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【読書】 中二階の原理

中二階の原理

この本で中二階の原理は、社会や組織を動かす1つの原理として解説されています。

もともと「中二階」とは、住居での1階と2階の間にあるフロアのことであり、デザイン性を追求する目的でも使われます。

しかし、この本では、日本の社会システムや構造と現場との間に生じる軋轢やねじれを解消するために用いられるものとされています。


歴史的な出来事

廃藩置県

日本の歴史や社会システムにおいて、海外と比較して大改革が比較的平和裏に行われた事例として、廃藩置県や農地改革が挙げられます。

廃藩置県の場合、江戸時代後期の黒船来航をきっかけに、日本は外国の干渉による弱体化を食い止めなければなりませんでした。

これに対処するため、幕末から明治維新にかけて、日本は急速な近代化を進めるために、政府(二階)は従来の藩制を廃止し、都道府県制を導入することで、中央集権化(中二階)を進めました。

この改革により、藩主や武士(一階)の立場が変化し、新たな社会システムが構築されました。


農地改革

農地改革は、第二次世界大戦後の日本がアメリカなど連合国の占領下に置かれた際に行われました。

この時期、日本の経済復興と民主化を目指すため、政府(二階)は大規模な農地改革を実施し、農地の所有者や地主(一階)から強制的な叩き買いを行い、小作地を国有化し小作人に分配することで、農村社会の格差是正を図りました。

このような強制的な措置にもかかわらず、一揆や抵抗運動があまり起こらなかったのは、当時の日本社会は、戦争の敗北や連合国による占領によって、国民の連帯感が強まっており、一致団結して改革に取り組む意識が高まっていたことが1つの理由として挙げられると思います。

農地改革によって多くの小作人が自作農になり、自分たちの土地を持つことができたため、農村社会における格差が縮小された民主化の影響でもあるでしょう。

中二階の役割を果たす強制的な叩き買いが、政府(二階)と農地所有者や地主(一階)の間の軋轢や捩れを解消し、農地改革が比較的平和裏に進められたと言えます。


コロナウイルス

現代の例としては、新型コロナウイルスの感染拡大に対処するために、日本政府(二階)が指導し、国民(一階)が対象となり、外出自粛や検疫措置(中二階)が行われています。

このパンデミックは、世界中で多くの国が経験しているように、人々の生活や経済活動に大きな影響を与えています。

日本政府は、感染拡大を抑えるために、緊急事態宣言や感染対策を策定し、国民に対して外出自粛やマスク着用、ソーシャルディスタンスの確保などを求めています。

しかし、海外においては全く逆になっており、自粛というお願いのような形ではなく、ロックダウンのような強制力を伴うことが多かったのです。海外ではそうしなければ人の移動を抑えられなかった。

日本では強制力のない(同調圧力はあるが)自粛で抑えたままで海外の強制力のある施作と同じ効果があったことを考えると、国民性と中二階がマッチしたようにも思う。


まとめ

大雑把に見れば、国と国民や現場の間に生じる黒い感情や軋轢、ねじれを解消したり緩衝する効果が中二階の構造にあると思う。

この中二階が機能するのは、日本の国民性が大きく関わっているのは間違い無いだろう。簡単に言えば人間同士の関係性である。

仕事を例にとってみれば、日本のメンバーシップ型雇用は、企業内での人間関係やチームワークを大切にし、相互扶助を重んじることで、組織の安定性や調和を目指しているのに対し、

アメリカのジョブ型雇用は、個々の職務やスキルを重視し、従業員が自己責任でキャリアを築くことを求められます。企業は従業員に対して、業務遂行に必要なスキルや経験を報酬に見合った形で評価し、雇用関係を維持しています。

重視されることの違いにより、ここでは2階(会社)と一階(現場)がスムーズに回るように大きな影響を与えるのは、人同士の関係性に重きを置く日本の雇用体系であり、そのための緩衝材として働く中二階があるからだろう。

つまり中二階の構造とは、本の社会システムや組織において、一階(国民や現場)と二階(国の制度や企業)の間に生じる軋轢や捩れを解消する役割を果たす要素だと言えるのでは無いだろうか。

意図してかどうかはわからないが社会の変化や緊急事態に対応し、一階と二階の間の調和を図り、社会全体が円滑に機能することを目的としているように思える。

他国と比較しても独特な特徴を持っており、日本の歴史や文化、国民性と深く関連しています。

この中二階の構造を理解し、適切に活用することで、日本の社会や組織がより効果的に機能することもできるのではないでしょうか。

少し意識しながら行動してみると、意外にうまくいくことが増えるかもしれませんね。

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