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上司との約束 〜復職まで一緒にがんばろう〜

2023年も終わろうとしている12月25日の朝。
しんどい身体にどうにかムチを打って出勤していた。上司に「面接しようか」と呼ばれた。

私は、地方銀行に15年ほど勤めている。ここ半年くらい、10年前くらいに一度克服したと思っていた不安神経症の症状に再び悩まされ、仕事も休みがちになっていた。仕事中にパニック発作を起こし、休みに行ったり途中で帰ったりすることも増えていた。とはいえ、症状がなければ仕事に普通に打ち込めていたのだ。それが12月半ば頃から、仕事にもいよいよ集中できなくなり、勉強も、大好きな読書も手につかなくなっていた。もう、限界だ、と思い始めていた。

呼ばれた上司から、「いったんゆっくり休もうか。率直に、今のあなたは以前バリバリ働いていたときの50%や。あの頃は8時9時まで仕事やりたい!ってしよったよな。でも今は仕事に来れたよかった!ってストライクゾーンがめちゃくちゃ広くなっとるよね。そんなんじゃいかんのよ。栄養とか漢方とか勉強してるっていうけど、一度、ちゃんと医者の言うこと聞いてみてもいいと思うよ。抗うつ剤ちゃんと飲んで治療してみてはどうだろう。」とゆっくり諭された。

本当にしんどくて、もう仕事に行っても全然集中できていなかったのは私も分かっていた。自分から休職させてほしいなんて言えなかったから、言ってもらえてよかったと思う反面、悔しくてすぐにハイとは言えなかった。まだ身体はかろうじて動いて、何とか出勤だってできていたから。

結局、2月末までの予定で休職している。決心がついたのは、糖尿病を患っている上司のこの一言だった。
「そうやな、わかった、じゃあ俺もちゃんと勉強して食事にもっと気をつけるから、一緒にがんばろうか。」

〈一緒にがんばる〉

なんて心強い一言なんだろう。

この上司に仕えて2ヶ月、その天才肌の仕事っぷりをすぐそばで見ながら、絶えず驚きや刺激があり、一緒に仕事できる時間をとても貴重に思っていた。この人からたくさんのことを学びたいと強く感じていた。それなのに、いつもお昼休憩を10分で済ませてきたり、糖尿病なのに菓子パンで軽く済ませているのを見ていて、どうか自分の身体を大切にしてほしいと切に願っていた。そんな上司が、自分も身体を大事にするからあなたもがんばれというその一言に突き動かされて、心から嬉しくて、私は、それならば、と休む決心ができた。

このカリスマ上司がすごいのは、仕事だけじゃなかった。よく周りを見ていて、情に厚く、部下思いで、親身になってとことん話を聞いてくれて、アドバイスはいつでも心のひだひだにまで染みる。

年末の最終営業日、私は休職4日目。上司から電話がかかってきた。昼の菓子パンはもうあれからやめたよ、あなたと約束したからね、と笑っていた。上司は、ちゃんと有言実行してくれている。私も、まずはちゃんと療養して、そして復職に向けて精一杯努力しようと、改めて、あったかい気持ちで、心に誓った。そしていつか、上司が私にしてくれたように、私も誰かに恩返ししよう。

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