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杓島 ~ 「まんが日本昔ばなし」の個人的な名作を紹介するエッセイ 第8回

<タイトル>

杓島しゃくじま

<舞台>

岡山県 瀬戸内海

<ポイント>

物量作戦……!

<解説>

 岡山県に伝わる昔話で、瀬戸内海が舞台となっています。

 寿永2年(1183年)に起きた水島灘みずしまなだにおける源平合戦から数百年が過ぎたころ。

 静かな晩秋の夜、一隻の千石船せんごくぶねがその場所をとおりかかります。

 千石船とは千石(約150トン)単位の米を積載できる、主として中世に使用された大型荷舟のことです。

 すると突然、船の舵がきかなくなり、海の底から「しゃくを貸せ……」という不気味な声が響いてきました。

 「杓」は水をくむ道具ですね。

 いっこうにやむ気配のないかけ声に、耐えられなくなった若い船子ふなこは、「そんなに欲しいのならくれてやる!」と杓をつかみます。

 年老いた舵取りは必死になって止めますが、もみあいになった勢いで杓は海の中へ。

 すると青白い手が海の中から現れ、その杓を握りしめます。

 そして次々と、まるでコピペでもするように、海の中からたくさんの杓を握った手が出現するではありませんか。

 白い手がわれ先にとばかり伸びてきて、船の甲板に杓でくんだ水を注いでいきます。

 塵も積もれば理論により、船の上はだんだんと水で満たされていきます。

 船は次第に重くなってきて、ついには沈みはじめます。

 しかしここで、年老いた舵取りが別の杓を取り出し、その底を抜きます。

 そして底のない杓を海に投げこむと、やはり白い手がそれをつかみます。

 ところが底がないわけですから、当たり前ですがくもうとした水はすり抜けてしまいます。

 こんな具合に底なし杓が大量にコピペされてしまって、白い手はやがて消えていったのでした。

 船の舵もきくようになります。

 浮かばれない亡霊たちは真水を欲していたのだろうと、老いた舵取りの提案により、のちにこの海域をとおるときは、真水を一杯海に注ぐことになったということです。

 そしてその海に浮かぶ島のひとつは、「杓島」と呼ばれるようになったそうです。

 瀬戸内海に伝わる昔話として、これとは別に「船幽霊」が存在します。

 わたしは未視聴ですが、そちらも作品化されているようです。

 子どものころに見てトラウマをうえつけられた回のひとつですが、海のあるところには海の怪異があるということなのでしょう。

 次回は山の話でもしますかね、ほほほ……

 久しぶりの投稿になりましたが、最後まで読んでくださりありがとうございます。

 ではでは。

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