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代替わりに成功してくれた事が何より嬉しい神保町のソウルフード的カレー(まんてん/神保町/カレー)

我が家は父も母も山の人だったため、夏は父親の趣味で山登りに、冬は母親の趣味でスキーに連れて行かれていた。そういうお家柄かつ家が板橋という事で、都営三田線で1本の神保町は子供の頃から慣れ親しんだ街だった。
登山道具を見て回り、スキー用品を見て回り、最後に本屋を流して、どこかで食事をして帰る、そんなコースが神保町巡りの定番だった。

それから時が経って20歳そこそこの頃、私はライターとして神保町を職場とする事になった。当時は金もないので、遊べる場所、買えるもの、そして食べられるものは限られていたが、そんな私にとって「学生の胃袋を満たしてウン十年!」という神保町名物の老舗は、寂しいお財布事情の人間でもご馳走が食べられる大事なお店だった。

が、今や失われてしまったお店も数多く、最近では遂に「半ちゃんラーメンの元祖」ことさぶちゃんが後継ぎもないままに閉店となってしまった。

そんな「〇〇店閉めるってよ」なんてニュースばかりが目立つようになって来た神保町界隈で、ちゃんと後継ぎを作って今も元気に営業してくれているのが、カレーのまんてん。
ここはドカ盛りや激安で有名な「学生街のカレースタンド」といった趣きのお店である。食えない時代にこの店のジャンボにお世話になったなんて声が四方八方から飛んで来る、愛の塊のような名店だ。

この店のお約束、着席するなり水の入ったコップにスプーンまで入って出てくるという100点まんてんのスタート。まさにロケットダッシュ。
ちなみに左側の小さなカップに入っているのは、お口直しのブラックコーヒー。たまにどう使うのか分からず、カレーにかけちゃう人もいるのだが、食後の口直しに飲み干すのが王道。
ただ、カレーなのでかけて食べるのも実はアリなんじゃないかとも思える。

この店のメニュー構成は、カレー+揚げ物(カツ150円・コロッケ100円・ウィンナー100円・シュウマイ100円)の組み合わせで、カレーのみは500円、大盛りは550円となっているが実際は500円(残したら罰金)、大盛りの更に上を行くジャンボサイズが600円となっている。

私は金がない頃に「いつか自分の金で好きに飯が食えるようになったら、まんてんでジャンボの全部乗せを食べるんだ」と夢見ていたのだが、いざそういう年齢になってみると肉体の限界的な意味でそんなもん食える訳がなく。

だが、10年後には確実に何がどうなっても食べられない身体になっているはず。ならば今頑張ってワンチャンに賭けてみるのもいいのではないだろうか、これが最後のチャンスなのではなかろうか……と思いつつ……

大盛りカツカレーにウィンナーをトッピングするのが今のオレ様の限界。
いやあ、久々に食べたけどやっぱ旨かった。
この店だけはいつ来ても思い出の味がそのまま出て来やがる。

ちなみに、まんてんのカレーは超もっさりタイプ。そしておそらく豚ひきと思われるポロポロのお肉がたっぷり入っており、グラタン皿にご飯がギュウギュウに詰められている。
そこに米→ソース→揚げ物→ソースとミルフィーユのようにカレーソースがかけられていて、掘っても掘っても減らない魔法の米。食べ応え充分なんてもんじゃない。良かった勢いでジャンボにしなくて。

また、この店は揚げ物が灼熱の温度で出てくるので、いきなりガブり付くと口内が酷い事になるので注意。

そういえば、今でもたまに先代の「申し訳ないね!」が口癖のお父ちゃんが店に出ているそうなので、次回はお父ちゃんがいる時を狙って行ってみようと思う。


[店名] まんてん
[住所] 東京都千代田区神田神保町1-54
[営業時間] 11:00~20:00(土のみ16:00まで)
[定休日] 日祝


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