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採用における母集団の人数、どう計算する?

「来年の採用に向けて必要な母集団の人数を見積もって欲しい」

あるとき、上司からこう言われたとき、皆さんならどう算出するでしょうか?




必要な母集団の見積もり、どう行う?


「母集団」は、元々統計学の用語で、「調査や研究の対象となる全体」のことを指します*1。

この概念は採用の文脈では「自社の求人に興味・関心を持っている候補者の集団」を指すことが多いでしょう。より具体的に定義すれば、① 自社が求人していることを認知している候補者、② 自社を検討対象の一社としている候補者、③ 自社が求める人材要件に合致している候補者、などの条件を満たす候補者の集団が、採用の母集団となります。つまり、自社を検討する応募者の集団ということです。

さて、こうした採用の母集団に関わる人数を計算する際、どう算出するのが良いのでしょうか?

さまざまなアプローチが存在しますが、ひとつは最終的な「採用人数」から逆算する方法があるでしょう。具体的には次の手順で計算します。

  1. 最終的な採用人数を決定する

  2. 過去のデータや業界の平均値を参考に、「書類選考の通過率」、「一次面接の通過率」、「最終面接の通過率」などを見積もる

  3. これらの数値を元に、以下のように逆算して「必要な母集団の人数」を計算します。

    • 採用人数 ÷ 最終面接の通過率 = 最終面接を受けるべき人数

    • 最終面接を受けるべき人数 ÷ 一次面接の通過率 = 一次面接を受けるべき人数

    • 一次面接を受けるべき人数 ÷ 書類選考の通過率 = 必要な母集団の人数

採用プロセスに応じて、この計算式が変わってきますが、こうした計算によって必要な応募者数やリクルーティング活動の規模を見積もることができます。


母集団見積もりで見落としがちな3つの視点


さてこうして見ると、母集団の見積はそれほど難しくないことがわかるでしょう。

ただし、このアプローチではいくつかの重要な視点が見落とされがちです。代表的な3つの視点を確認していきたいと思います。


【見落としがちな視点①】 「期間」という要素が考慮されていない

母集団の人数を算出する際、しばしば見落とされるのが「期間」の考慮です。

たとえば新卒採用の場合、広報が解禁される期間(例、3月~5月)と選考が解禁される期間(例、6月~9月)では、必要な母集団の数が変わる可能性があります。当然ながら、その企業が採用活動を始める時期が遅いほど、全体の候補者数は減少します。したがって、母集団の人数も減少するでしょう。

母集団の数は状況により大きく異なるため、この期間を考慮して算出することが重要です。


【見落としがちな視点②】 「上限」が設定されていない

現実的にアプローチできる人数の上限も設定されていないこともしばしばです。

たとえば「新卒エンジニアの志望者数」を母集団として設定する際、その年の大学等卒業者数を上限とするのは、やや現実的ではないでしょう。この母数から更に、「情報工学系を専攻する学生の割合」や「自社のオフィスがある首都圏勤務志望の割合」など、いくつかの条件を考慮して現実的な人数を割り出す必要があります。


【見落としがちな視点③】 競合他社の影響を考慮していない

採用活動で競合となる他社の動きも、自社の母集団見積もりに影響を及ぼす可能性があると言えます。

たとえばその年の採用活動で、競合他社が積極的な採用活動を行っていたとき、明確に母集団の数が減る可能性が出てきます。昨今で言えば、「新卒初任給を大幅に引き上げる」「~~というユニークな福利厚生が使える」などです。こうした競合他社の影響も考慮しながら、現実的な母集団の人数を割り出したいところです。

他にも、その年の経済状況、業界の動き、地域の規制、そして自社のブランド力など、多様な要素を考慮に入れて母集団の規模を見積もることは重要です。さらに、母集団の規模は一度決定したらそれで終わりではなく、定期的に見直しを行い、戦略を必要に応じて調整することが求められます。

まさに母集団に必要な人数の見積は、こうした定期的な調整と柔軟性が必要なアプローチであると言えるでしょう。

*1 統計WEB「母集団」https://bellcurve.jp/statistics/glossary/809.html(2024年2月12日アクセス)

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