やろか水 ~ 「まんが日本昔ばなし」の個人的な名作を紹介するエッセイ 第6回
<タイトル>
やろか水
<ポイント>
退廃的な世界観?
<解説>
地元・秋田県での大雨による災害を受け、この話を思い出したんです。
「やろか水」は愛知県に伝わる昔話で、柳田国男の「妖怪談義」にも記述されています。
この妖怪の初体験は、子どものころに読んだ水木しげる先生の「妖怪101話」という本であり、荒れ狂う水を表現したその画力に圧倒された記憶があります。
まんが日本ばなしのほうでは、退廃的な世界観を持つ「鬱回」として、ファンの間では知られているようです。
以下、内容の要約になります。
木曽川沿いにある古知野という村では、毎年のように大雨が降り、それにともなう河川の洪水に悩まされていました。
愛知県の地理にはくわしくないのですが、現在の江南市だという情報がありました。
この土地は低地であり、雨季ともなると村人たちは、生きた心地もしなかったと言います。
男性陣は女性子どもを避難させ、休む暇もなく堤防の補強作業に明け暮れていました。
やっとのことで雨がやみ、雲間から月が見えたので、男たちはひとつ安堵し、帰路に着いてつかの間の休息を取ることにします。
しかし水門の番をするため、十四郎という男だけは、ひとりその場に残ったのです。
すると見慣れないひとりの若い娘が、月見草の花びらを川に散らして遊んでいます。
なんとも危なっかしいので、十四郎は彼女を自分の家に避難させることに。
娘はおもむろに、自分の身の上話を語りだします。
3年前の大水が出たとき、彼女の亭主は水門の番をしていたのですが、上流から「やろうか、やろうか」という不気味なうなり声が聞こえてきたとのこと。
まるで挑発でもするようなその声に、娘の夫は「よこさばよこせ!」(よこすのならよこせ)と返してしまいます。
すると突如水面が盛り上がり、彼をたちどころに飲みこんでしまったのです。
旦那を失ったことで自暴自棄になっている彼女に、十四郎は健気な対応を見せます。
しかしふいに雲が隠れ、3年前と同じように、川上から「やろうか、やろうか」というあのうなり声が聞こえてきます。
娘の制止も聴かず、氾濫を心配する十四郎は川へと向かいました。
「やろうか、やろうか」のうなり声はどんどんと強くなってきます。
彼はたまりかね、「よこさばよこせ!」というあの言葉を叫んでしまうのでした。
要約はここまでにいたしますが、オチは言わずもがなでしょう。
なんとも救いようのない話です。
しかしながら、何やら後世へ向けての警句めいているようにも感じ、深く考えさせられます。
自戒せよというメッセージというか。
えらく重くなってしまって申し訳ありません。
また折に触れて更新してみたく思います。
ではでは。
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