「冷たい校舎の時は止まる」


この限定愛蔵版の装丁に一目ぼれして借りました。

こんばんは、haruna🔖です。
投稿の間が空きすぎてしまうのをそろそろ直さないとと最近思っています。
さて、今回私が紹介するのは、辻村深月さんの「冷たい校舎の時は止まる」という作品です。
この作品の主人公は、作者と同じ名前の高校3年生、辻村深月。センター試験まで残りわずかとなったある日、雪の中を幼馴染の鷹野博嗣と共に学校へ行くと、学校には生徒が8人しか来ていませんでした。学校自体が休みという連絡が来ていたわけでもないし、みんなが来られなくなるほど酷いわけでもない。しかもその8人は全員、3年2組のクラス委員で、担任である榊と特に親しい人物であるという共通点がありました。
妙に思っていると、8人は校舎内に閉じ込められていることに気づきます。さらに、なんと時計が全て、5時53分で止まっていたのです。なぜ、自分たちが奇妙な場所に閉じ込められてしまったのか。そこで話に上がったのは、誰もが口に出さないようにしていた、2ヶ月前の出来事。学園祭の日に起こった、飛び降り自殺でした。ここにいる8人を含め、皆が大きなショックを受けた出来事のはずでした。
しかし、8人は誰も、自殺した当人の名前を思い出せないのです。あの日、自殺したのは誰なのか。その当人が、「ホスト」として自分達を精神世界に閉じ込めているのではないか。そして「ホスト」は、8人の中にいるかもしれない。そう考えた深月たちは、奇妙な校舎の中で生活を送りながら、その正体を突き止めようとします。
ある時、時間が動き出しました。そして、再び5時53分を迎えた時、生徒の一人が消えてしまいます。最後にいたはずの場所には、マネキンが血を流して倒れていました。深月たちは、元の世界に戻ることができるのか。そして、自殺した人間と「ホスト」の正体、その目的とは何なのか。少しファンタジーのような要素もある、青春ミステリー物語です。
この物語の面白いところは、なんといっても壮大かつ鮮やかな伏線回収だと思います。何気なく読み進めていたところでさえ、最後まで読むと「うわあ、そういうことかあ」と驚きと共にアハ体験のような爽快な気分に浸ることができます。また、登場人物8人それぞれの心情や性格、過去の描写がとても丁寧で、共感しながら読み進めることもでき、とても完成度が高く、読みごたえのある物語となっています。

私にとっては、今まで読んだ中で一番伏線回収が鮮やかで、記憶を消してもう一度読みたい作品の一つです。皆さん、是非読んでみてください。

この記事が参加している募集

推薦図書

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?