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12月25日 「昭和」改元の日 【SS】希望の時代

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】- 「昭和」改元の日

1926年(大正15年/昭和元年)のこの日、大正天皇が崩御され、皇太子であった裕仁(ひろひと)親王が新天皇に即位された。

これと共に新しい元号「昭和」が制定された。「昭和」の由来は、中国最古の歴史書『書経』にある「百姓明、協萬邦」(百姓(ひゃくせい)昭明にして、萬邦(ばんぽう)を協和す)という一行から上下一文字ずつ取ったもの。国民の平和および世界各国の共存繁栄を願う意味である。

戦前の旧祝祭日では、大祭日の一つ「大正天皇際」(12月25日)といって大正天皇崩御を祀る日とされていた。


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【SS】希望の時代

 昭和の時代は、一九二六年十二月二十五日に幕を開けた。大正天皇が崩御され、皇太子だった裕仁親王が新しい天皇として即位された日だ。昭和としての幕開けではあるが、大正天皇の崩御を祀る日でもあったのだ。

 国民の平和、世界各国の共存繁栄を願う意味でつけられた「昭和」という元号への願いは、皮肉にも日本における政治自らが壊していくことになってしまう。大和魂を貫抜こうとした軍人も多くいた中、軍の指示には絶対服従を余儀なくされ、敗戦への道を歩んでしまった第二次世界大戦。まさか、昭和が始まった時には、そんな日が訪れることになろうとは、国民誰一人として予想はしていなかっただろう。

 中国にも進出し、満洲国まで築き上げ、どこかに慢心した心が進むべき道を誤らせたのかもしれない。アジアのリーダーとして君臨すべく錦の御旗をあげた第二次世界大戦だった。日露戦争では国力が確実に落ち、資源のない島国では体力が持たないということを学んだはずだったのに、第一次世界大戦で連合軍として勝利を得られた経験がはずみをつけてしまったのかもしれない。いずれにしても、得体の知れない悪魔が人の心に忍び込み、進む道筋を誤らせてしまったのかも知れない。結果、大きすぎる犠牲を日本は払ってしまった。

 マイナスからの再出発。全てを失い、敗戦国として統治された状態からの復活。そのエネルギーは凄まじかった。わずかの間に壊滅した街は復興し、農業、工業、商業全てに於いてその仕事に従事している人たちは一心不乱に働いた。まるで働き蟻のように働くことを厭わなかった。そして、その頑張りが今の日本の基礎を作ってくれたのは間違いない。

 目覚ましいスピードで色んな分野が発展する時代でもあった。常に新しい発想で新製品を世の中に出し続ける電機メーカー、組み立て技術の精度が最も高い自動車業界、予定時間に正確に物を届ける物流業界、世界一の技術を誇った造船業界、人の大量移動を正確で安全に実現する鉄道業界、日本独自の機能を取り込んだコンピューター業界、そして、全ての産業を支える鉄鋼業界や半導体業界など、世界が注目する日本へと躍進したのは昭和の時代だった。

 ほとんどのインフラは昭和時代に整備された。その全てを支えたのは人材だったのだろう。戦争で若い人材を失った日本は、子供を増やす政策に転換した。戦後生まれの人口が増え、それらが働き手となって社会を支え始めた時から、日本の産業は大きく伸びていったのだ。そして忘れてはならないのが、その背景には円に対する固定為替の施策があったということだ。戦後は、日本の決定権はほぼないに等しかった。為替は固定化され一ドル三百六十円だった。今考えると超円安である。国内で作ったものを海外で売るには好都合な時代だったのだ。そんな時代が二十年以上も継続し、日本の高度成長時代を貿易の面からも支えたのだろう。

 高度成長を遂げた昭和という時代。もちろん、その間にも不景気の波は日本を襲った。オイルショックもそうである。一時騒然となった日本国内ではあるが、それでも諸外国のように悲惨な状況に陥るところまでにはならなかった。国民性かもしれないが「今を凌げばきっとなんとかなる」と誰もが信じていたのではないだろうか。そして、訪れた不景気の波を乗り切り、再び安定した生活に戻っていったのである。最も、景気と不景気は繰り返すものである。失われた十年も今となっては過去のことではあるが、昭和の時代には誰も考えていなかっただろう。

 全てが一気に発展し凄まじい勢いで成長した日本。それが昭和の時代だった。昭和という時代は終わりがなく永遠に続くのではないかと思ったくらいである。そのくらい昭和という時代は長く続いた。もちろん、天皇が長寿だったということに他ならないのだが、敗戦した日本が先進国のトップグループに躍り出るまで時間を神様が与えてくれたのかも知れないと思うのは、私だけだろうか。

 昭和という時代が終わりを告げ、平成という元号が小渕さんによって発表された時は、多くの人はピンと来なかったのではないだろうか。私もその一人だった。言い方は悪いが存在感を感じられなかった小渕さんは、元号の発表で一躍時の人となったように覚えている。長い長い昭和の終わりを知らせるテレビでの改元発表だった。

 そういえば、昭和から平成に変わる正月に、へぇと思うような出来事を聞いたことがある。ある家族が、初詣兼厄払いに自家用車で神社へ行き、安心して帰ろうと大通りへ出ようとした。ところが誰しも初詣に車で来ており大通りは大渋滞である。片側二車線で、左車線が直進、右車線が神社への道で大渋滞。直進車線はスイスイ走っている。ある家族は対向車線から右折してレストランに入るために、大渋滞の車が道を開けてくれるのを待っていた。優しい運転手が道を譲ってくれたので、そっと車の先端を直進斜線に出して確認しようとした時、車はドンという音とともに右側に押され、空けてくれた車線に渋滞で並んでいた車に追突してしまったのである。原因は、直進車線を勢いよく走ってきた軽自動車に追突されてしまった事であった。ところが警察での処理は、右折しようとした車の方が過失十割と判断され、赤切符を切られることになり、なすすべもなく当局からの連絡を待っていた。すると講習会への参加指示が届き、渋々と出かけていったらしい。ところが、講習会では不思議な案内がされたというのだ。

「あなた方は、過去に違反もないことを確認しました。今回は講習会を受けていただくだけで減点にも免許停止にもなりません。ご安心ください」

 そう言われた時「新天皇誕生で恩赦があったのか」とその場にいた受講生たちはパッと顔色が明るくなったそうだ。一つの時代が変わる時には、色んな出来事が収束したり、起きたりするものなのかも知れない。さて、次の元号の発表を見ることができるかどうかは分からないが密かな楽しみの一つでもあるかな。


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