OKOPEOPLE - お香とわたしの物語

7
ノート

香木と妻

2016年に10年以上お付き合いを続けてきた中学校の同級生と結婚した。中学の頃から「私は看護士になる」と宣言してきた妻は、その夢を叶え、現在もその仕事を続けている。誇り高く仕事をし、家事もそつなくこなす妻には本当に頭が上がらないのだが、一つだけ大きな不満があった。

それは、私の大好きな「香木」を「そこら辺に落ちているような木じゃん」と一蹴すること。これに関しては私も黙っていられないと、言い争いを

もっとみる

祖父母の香りと“去来”

私は自他ともに認めるおじいちゃん・おばあちゃん子である。大好きだったふたりは、もうこの世にはいない。しかし、今でも私の心の大きな支えである。だから、どんなに仕事が忙しくても、1カ月に必ず1回は墓参りに行く。

祖父母の墓石には、祖父の字で「去来」という文字が書かれている。祖父母とはあれほどたくさん話をしてきたのに、なぜ「去来」なのか知らずじまい。祖父の血を色濃く継いだと親戚中に言われるが、やはりそ

もっとみる

「香道」 ~ 漂うように 〜 (4)

余白の匂い
日々漂う匂いの体験と思いの切れ端を綴る「はなで聞くはなし」 

前回の記事: 「盆会(ぼんえ)」 ~ いかれたBaby ~ (3)

香りを”聞く”と言い慣わす世界に迷い込んで十余年。
この九月、「香道」を始めて新しいひと回りの年を迎えた。

”香り好き”ではないが”匂い”には興味があった。
「○○は鼻が利くから。」
母からは冷蔵庫に残ったお肉や魚の「お鼻見」をよく頼まれた。

中学三

もっとみる

ピンセット香道

入澤香木研究所
「敷居が高い」と思われがちの香木・香道ですが、私は単純に香木の香りに魅了され過ぎて、その敷居を感じる間もなく不躾に接してしまったと今さらながら猛省しています。しかし、香木・香道を通じて私と関わっていただいた方々は、皆様素晴らしい人間力をお持ちでした。この連載は若輩者である私にご指導・ご鞭撻下さった諸先輩方、そしてこれから香木に触れることになる方に向けて、これまでの感謝とともに、香木

もっとみる

「路面」~ 闘場(アレーナ)の香気 ~(2)

余白の匂い
香りを「聞く」と言い慣わす世界に迷い込んで十余年。日々漂う匂いの体験と思いの切れ端を綴る「はなで聞くはなし」 

前回の記事:「水際」 ~ 塩素と陽射しとちょっとハナミズ ~(一)

昔雑誌で見かけたフレグランスの紹介が妙に印象に残った。
焼けたゴムの匂い、火打石の匂い、なめし革の匂い…

狭かった私の嗅覚の地平線をザクりと切り拓く新鮮な語彙達。
”…男たちの心に潜む闘争心に火をつける

もっとみる

香木への招待

入澤香木研究所
「敷居が高い」と思われがちの香木・香道ですが、私は単純に香木の香りに魅了され過ぎて、その敷居を感じる間もなく不躾に接してしまったと今さらながら猛省しています。しかし、香木・香道を通じて私と関わっていただいた方々は、皆様素晴らしい人間力をお持ちでした。この連載は若輩者である私にご指導・ご鞭撻下さった諸先輩方、そしてこれから香木に触れることになる方に向けて、これまでの感謝とともに、香木

もっとみる

「水際」 ~ 塩素と太陽とちょっとハナミズ ~ (1)

余白の匂い
香りを「聞く」と言い慣わす世界に迷い込んで十余年。日々漂う匂いの体験と思いの切れ端を綴る「はなで聞くはなし」

土曜の朝のクリニックはすっきりと空いていて、窓の下の見慣れたアーケードも整然と開店の時間を待っている。待合室の棚から手に取ったコミックでは、高校生の帰宅部コンビが川沿いの階段に腰かけてとりとめのない会話で時間を潰している。やんちゃそうな方のモーレツな関西弁がページから溢れ出す

もっとみる