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三ツ谷なな1stワンマン「-Pale Bluem-」公認レポート

突如姿を表した謎の女性シンガーソングライター・三ツ谷なな(みつやなな)

2023年12月に登場し、いきなりワンマンライブを発表するや否や、後日新宿西口で開催した路上ライブではロングスカートで胡坐をかきながらアコースティックギターを弾く彼女の姿が。薄暗く、通り過ぎる通行人も多い中、高い歌唱力と驚くようなその姿を静かに見つめる若いファンの姿も多く見られた。

そんな三ツ谷ななの1stワンマンライブ「PaleBluem」が2024年3月9日に高円寺Club ROOTS!にて開催された。今回は初ライブの様子をレポートする。

レポート/写真: 古月(@ran_koga_mas


ライブ当日は雪の予報も立つ中、彼女の願いも叶ってか昼には晴れ間になっていた。

会場となった高円寺Club ROOTS!の入り口には、わずか4か月という浅いキャリアながら、フラワースタンドが2つ立っており、彼女のスタートを祝うように色鮮やかな花で彩られていた。

Culub Roots!入口 ファン一同と個人からフラワースタンドが送られた

オーディエンスの多くは路上ライブから知ったファンを中心に集まった様子で、ファン同士の談笑も目立っていた。

公演時間になり、ステージ上にバンドメンバーが揃い、会場が暗転。
ライブは彼女のオリジナル曲「星にも縋る」からスタート。
マニピュレータによるイントロを合図に、けたたましいシンバルの音とエモーショナルなギターのサウンドの中、明転し、三ツ谷ななの姿がステージ上に見えた。
これまでの路上ライブでの可憐さのある雰囲気とはまた違う、かっこよさのある赤と黒を基調とした衣装で現れた。

「三ツ谷ななです、はじめます」という勢いよい三ツ谷ななの声とともに歓声が上がり、演目はすぐ2曲目「隣の目」へ。

イントロでkey.上による趣があるピアノのメロディーが披露され、シャッター音のサンプリングを合図に、key.上の後を追いこすように息をのむほどに叙情的なバンドサウンド、そして三ツ谷ななの高低差がある中でボーカルがオーディエンスを魅了する。

バンドメンバー

演奏はたて続けに「人間じゃない癖に」を披露。
「人間じゃない癖に」はカンザキイオリが昨年2023年に公開した楽曲だが、今回のライブカバーでは、三ツ谷ななが自分の世界観にアレンジしたような様相になっていた。
というのも、楽曲そのもにあるカンザキの世界観は残されていたが、これまで連続で披露したオリジナル曲に続いたことで筆者はカンザキの楽曲であることにすぐに気づくことが出来なかった。それほどに彼女らの表現力が高かったのだ。

サビでは得意な伸びのあるハイトーンボーカルを披露した三ツ谷ななは楽曲の間、手を上げオーディエンスを笑顔でファンを鼓舞する。真っ白なステージライトが彼女の可愛い笑顔をより輝かせていた。

ここまでノンストップのメンバーたち。4曲目はGt.ぽかりのピックスクラッチからスタート、ONE OK ROCKの名曲「完全感覚Dreamer」のカバーを披露した。
三ツ谷ななの迫力のあるボーカルとエモーショナルなGt.ぽかりの演出、Dr.永井啓介の華麗なスティック捌き、それに合わせたBa.相馬太樹の低音響くベースがさらに楽曲に厚みをもたらしていた。
抑揚ある音程と英語歌詞は会場を熱くし、途中「届く」の歌詞に合わせてオーディエンスは手をあげて盛り上がっていた。

Vo.三ツ谷なな

ここまで怒涛のオープニングとなった今回のライブもMCパートに。疲れも感じさせない満面の笑みで、バンドメンバー紹介を行った一方で、最後に自身の紹介を忘れ、「あっ忘れてました ボーカルの三ツ谷ななです!」と少し抜けた一面もみせた。その様子を見たオーディエンスたちも三ツ谷ななにつられるように笑いがこぼれていた。

MCを終え、ステージにはスペシャルゲスト・月詠(つくよ)が登場。みきとPカバーの「PLATONIC GIRL」のデュエットに。
2人のLet’s GOの掛け声などその息はピッタリ。ゲストのデスボーカルも披露され、会場はより一層盛り上がった。

Guest: 月詠

月詠の紹介が入ると、三ツ谷ななはお色直しにバックステージへ。
月詠はソロでTHE ORAL CIGARETTES「狂乱 Hey Kids!!」を歌う。
オーディエンスを煽りもうまく、中域と低域に抜けた力強いボーカルで会場の熱量のボルテージを一段階上へと上げていく。

ステージ上のバーに足をかけ、オーディエンスを盛り上げる月詠。

「そろそろ(呼んで)いいですか?」と三ツ谷ななにOKサインを求め、「じゃあみんなで、ななちゃんと呼びましょう」と衣装を着替えた彼女を呼び込む。
すると、オーディエンス後方からキービジュアルにも似た可憐な白いドレス衣装に着替えた三ツ谷ななが現れた。
女性のオーディエンスから「かわいいよ」と大きな声援が聞こえたことで、恥ずかしそうにする様子が印象的だった。

衣装変えした三ツ谷なな

始めてイヤモニを付けたと語る三ツ谷なな。
リハーサルでバンドメンバーのBa.相馬太樹から「イヤモニってみんなプロっぽいから付けてるんだよ」と聞いたエピソードトークを話す。
そこで、ワンマンの感想を「どうですか?」と月詠に聞かれたが、これに対して「よく聞こえます!」と三ツ谷ななが答えてしまう場面があった。会場は再び笑い声に包まれていた。

ここで月詠登場パート最後の曲へ。
2人でその曲のタイトルコールをする。

「革命デュアリズム」。

オリジナルの水樹奈々とT.M.Revolution(vo.西川貴教)の抜群の歌唱力も負けじと迫力のあるボーカルを披露。2人の声がユニゾンし、会場に響き渡る。バンド演奏もVo.の2人に呼応するように、アレンジをはじめ、演奏で”魅せる”演出になっていた。
この様子にオーディエンスも大興奮。ヒートアップし、この日一番の盛り上がりをみせていた。

ここで月詠が退場。「月詠さんを『憧れ』といっても過言じゃない」という三ツ谷なな。一度ライブで共演したことがあるという彼に負けじと演じるために――と次の曲「Fallen」のカバーを歌う。

EGOISの楪いのり/chellyを連想させるような歌声は、美しく、そしてかっこよかった。
間奏ではバックバンドによるオリジナルアレンジも入り、ライティングに照らされ、それぞれのメンバーの腕が楽器とともに光っていた。

強く照らされたライトに、白い衣装が映える

本番前、EGOISTが好きであることを幾度と語っていた彼女。
それは今回のワンマンライブの集客のために寒空の下で開催してきた、路上ライブの数々の中でも現れており、EGOISTのカバーを選曲する機会は多かった。

続く「unravel」ではTK from 凛のカバーを披露。
ハイボーカルが続き、難易度の高いこの曲でも完璧に歌う三ツ谷なな。Key.上による「時雨らしさ」つまったピアノのメロディに合わせてラスサビでは、非常に高いハイトーンを歌いこなすことは並大抵のボーカリストでも難しいのではないだろうか。

ライブも終盤に差し掛かった「いけないボーダーライン」では、三ツ谷なながオーディエンスを鼓舞するようにジャンプし、それに合わせるように衣装もふわりふわりと揺れる。

ライブも終盤。歌詞の「はいっ!」のあとにジャンプする彼女の顔には笑顔がみられ、周りを見渡すとオーディエンスにも笑顔があふれていた。

「早いもので次の曲で最後です」とMCを入れると、オーディエンスからは「えー」と残念がる声が聞こえた。
そして、オリジナル曲「君に届くまで」を歌う。

「だから待って待って待って届かない 君を追いかけて」。
彼女の若さを感じつつ、憧れを追いかけるように何度もリフレインする歌詞は彼女がこれからも走り続け、いつか大きな舞台に立つことにより期待感を持てるような内容だった。
歌詞のリフレインに合わせ、オーディエンスはサイリウムや手を振って興奮気味に答えていた。

「ありがとうございました! 三ツ谷ななでした!」
と歌い終え、オーディエンスからは大きな拍手が鳴り響く。
会場には40~50名ほどいるオーディエンス。

ファーストワンマンからこんなにも多くの人数を集められるほどの魅力をもち、さらに当日来れなかった人もいたとSNSから推察できる状況から、本来であればより多くの人々が来る予定だったと思われる。

この日鳴り響いた拍手は、100人入るキャパシティのライブハウスで初めておこなったワンマンライブとしてはとても大きいものだったと思う。このまま走っていければきっといつか、その”君”に届くときはくるはずだろう。そう応援したくなる一瞬だった。

拍手の中、三ツ谷ななが会場をあとにすると、オーディエンスからはアンコールの歓声と拍手が。
それに合わせてGt.ぽかりは、ギターを手拍子に合わせてかきならす。

実はGt.ぽかりは、三ツ谷ななとは元々バンドに所属していたという。しかし、メンバーの事情などにより一度もステージに立つことなく、バンドは解散。
ようやく同じステージに立てたというバックストーリーを持つ。
そんな彼が奏でる、手拍子に合わせたギター演奏はどこか優しさを感じた。

続くアンコールの歓声と拍手、そしてギターの音色。その声に応えるために、三ツ谷ななは再びステージに現れた。

アンコール1曲目は再びEGOISTの楽曲から「The Everlasting Guilty Crown」を歌う。曲を歌いなれた様子にEGOISTに深い愛を持つことが感じられた。
三ツ谷ななの再登場にオーディエンスも興奮の様子で、手をあげたり、首を振って、その歌に合わせてそれぞれの方法で応援をしていた。

「The Everlasting Guilty Crown」を終え、MCでは「始めてでこんなに来てもらえるとは思わなかったです。いっぱい来てもらえて楽しいですね。」と楽しそうに多くの人に来てもらえたことを喜んでいた。
その笑顔は、心の底から音楽、歌が好きなのだとわかるほどの素敵な笑顔だったように思う。

「次の次で最後の曲ですね」とアンコール2曲目はオリジナル曲「シーサイドガール」を歌う。
 愛を海に例えたこの曲。Key.上による煌びやかに感じつつも切ないミニマムなフレーズが繰り返され、サビでは大胆なバンドサウンドが待ち構える、男女の関係性を表現した深い楽曲になっていた。

「これで本当に最後の曲です」とオリジナル曲「Antinomie」を歌う。最後に飾るのにはふさわしすぎるほど、エモーショナルなGt.。間奏の叙情的なKey.に合わせてたたき出される。

もがき、走り続けることを歌ったこの曲。「君に届くまで」では、憧れを追い越すまでを描いていたが、こちらはどちらかというと彼女たちの止めどない音楽の道を表しているのかもしれない。
それを指すように「自分を愛せるまで歩め」と自分、そしてファンたちへのメッセージとも受け取れる歌詞が色濃く記憶に残っている。

曲の後、三ツ谷ななはオーディエンスに「ありがとうございました! またイベントやれらばいいなと思ってます!」と感謝と次のイベントへの希望を投げかけ、演目は終演。
その後、記念撮影、交流会にうつり、オーディエンスは三ツ谷ななにライブの冷めやらぬ興奮を伝えていた様子が印象的だった。

まだ彼女たちの歩みはたった3カ月と始まったばかり。
彼女が「自分を愛せる日」が来て、もっと自らの歌を愛し、それをバネとして成長する日々が訪れた時には既にきっと大きな舞台に立っていることだろう。それまでずっと、あきらめずに走り続けてほしい。

セットリスト

外部リンク

三ツ谷なな公式X
三ツ谷なな公式YouTube
三ツ谷なな公式TikTok

ライブ写真



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