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歳時記を旅する48〔雛(二)〕後*わだつみの風にたゆたひ吊し雛

磯村 光生
(平成十八年・十九年作、『千枚田』)

 伊豆の稲取温泉に伝わる雛祭りには、古く江戸時代後期の頃より、娘の成長を願う母や祖母手作りの「つるし飾り」が飾られる風習があった。
 百十の飾りにはそれぞれ謂れがあって、這えば立て、立てば歩めの親心を表す「這い子人形」をはじめ、厄が去るの「猿」、娘に虫がつかないように「唐辛子」など。
    花のように美しくと「花」もあるが、避けられる花もある。「桜」は「散る」、南伊豆に多い椿も花ごと「落ちる」、と船の転覆を意味するからという。同じく「水仙」もまた球根に毒があり「根に持つな」ということで避けているという。(つるし飾り工房『一都』角田さん談)

 句は、つるし飾りを海の風が揺らす。海の神もまた娘の成長を願っている。

(岡田 耕)

(俳句雑誌『風友』令和六年三月号「風の軌跡ー重次俳句の系譜ー」)

☆稲取温泉の「吊るし飾り」を SYNDY さんがレポートされています。
ご紹介します。這い子人形をご自身でも作られたそうです。

写真/岡田 耕(稲取温泉)



  



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