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「円」を買う理由が見当たらない

 4/23 CFTC(米商品先物取引委員会)のデータ(標題グラフ  ):
 ヘッジファンド・アセットマネジャーによる円の売越し ▼18万4,180枚
過去最高だった前週を上回り、データがさかのぼれる2006年以降で最大

 日銀の政策変更無しを受けて「円売り」に拍車。” Ms. Watanabe" =FXの個人トレーダーは「介入」期待で「ドル円」を逆張りで売っていた(円買い)ようだから「損切り」で値が飛んだように見える 

 「(円安は)今のところ(物価に)大きな影響を与えているということではない」

 植田総裁のこの発言に恨み節を言うトレーダーも多かろう。だが筆者は実は同意見。「円安」は「インフレ」の根本原因ではない日米欧とも "根っこ" はベビーブーマー引退に伴う人口動態の変化=「人手不足」である

 ただこれは学者出身者特有の素直さというか、市場心理に疎い部分でもある。金利差狙いの「キャリートレード」をしたくてウズウズしている向きにとってはまさに 「円、どんどん売ります!」の免罪符。ー 世界的な「真性インフレ」下、「金融緩和」しているのはトルコと日本だけ。|損切丸 (note.com) ” ♪ もうどうにもとまらない ♪ ”。|損切丸 (note.com)

 「円」を買う理由が見当たらない

 唯一確かな「円買い」インバウンドの来日観光客だが、仮に2,500万人が平均10万円使ってもせいぜい+2.5兆円。これではとてもマーケットの膨大な「円売り」圧力に対抗できない

 CFTC(米商品先物取引委員会)のデータだけでも過去最高の▼18万4,180枚≓▼1.8兆円であり、「ドル買い」全体のポジションの60%以上を占める。一部のエコノミストが日銀・財務省への忖度なのか「今回は円売りではなくてドル買い」というような論説を展開しているが一体どこを見ているのかユーロ円は@169円台、ポンド円も@197円台と「円独歩安」は明らか。これで商売が成り立つのだから「いい仕事だな~」(LIFE・ゲスニックマガジンより)「損切丸」なんか一銭にもならないのに(苦笑)

 日銀に同情するわけではないが、仮に意表を突いて+0.25%「利上げ」していても材料出尽くしで「円売り」は加速したかもしれない。そのぐらい5%の金利差は「キャリートレード」への引力が圧倒的に強い+2%の「利上げ」でも「円売り」を止めるのがやっと

 経済・産業界も今頃になって「円安は行き過ぎ」などと言い始めているが無責任極まりない「日本に工場を戻してXX兆円投資する」と宣言した方が余程インパクトがある。アメリカや中国に構築してしまったインフラを今更戻せないという事情もわかるが、ここまで「円安」が進めば日本で作った方が儲かるモノも出て来るはず。「サラリーマン社長」の決断力の無さか

 「円買い介入」も「利上げ」も所詮時間稼ぎに過ぎない。本気で国内産業を再構築しないと アルゼンチンが示唆する「日本の未来」|損切丸 (note.com) が現実化してしまう。「ジンバブ円」には笑ってしまったが言い得て妙。こうなると「トルコと日本は違う」と言い張れない”インフレ下の実質マイナス金利” は同じだからだ

 ただ筆者は今の「円安」は行き過ぎの見方を変えてはいない。おそらく財務省・日銀も「ポジションの偏り」を精緻に分析しているはず。「AIマーケット」で相場の増幅が大きくなっている分を加味すれば "積み上がっているモノ" は何か? -「金利」との比較|損切丸 (note.com) の判断は困難を極める。だがアメリカに「介入はまれ」と釘を刺されている以上「円買い介入」も一発勝負にならざるを得ない。 ”器” が満ちるのが@160円なのか@165円なのか「利上げ」と同時に発動できるのが理想

 もう一つ可能性がある ”最悪のシナリオ” が "JGBの暴発" =円金利の急上昇国債買取を漸減させてQT(量的引締)を進める過程でJGBが急落する懸念だ。日銀の保有JGB600兆円を最終的には200兆円ぐらいまで縮小させる必要があるが、その過程で何が起るのかは誰にもわからない。それだけ「異次元緩和」が壮大な社会実験だったということ

 この ”シナリオ” が怖いのは、海外に出ていた400兆円余りの「外貨投資」を国内に強制還流させる効果がある事。最も影響が大きいのは米国債長期債を中心に金利急上昇 ≓「スティープニング」を起こす蓋然性が高い財務省による「円買い介入」も米国債売りを伴うため同様の効果をもたらす

 NYダウもナスダックも「マグニフィセント7」も、そしてビットコインもGoldも原油も「過剰流動性」で押し上げられた米国債から波及して値が上がっている部分が大きい。筆者が最も懸念している点で、おそらく日銀とFRBも同様。だから日銀も「利上げ」「QT」にはかなり慎重にならざるを得ない

 さはさりとて不幸を日本だけが一身に受ける「ジンバブ円」(苦笑)も困りもの。正直筆者もどうしていいかわからない。おそらくその点は植田総裁も一緒。大変な時期に大変な仕事を引き受けてしまったものだが何とかするしかない。我々生活民も政府頼みでなく「インフレ税」回避策は真剣に考えなければいけない(でもしんどいなぁ…)


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