった調子です。
ちなみに日本語学習者がこの普通形をそつなく作れるようになるまでは、
意外にも長い時間がかかります。
中級、上級レベルの学生も頻繁に形を間違えています。
母語話者の感覚だと意外に感じてしまいますが、
この普通形習得にどんなハードルがあるのか?
これも私が感じている日本語学習の不思議の一つです。
そんなわけで「すてきですと思います」は、
「『と』の前なので、普通形を使いましょう」と教えることになります。
ですが、まあ言いたいことは充分に伝わりますし、
「すてきだ」ではなく「すてきです」と言うことによる
独特の丁寧さ、ふわっとした優しさを感じる気がして、個人的には好きです。
また日本語学習者のさまざまな言い間違いを見つけたら、
♯2に続きます!
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