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【定期】最近の睡眠データまとめ「睡眠不足で内臓脂肪増、筋トレと睡眠改善、寝る前の部屋の光を変えればダメージ軽減etc. 」

今回は、最近読んで面白かった睡眠回りの研究を5つほどまとめておきます!

睡眠不足は内臓脂肪の増加を引き起こす!

「睡眠不足だと腹回りの内臓脂肪が増えるぞ!」って研究結果(R)が出ておりました。睡眠不足の人は肥満のリスクが高くなる!ってのは最近よく聞く話ですけど、身体のどこに脂肪がつきやすいのか?ってのはよくわかってなかったんで、なかなか面白い結果ですね。

これはメイヨークリニックの研究で、肥満でない健康な12人(19歳~39歳)を対象に行われたランダム化比較クロスオーバー試験となっています。全員には21日間の試験に2回ずつ参加してもらっておりまして、試験中にはそれぞれ4時間または9時間の睡眠を2週間続けてもらったらしい。

参加者は試験中自由に食事をすることが許されておりまして、試験前後の摂取エネルギー、消費エネルギー、体重、身体組成、脂肪分布、食欲等をチェックしたところ、以下のようなことがわかりました。

  • 4時間睡眠を行っていたときには9時間睡眠の時に比べて1日当たりの摂取カロリーが300kcalほど増えていた。中でもタンパク質を13%、脂質を17%多く食べていた

  • この摂取カロリーの増加は睡眠不足に初期に最も顕著で、回復期には初期のレベルまで回復していた

  • 一方消費カロリーは終始ほとんど変わらなかった

  • 睡眠制限をしているときには対照群に比べて体重が増加していたが、その増加量はほんのわずかだった

  • しかし睡眠制限の時には腹部総脂肪が9%、腹部内臓脂肪が11%も増加していた

ということで、睡眠が不足すると食欲がブーストして多く食べるようになって、お腹周りの内臓脂肪として蓄積してしまうみたい。しかも恐ろしいことに睡眠制限を解除した後の回復期では、カロリー摂取量と体重が減少していた一方で、内臓脂肪は増え続けていたらしい。ご存じの通り内臓脂肪の増加は心疾患や代謝性疾患なんかと関連していることが示されてますで、これは誠にぞっとする結果ですな。

研究者曰く、

内臓脂肪の蓄積は、CTスキャンによってのみ検出され、そうでなければ見逃されていただろう。なぜなら体重の増加が1ポンド程度と極めてわずかであったからだ。

体重の増加という指標だけでは、不十分な睡眠がもたらす健康への影響という点で、人々を誤って安心させてしまうことになる。また、不十分な睡眠が繰り返されると、数年にわたる内臓脂肪の累積的な増加という点でも、その影響が懸念される。

とのこと。現時点では若くて健康で比較的痩せているとしても、睡眠不足を侮ってると(たとえ週末にリカバーしていると思ってても)見えないところで内臓脂肪として体が蝕まれて行ってしまってるかもしれないぞ!と。

また、研究者は「シフトワーカーのように規則正しい十分な睡眠を確保できない場合には運動を増やしたり、食事の内容を見直しといたほうがいいかもよ!」ってなこともコメントしておりまして、これは私も気を付けとかないとなーと思いましたね。


睡眠改善に最も効果的な運動ってどれなんだろう?

睡眠完全戦略のメジャーな方法の一つとして「運動」があげられますが、AHAの学会で発表された研究(R)では、「睡眠改善に一番効果的な運動って一体どれなの?」って問題を調べてくれておりました。

これは体重過多、高血圧で座りがちな生活を送っている成人386人を対象に行われた研究で(参加者の3分の1以上が十分で質の高い睡眠をとれていないと感じていた)、全員を以下の4つのグループのうちのいずれかに割り当てたんだそう。

  1. 12種類のウエイトとレジスタンスマシンを使って主要な筋肉を鍛える筋トレを1回60分、週3で行う

  2. トレッドミル、自転車エルゴメーター、エリプティカルマシンを使った有酸素運動を1回60分、週3で行う

  3. 筋トレと有酸素運動を30分ずつ行う

  4. 何も運動しない

そんで、1年後、全員の睡眠時間、睡眠の質、眠りにつくまでの時間、途中で起きちゃう頻度なんかを評価したところ、以下のような傾向が見られたそうな。

  • 対照群を含むすべての群で、睡眠時間の改善が見られた。中でも睡眠時間の改善がよかったのが筋トレグループだった(40分延長した)

  • 有酸素運動のみのグループでは睡眠時間が23分増加し、筋トレと有酸素運動を組み合わせたグループでは17分、対照群では15分増えていた

  • 睡眠効率(ベッドにいる時間のうち眠っている時間)の改善は筋トレ群と筋トレ+有酸素運動群にのみ認められた

というわけで、全体的に有酸素運動よりも筋トレを行った場合に睡眠の改善が見られたみたい。

とはいえ有酸素運動で睡眠が改善したって報告も多いんで、これだけを見て「睡眠に効く運動は筋トレのみ!」と結論することができませんが、「睡眠が改善するかも!」と思えば筋トレを続けるモチベーションにはなりそうですねー。


あなたはどれに当てはまる?10万人の睡眠データから人間の睡眠パターンは16種類に分類できると判明!

お次はPNAS誌に掲載された研究(R)で、「人間の睡眠は16のパターンに分類できるぞ!」みたいな系統的レビューとなっております。

「睡眠パターンを細かく分類したところで何がうれしいの?」って思う方もいるかもしれませんが、これが検証されていけば将来的には病歴や生活習慣、学歴等のデータと結びつけることでより迅速かつ正確な臨床の発展に寄与する可能性が考えられます。というのも、上記の通り睡眠時間の不足が内臓脂肪の増加につながったり、不眠が不安症や反芻思考につながったりといった報告がある一方、睡眠習慣は長期的かつ精密なモニタリングを行わないと評価が難しい場合も多いわけです。そんな中であらかじめヒトの「睡眠表現型」をクラスタリングしておけば、個人の心身の健康状態の把握がうまくできるようになるんじゃないの?ってことですね。

要するに、「クラス1に近づいてきたらメンタルが病んでる兆候だよ!」みたいな判断をしやすくなるって考えればわかりやすいでしょう。これができればouraリングやアップルウォッチなんかを使った健康管理が前進したり、睡眠に関連する症状が重症化しちゃう前に対策を打てるようになったりするかもってのはなかなかうれしいですよね。

そんなわけでこの研究では英国バイオバンクの10万人以上のスマートリストバンドを使ったデータに基づいて、睡眠サイクルのパターンを以下のように分類しております。

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