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「円安」で追い詰められて、いよいよモデルチェンジを迫られる「日本型」。

 物価も賃金も上がる「アメリカ型」と、どちらも上がらない「日本型」はどちらが幸せなのか。|損切丸|note の姉妹編。

 「あれっ、ここの店も潰れたか…」

 このところ「損切丸」の自宅近辺では、小規模の飲食店や小売店舗の閉鎖が目立つ。まあ、あまり流行っている店ではなかったので、逆にパンデミックの2020~2021年の2年間をよく凌いだものだが、ここに来て力尽きるパターンが増えてきた。利用者としては選択肢が減ったことになる。

 これは倒産データにはっきり現れてきた 

 やはり東京の数字が突出しており、中でも飲食店、建設業が目立つ。「円安」によるコスト増もあるが、どちらかといえば「人手不足」と「人件費上昇」に耐えられなかったと見ていい。「値段が上がるとお客さんが来ない」と言うが、一概にそうも言えない。*価格転嫁しても相応の付加価値があれば客は付いてくる。潰れたところは魅力に乏しかったという事になる。

 顕著なのは急激に店舗削減が進むファミレス。先行した「ロイヤル」に続いて「すかいらーく」などもリストラを進め、客単価は明らかに+2~3割上がっているが、客足が途絶える気配は無い。結果として住宅地店舗では土日の夕食時に家族連れで行列が出来るようになった。2~3年前の苦しい時期には料理の "質" を落とす ”スティルス値上げ” が横行し味が落ちたが、「値上げ」出来るようになって美味しさが戻ってきた。やはり値段に見合う "質" が大事であり、顧客は良く見ているという証拠である。

 直接的原因としては「ゼロゼロ融資」(無利子、無担保)停止の影響が大きい。日銀による「貸出」も3月→10月で▼71兆円も減少

 これだけ倒産が進むと、いかにも「暗いニュース」のように日本では捉えられがちだが、筆者の見方は真逆**1990~2000年台の「バブル崩壊」以降「失われた30年」で先延ばしにされてきた ”淘汰” がやっと始まった

 **飲食店に関していえば、東京は世界に類を見ない「超多数店舗」 ↓ これが「安くて上手い!」の源泉になっていたが、裏返せば熾烈な「過当競争」”和の国” 日本は、みんなで肩を組んで助け合ってきたが、多数のゾンビ企業・店舗を延命させてきたのも事実。これが「値上げ」と「賃上げ」を阻んできたが、いよいよ変りつつある。

 この「過当競争」「過剰供給」を維持するための装置が「ゼロ金利政策」であり、その延長上にある「異次元緩和」である。「利上げは大変」とよく言うが、アメリカのように政策金利が@5%とか住宅ローンが@7%とかいうならいざ知らず、@1~2%ぐらいの金利でパンクするような事業や住宅ローンはそもそも「無理」。早く止めるべきだろう。

  ”淘汰” の過程では当然「失業」という副作用も出る。幸い今は「人手不足」で、流通の「運転手」も足りないし、介護や清掃員も慢性的に不足している。つまり「雇用のミスマッチ」の問題であり、これこそ国が対策するべき部分。「票」に繋がらないからやりたくないのだろうが、「日の丸半導体」などで ”国産” を増やすなら、もっと前向きに取り組むべき

 「あなたは高くて不味いレストランと同じ」(11/14 President online)

 50歳の元・銀行支店長がハローワークで再就職を相談する際にこう言われたという記事が載っていたが、さもありなん。面接で「私は人を使う事が出来ます」などと真顔で話す人が来るが、筆者の勤めた外資系では「だから何?」という感じ(苦笑)。もっと言えば、大手財閥系メガバンクから転職してきた人で、何かというと「M菱では...」などと言い出す人がいるが勘違いも甚だしい。それなら辞めなければ良かったのに。

 筆者も58歳なので悪し様に言いたくはないが、相当条件を落とさないと再就職は難しい。そこまで30年の職業生活で何を積み上げてきたか、がモロに問われることになる。筆者はたまたま英銀に20年以上勤めて蓄えが出来たので早期退職が適ったが、40代までに何かの土台を作らないと厳しい。筆者の勤めたメガバンクの同僚も50代になるとほとんど ”外” に出され、給料が半分なんていうのはザラ。今後は再就職さえままならない状況が訪れる。

  "網" からこぼれ落ちる人が増えてくると「日本型モデル」↓ 継続は難しくなる。 ”みんなで我慢” はもう限界に近い

 今回の ”淘汰” を経て「インフレ時代」を迎えれば、ある程度「アメリカ型」↓ に寄って行かざるを得ない。既にその傾向も出つつあるが、良くも悪しくも「弱肉強食」、つまり「貧富の差拡大」は避けられない。

 残るは「セーフティーネット」の拡充。「人」も「お金」も足りない日本ではかなりの難題介護保険制度がその代表例だが、このままでは維持できまい。財務省の肩を持てば「だから増税」となるが、納税する若年層からも悲鳴が上がりつつある

 対処方法は2つしかない:

 ①「少子化」を含め「人口減」を受け入れ、縮小均衡で「増税」路線
 ②「円安」を利して日本経済を復活させ「国富」を増やす

 願わくば①②が上手くミックスされて「新しい日本型モデル」が構築されればいいのだが、いずれにしろ "痛み" は避けられない"ゾンビ" 延命策として象徴的な「ゼロ金利政策」を解除できないようではとても無理だろう。

 日銀総裁があれだけ「金融緩和」と言い続けているのも「どうせ日本人は "痛み" に耐えられない」と見透かしているから日本人自身が「他人依存」を止め、 "痛み" を伴う変革に向き合う "覚悟" があって始めて「円安」は止まる。原因は「金利差」などではない。

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