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実は「労働法」という名前の法律は存在しない!?

新聞やニュースで「労働法」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。

しかし実際には「労働法」という名前の法律は存在しないことをご存知でしょうか?

それでは、日常でよく聞く「労働法」とはいったい何なのでしょうか?




「労働法」は労働問題に関する法律全体の総称


労働法とは、労働問題に関連する法律全体の総称のことを言います。したがって、実際のところ「労働法」という名称の法律自体は存在しません*1。

では、その集合体を構成する法律として、具体的にどんなものがあるのでしょうか?

たとえば、労働者が働く条件の最低基準を規定する「労働基準法」、労働者の団結権と団体交渉権を保障する「労働組合法」、労働争議の予防と解決を目指す「労働関係調整法」です。これらは労働三法と呼ばれます。

また、最低賃金法、労働契約法、男女雇用機会均等法など、その目的に応じてさまざまな労働関連の法律が存在しています。

さて、これらの法律はそれぞれ異なる目的と背景を持っていますが、総じて、なぜこうした法律が必要になるのでしょうか?


「労働者を守る」ために労働法は存在する


労働法必要な理由のひとつは、「労働者を守る」ことにあります。
たとえば、労働法のひとつである「労働基準法」の歴史を紐解くことで、その存在意義を見てみましょう。

「労働基準法」が制定されたのは1947年のことです。当時の戦前日本は、労働条件が劣悪であり、労働者も厳しい働き方を強いられていました。しかし、政府としては、労働者は日本の再建という重要な役割を担うものであり、労働者からの協力を得ることが何より必要でした。そのため、その基準を定め、国際的に認められた労働条件を保障することにしたのです*2。

労働に関する他の法律もその狙いは共通しています。まさに労働者の権利と安全を保護し、公平で健康的な労働環境を維持することを目指しているのです。適切な賃金、労働時間、安全な職場環境など、労働法が存在しなければ、労働者は不適切な労働条件や不公平な待遇に対抗する手段を持つことが難しくなります。


労働法がその力を最大限発揮するためにも、労働法は必要不可欠


しかし、労働法は労働者だけでなく、国家や企業にとっても重要な法律です。労働者は経済活動を支える役割も果たしています。したがって、労働者が自身の力を最大限に発揮するためには、適切な労働環境の整備が必要不可欠です*3。また、労働者と雇用者の間で紛争が生じた場合でも、労働法は公正な解決を促進します。労働法の存在により、双方が公平な立場で問題を解決することが可能となり、無用な争いを減らすことも期待できます。

全ての関係者がルールを遵守し、安心して働ける職場環境を作ることで、国家や企業は大きな利益を得ることができるーー労働法はまさにそのためのものとも言えるでしょう。

これらの労働法に関する理解は、労務担当者だけでなく、全ての人にとって重要な基礎知識です。一人ひとりがこれらの理解を持つことで、公正で安全な労働環境を確保し、組織全体の成功に貢献することが可能となると考えられます。

(参考情報)
*1 厚生労働省(2023)『知って役立つ労働法 働くときに必要な基礎知識』
*2 「労働基準法の改正の歴史概要、直近の改正、M&Aへの影響」 https://paradigm-shift.co.jp/column/150/detail(2024年1月28日アクセス)
*3 「東洋大学 労働法の存在意義と履行確保」 https://www.toyo.ac.jp/nyushi/column/video-lecture/20230412_01.html(2024年1月28日アクセス)

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