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"ゆりかごから墓場まで" はもう無理。ー 「お金」の事ははっきりさせよう。

  "ゆりかごから墓場まで"

 社会保障制度の充実を形容する言葉で、第二次世界大戦後にイギリス労働党の掲げたスローガン国民全員が無料で医療サービスを受けられる 国民保健サービス(NHS) と国民全員が加入する国民保険 (NIS) が基幹。

 大不況を引き起こした「イギリス病」に由来する税収の伸び悩みでNHSの財政圧迫は深刻な問題となり「小さな政府」を目指す "鉄の女" 保守党のマーガレット・サッチャーが方針転換大胆な福祉支出の削減が行われた。一時的にNHSは機能不全に陥り、医療従事者が大量に国外に流出して医療崩壊。数ヶ月もの診療待ちが常態化する事態となった。

 とここまで書いてくると何だかイギリスの事とは思えない。今この日本で起きている事と近い将来を暗示している様。「イギリス病」を「デフレ」「失われた30年」と置き換えればそっくりだ。もっとも「国民皆保険制度」自体がイギリスのNHSやNISを模したものであり、状況が似てくるのは当然ともいえる。ここから得られる教訓もあろう。

 少子高齢化が進み人口構成がここまで歪になるともう "ゆりかごから墓場まで" は無理毎年+70兆円の税収の内▼40兆円が医療費に消えていることからも持続不能だ。その点は残念ながら今大騒ぎしている「消費税」の減税もしくは撤廃では解消しない。いや、むしろ悪化する事になる。

 こうなるとあとは日本人が医療をまともに受けられない事態を許容できるか、が焦点になる。この国に "鉄の女" が現れるかどうか定かではないが、このままでは遅かれ早かれ医療崩壊は避けられない。現在財務省と医師会が医療費改定でやりあっているが、*もうこの国には「お金」がない

 *介護職の月給が+6,000円しか上げられないようでは人手不足はとてもじゃないが改善しない。安月給で過酷労働のいわゆる ”やりがい詐欺” ももう限界で、介護崩壊は既に始まっている。

 全体像が見えている財務省官僚は、だからこそ「ゼロ金利」に拘り支払利息を減らそうとしているが、所詮時間稼ぎ自己負担を2~3割に上げたり「薬価差益」を削ったり対処療法はしてきたがもう「手術」が必要。

 実質賃金の目減りで生活が苦しくなったので手取りを確保するために「消費税減税」を騒ぐのはもっともだが、それではおそらく生活は楽にならない。最近は「社会保険料」の負担増に気が付く人も増えており、ここに手を入れないとどうにもならない。

 仮に「国民皆保険制度」を止めて全額自己負担にすればどうなるのか。

 メリット:「社会保険料」負担がなくなる(除.年金)
 デメリット:気軽に病院に行けなくなる ≓ 病院の収入は減少

 我が家でも近年「国民健康保険」の負担増が気になっているが、全額自己負担の方が家計の支出はかなり減る(皆さんも一度見直しをお勧めする)。つまり高齢者などの医療費を肩代わりさせられているのが実情だ。この国の「お金」の使い方は「高齢者」>>「子供」に傾きすぎている。これでは子供を育てるのは難しい。これで将来に希望を持てというのは無理だろう。

  デメリット:気軽に病院に行けなくなる ≓ 病院の収入は減少については、何でも国が丸抱えするのではなく「お金」にメリハリをつける事。例えば湿布を貰うためだけに整形外科に通うご老人がいるが、有料にすれば無駄は減る。検査や救急車も有料にすればいいし、そうすれば逆説的だがもっと健康に気を遣うようになる。

 保険料収入や「コロナ危機」時にも顕著だった「補助金」頼みの経営を続けていた病院、特に中・小規模の医療機関は経営が厳しくなるだろう。だから医師会が医療報酬減額にあんなに反対するのだが「国頼み」はもう限界。総花的に医療を提供するのではなく、自由診療など何かに特化する必要が出て来る。もっともこんな「選別」は一般事業会社では常識だ。

 介護職の ”やりがい詐欺” という言い方をしたが、これは日本社会全体に蔓延っている。まあ筆者がいた投資銀行業界やウォール街のように「何でも金」は感心しないが日本人は「逆の極」

 戦後為政者の都合で 「お金のマニュアル」-損をしないコツ- 其ノ2 「清貧思想」と日本人の投資①|損切丸 (note.com) で国民全体を「金融無知」の状態にしてきたが、日本人はもっと「お金」に拘っていい。 ー 「清貧思想」の呪縛からの開放。|損切丸 (note.com)

 最近役職者になるのを拒否する労働者が増えているがそれも宜なるかな。肩書きがついて仕事が大変になってもお給料が上がらないようでは誰も引き受けない。業務内容が増えるようならその分「お金」がついてくるのがグローバルスタンダードだ。

 それを拒んできたのが昭和世代≓「団塊の世代」。曰く「お金に拘るなんてなんてあさましい!」。だが彼らも次々引退して後期高齢者入り。残るは永田町のおじいちゃん達だが、それもSNSを中心とした「倒閣運動」が動かそうとしている。

 この大きな変化を象徴するのが「円金利」であると筆者は勝手に思っている(ちなみにサッチャー後のイギリスは@10~15%二桁金利の常連)。こちらも70代のおじいちゃんが旗を振っているが、そう遠くない未来に「マイナス金利」「ゼロ金利」とはおさらばする事になる。もっともそれに伴う「副作用」については我々小市民も覚悟しておく必要がある。

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