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No.602 小黒恵子氏の記事-22 (童謡ルネッサンス)

 こんにちは。小黒恵子童謡記念館です。

 今回は、2001年に日本海新聞に記載された記事の一部に「小黒恵子童謡記念館」の事が紹介されています。

潮流   童謡ルネッサンス
                    わらべ館館長 大石清人
   
日ごろ、なりわいに、はたまた雑務に忙殺されている私は、ふとわれに返った時、四囲の自然に故郷の情景を重ねて見ることもある。
すると、いつしか家族や友達と歌った童謡がのどを衝く。
その童謡の歌詞をたどれば、なつかしい家族の愛情や仲間の友情が思い出され、おのずと活力と希望がわいてくる。
このことは、私ひとりにとどまらず、多くの日本人に共通する体験であることは、多くの識者の指摘するところである。
これほどまでに、日本人の心の奥に染み付いて、美意識や情感の源泉となっている童謡(わらべうた・唱歌を含む)は、世界に誇るべき日本文化であり、次代に継承されなければならない国民的財産と言えよう。
このような童謡は、主に十九世紀後半から二十世紀初頭に生まれ、多くの国民に愛唱されたもの。
しかしながら、二十世紀後半からは、レコード童謡の一時期を経て、ラジオ・テレビ時代を迎え、新しい子どもの歌が黄金期を迎える。しかし、概してアニメ番組の主題歌やCMソング、刺激的なリズム性の強い歌が、子どもたちに好まれるようになった。
また、価値観の多様化と家庭の暮らしや学校教育の変化などにより、国民的愛唱歌であった童謡は、次第に歌われなくなっている。
ここで童謡運動の現状を考えてみたい。
一九六九年には、この危機的な状況を憂うる童謡詩人や作曲家が大同団結して、日本童謡協会(会長・初代サトウハチロー、二代中田喜直)を設立し、真に子どもたちのものとなる童謡の創造と、その普及のための各種の事業を展開されている。
次いで、一九九〇年代には、青少年の健全育成の観点から、自然の美しさや優しさ、家族の愛情と仲間同士の思いやりを童謡を通して、子どもたちに身につけさせようとする市民の童謡運動が、青少年問題に熱心な地域で試みられ始めた。
また、時を同じくして、童謡の著名な詩人や作曲家の業績を顕彰すると同時に、新しい童謡を発信しようとする地域づくり運動が、童謡詩人や作曲家を輩出した地域において始まった。
一九九一年には、鳥取県が中心となって全国の童謡運動団体をはじめ、行政団体や教育並びに報道の各機関に呼びかけて、第一回全国童謡・唱歌サミットが開催された。
その後、年ごとに運動の輪が広がっている。
ここで、各地で行われている童謡運動の先進的な事例を紹介しよう。
川崎市の小黒恵子童謡記念館では、例えば童謡の「たき火」を歌う場合、参加した親子で落ち葉を集めてたき火をたき、焼き芋を作って一緒に食べるなどして、歌詞の中の物語を実体験しながら合唱するなど、童謡が子どもたちの心に焼き付くような情景の演出まで配慮して行われている。
千葉県では、代表的な童謡を集めた親子歌集「金のうた銀のうた」を各家庭にまで配布し、教育委員会から委嘱された童謡普及指導委員が、家庭やグループまでも出前指導している。その成果が、毎年開催される市民童謡コンサートで発表されている。
鳥取県では、一九八九年に全国に先駆けて開催した第一回「ふるさと」音楽賞日本創作童謡コンクールから、昨年の第十一回コンクールまで、鳥取生まれの新しい童謡を数多く発信された。
また、本年からは、その成果を踏まえ、鳥取生まれの新しい童謡をはじめ、古い童謡まで広く普及し、県民が日常の暮らしの中で歌えるようになることを目標に、「とっとり童謡音楽祭・童謡フェスティバル」が開催される。第一回とっとり童謡音楽祭は、来る一月十四日(日)午後一時三十分から、淀江町文化センターにおいて、県内の童謡グループ・個人など十五団体(約三百人)と著名な童謡歌手三人(たいらいさを、稲村なおこ、渡辺かおり)の出演により盛大に開催される。
また、第十二回「ふるさと」音楽賞日本創作童謡コンクール入賞作品発表会が、同時開催される。
一九九五年に開館した「わらべ館」(鳥取市)では、童謡の部屋において子どもの歌に関する展示を行っているほか、年間を通じて新しい子どもの歌や童謡・唱歌に関するイベントと講演会を開催している。
今後は、童謡の部屋で来館者が唱歌などの合唱体験ができるよう努力したい。
これまで紹介した各種の童謡運動や活動を基軸としながら、叙情豊かで真に子どもたちの徳性と情操がかん養される童謡が、大人から子どもまで愛唱される童謡ルネッサンスが、二十一世紀において全国に広がり、花開くことを期待したい。
第一回とっとり童謡音楽祭の問い合わせは鳥取県文化振興課(電話0857-26-7134)へ。

日本海新聞 平成13年(2001年)1月10日

現在は、川崎市に遺贈され、リニューアルしてオープンしています。色々とイベントも行っていますので、当館ホームページでご確認ください。

  最後までお読みいただき、ありがとうございました。
  次回は、2001年に新聞に掲載された記事を、ご紹介します。(S)

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