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【ネタバレなし】「ファースト・マン」の映画レビュー - 映画おじさん2019#02

こんにちは!
映画おじさんのアキヤマです。
ぐっさんが観ていない作品のテキストのみの感想第2弾、
「ファースト・マン」です。

評価:★★★★☆ 4

「セッション」「ララランド」と音楽を題材にした作品を世に送り出してきた若き天才デイミアン・チャゼル。
次に描くのは、人類史上月面に初めて降り立ったアームストロング船長。実在の人物のお話です。

予告編を観た時から感じていましたが、宇宙船に乗せられた時の閉塞感。閉所恐怖症にはたまらないです。
何時間も、下手したら数日間、座ったような体勢でずっといないといけないんですね。想像しただけで背筋がうすら寒くなります。

だったら宇宙なんて行きたくない。「ゼロ・グラビティ」の時にも感じた、“宇宙ってこわい” 映画です。

また、作品を通じてずっと感じていたのが、ライアン・ゴズリングが演じる主人公のニール・アームストロング船長が暗い。とても暗い。何を考えているのかわからない人間として描かれていることへの違和感。
今までは初めて月に降り立つという大冒険を成し遂げたヒーローとして捉えていましたが、そんな私の先入観が完全に覆されました。

月に降り立った瞬間の、
─That's one small step for man, one giant leap for mankind.
「人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍だ」

というアツすぎる名言が有名ですが、映画を観ていると本当にあの人が話したことなのだろうかと信じられない気持ちになります。

実際、アームストロングは口数が少なく、常に冷静な人間だったそうです。なのでかなり忠実に描かれているとのこと。
ライアン・ゴズリングも本人を知る人から直接インタビューをしてこの役に挑んでいるそうです。
感情がほぼ表に出てこないので、どう感情移入して観たら良いかわからない映画です。
そこで重要になってくるのが奥さま役の人なんだと思います。

アームストロングの奥さまのジェシカは、本当はどうか知りませんが、かなりのヘビースモーカーとして描かれています。彼女にとって非常にストレスフルな日常だったことがわかります。
また、アームストロング夫妻に何かあった時は必ずと言っていいほど奥さまがタバコを吸うシーンが映ります。

感情がわかりにくいアームストロング船長のそのときの気持ちを奥さまを使って鏡写しのように表現してるのでは、と思いました。
船長が怒ってるときは、奥さまも怒ってる。喜んでいるときも同様に。

しかし、旦那さんがよくわからない宇宙に行ってしまうのを家で待つ不安感はハンパないですね。中東の戦場に行く旦那さんを案ずる「アメリカン・スナイパー」を思い出しました。「宇宙=戦場」と捉えても言い過ぎでは無いですね。

今作は場面に応じてさまざまな撮影方法を使っていることも話題になっています。宇宙船や人を描くドキュメンタリーなシーンは1960年代当時と同じサイズのフィルムで。
月のシーンではどこまでもクリアに見える宇宙空間を表現するために、高解像度のIMAXカメラを使っているそうです。
突然「月が異様にキレイ」とちょっとした違和感を感じましたが、そこは意図された表現だったようです。

また、同じく月のシーンでは一瞬「完全な無音」になります。このシーンの臨場感が本当にすごかったです。
空気が無い月面では、音がまったく聞こえない。
宇宙船の扉を開いた瞬間そんな状況になることは当たり前で、その当たり前を感じることができるシーンでした。

映画館という音響がしっかりした環境でないと味わえない感覚です。音が良いだけでなく周りの音もほぼ完全にシャットアウトできる場所は、私が知る限り映画館だけだと思います。
ぜひ映画館で観て欲しい映画。いつも言ってる気がしますがこの作品もそうです。

この感覚はデイミアン・チャゼル監督の映画に共通して存在するものである気がします。
過去作でも無音状態からのドラマチックな音楽という演出で、コレは映画館で観ないと味わえないなと思う瞬間がありました。
主人公が明らかにミュージシャンでは無い作品(ピアノで作曲していたというセリフがあるので楽器プレイヤーではあったよう)、ということでチャゼル監督作としては異色に見えていましたが、ちゃんと監督のカラーを出している作品でした。

「ララランド」では期待し過ぎていたので少し残念な感想でしたが、今回の「ファーストマン」はそこまで期待していなかったのもあってかなり良かったです。
デイミアン・チャゼルの次回作が非常に楽しみです。

↓原作本

↓デイミアン・チャゼル監督過去作品


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