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「AI」時代のマーケット。ー 相場を動かすのは「人」か「AI」か、それとも「見えざる手」か。

 「そのうちマッサージもロボットがやるようになったりして」

 かつて重度の肉離れ(完治3ヶ月)でお世話になった整体師さんに定期的に通っているが、時折こんな話になる。おそらくマッサージは「AI」からは遠い職種だと思うが、*5年、10年経てばどうなるかわからない

 ハリウッドではAIに職を奪われるライターや俳優等がストライキを起こしているが、それなりの危機感もあるのだろう。CGの恐竜が出た時は驚いたが、それで怪獣の着ぐるみを被る人達の生活を完全に奪ってしまう訳でもない。まあ「産業革命」以来繰り返されてきた歴史でもある。

 本格的な「AI時代」が到来しているのはマーケットも同じ。いや、マッサージなどに比べれば遙かに「AI」に適した職場だ。1秒間に数千回売買を繰り返すHFT(High Frequency Trading、高速・高頻度取引)が日本株市場に導入された時に専門家に聞いたら:

 「例えば個人が証券会社に買い注文を出した時、取引執行にかかる時間が2秒だとすると、その間にHFTが売ったり買ったり繰り返し個人の先回りをして利鞘を稼ぐ」

 これで100%確実に儲かる?? 何だか狐につままれたような話だが、要は「成り行き」で買いを出す個人投資家の買値が悪くなるだけ。事情に詳しい投資家なら注文を「指値」に変えるなど対応を迫られたはずだ。(今はどうか判らないが)「買い」局面にプログラムが発動される事が多く、相場の暴落など「売り」局面では作動しないように出来ていた

 とにかく「AI」はデータも蓄積できるし人がやれば数時間かかるような計算も瞬時、筆者が作るようなお手製のエクセルシートなどを機能面で遙かに上回る。**「金利」で面倒な「複利」もお茶の子さいさいである。

 **ちなみに@5%の10年複利は@6.44%(四半期利払いベース)。つまり政策金利@5%が10年間変更無しで続いた場合の名目金利は+1.44%も "上乗せ" になる。それでやっと「フラットイールド」今の10年米国債@3.87%がいかに凄い「逆イールド」か(≓金利上昇リスクが高い)。10年の "上乗せ" は@8%+4.08%、@10%+6.85%で、@1% → +0.05%とは随分違う「金利」が@5%を超えると急に "効き出す" のはそのためだ。だからFRBは大分良い所まで「利上げ」できたし、逆に日銀が「利上げ」しても@2%までは大した事は無い

 マーケットも「多数決」で決まるので「選挙」と似ている。そうなると「個人1回」 vs 「AI数千回」では勝負にならない気もするが、実はここには "落とし穴" がある。HFTが1万回売買すると、そのうち9,999回分は買った分は同額必ず売るし売った分は買い戻す。つまり相場の「需給」に対するインパクトはゼロで、必ずしも「AI」が有利ではない。むしろ「売り切り」「買い切り」の "実需" に基づいた注文の方が相場には重い

  標題添付はアダムスミスの「国富論」で出て来る「見えざる手」の例として引用されるグラフで、筆者の「相場はあるべき値に落ち着く」という主張とほぼ同義語。中央銀行が制御する「金利」はその最たる例だが、これはドル円のようなFXも日経平均やNYダウなど株価も同じはず。最後は「需給の均衡点」に落ち着く。マーケットではこれが毎秒、毎時間、毎日繰り返されており、だから 相場に "行き過ぎ" なんてものはない。ー マーケットは "リアル" の積み重ね。|損切丸 (note.com)

 だが時に相場には「モンスター」が現れる。

 古くはオランダのチューリップ相場1929年世界大恐慌前のNYダウ、或いは景気がいいのに「円高」対策で金融緩和をして招いた日本の「バブル」もそう。いずれも理論を無視した政策で振れ幅が大きくなってしまった

 直近なら「インフレは一時的」と判断を間違えて「利上げ」が遅れたFRB、そして「インフレ」に突入しているのに頑なに「マイナス金利」「国債無制限買取オペ」=YCC(イールドカーブコントロール)政策を続ける日銀と言う事になる。前者の修正はようやく終わりそうだが、後者に至っては「円安」で答えが出ているのにまだグズグズ言っている

 こうなると「人」の弊害の方が大きいいっそのこと中央銀行の政策判断を「AI」に任せてみてはどうか正しいデータが入力されて「適正金利」をはじき出せば政策を間違える事もないし、政治家の先生方や財務官僚の顔色を窺う必要もない。10年も経っていずれ「Z世代」に世代交代が進めばそれに近い政策運営になるだろうが、この国はあと10年も待つ余力はない

 「数」も「AI」も所詮「人」が作ったもの。噂の「ChatGPT」も間違いが多い事が指摘されているし「人」が創る物に「完全」はない。逆に言えば「不完全」だから面白いのであって、そこにマーケットや相場の醍醐味が潜んでいる。あとは変化するパターンに「人」がどれだけ対応できるか

 どれだけ技術が進んでも「見えざる手」は無くならない。できれば他の人の "前" に出たいもの。「AI」は使い用である。

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