きっともう手に入らないものだから

『人生の道しるべ』

吉本ばなな、宮本輝の対談を読了。
生業としての小説家のリアルを。
とくに吉本ばななは中学生の頃、のめり込んでいたことを思い出す。そうそう、小説の中に、驚くほど嫌なヒトが出てこないんです。本文の言葉まんまではないんだけれど、小説家という仕事は、庭で大切に育てた花を一輪ずつ道ゆく人にわたす仕事だと。
よく言われるんだけれど、私の会話の中であまり、意識して嫌いな人を出さないのは、きっとこんなところで影響をうけているんだろうな。
これには賛否両論あるけどね。人と仲良くなるとき、好きよりも嫌いがパワーを持つことがあるからさ。だから私友達が少ないのかしら…。アハハ…。

あとね、2人の死生観が興味深かった。
千利休が、「当たり前のことを当たり前にできるのならば、私があなたの弟子になりましょう」って弟子に言った言葉があるんだけれど、これは、つまるところ死ぬってことじゃないかと、対談の中で言うんです。茶道の手前の基本かなと思っていたんだけれど、死ぬことを当たり前に受け入れられるか?という議論になるのは面白かったな。

死ってものって、怖いからね。
死=なくなるってこと?どう思う?って議論もあるんだけも、面白いから、まぁ、読んでみてください。
良い対談だと思うよ。

そういえば、あれはほんっと良かったなって振り返ってみて、でももう2度と手に入らないかもしれないと思うとめちゃ苦しくなって、尊くなって、美化しちゃってることってありません?
人間関係もモノも。
手にしていると、それが素晴らしいとしても一瞬価値を見誤ることってある気がするだろうけれど、
比喩的にも現実的にも、
死んでしまったら、もう生きている状態に私たちには戻せる力はないと思うんだァ。
あの時間は、素晴らしいものだったなと、手に入らなくなって初めて気がつくのだろう。

ワイン愛好家が、何故ワインを数百万円出しても買うのか。
ワインをただのお酒の種類の一つとして捉えている人にはわからないと思うし、私もほんの一年前ならそう思っただろうな。
でも、のんでしまうと、神と呼ばれる生産者が亡くなると、ほとんど収穫量のない畑だと、流通されていないと、もう2度とあの色香に触れられないと思うからですかね。飲んだらなくなり続ける。そう、あらゆる局面において、味を知ってしまったというのは、罪ですね。ワインを知らなければ良かったと思うほど、どうやら私はワインに取り憑かれているらしい。

ちょっと、フランスでみつけたワインの話してもよいですか。
ボーヌを車で南にくだり、Puligny Montrachet 村からChassagne Montrachet 村へ向かいお散歩をしていた時とのこと。

同行していた方がMontrachetの隣のLes Caillerctの畑に何だか小さな区画を発見!
(調べてみると0.6haくらいでした。
周りが広大すぎて、だいぶ小さくみえたよ。)

長くワインに携わってらっしゃるガイドさんも、
ここは何だったかしら?と。
近くには、Batard Montrachet やMontrachetがあり、よい畑には間違いがなさそうね、という話で盛り上がっていました。笑

その後、なんとも偶然に訪問したDomaine Famille Picardで、この区画のワインを発見したのです。
しかも、Premier Cru le Caillerctと、Grand cru Chevalier Montrachetの2つにまたがっていることもここで知りました。

さらにさらに偶然の偶然で、その後訪問した
Luis JadotではグランクリュのLes Demoisellsも発見!

はい。いずれも、購入して帰ってきました。。。

Les Demoisells、レ・ドゥモワゼル、
日本語に訳すと2人のお嬢さん。1820年に所有者のボーヌの市長さんが娘さん2人に相続してこの名前が畑についたようです。マドモワゼル、ボンジュ☺️💜
ふう、フランス語も勉強したいなあ。

11月にフランスに研修兼、買い付けで行かせてもらったわけなのですが、このワインはかなり胸熱でした。いや、胸熱エピソードは色々あるのですが、引き出しが少ないので、小出しにさせてください。。
とにかく、いつかワインラヴァーのお客様にのんでいただきたいなと夢をみていました。

…そう、夢をみていたら、
早速、お客様が、
オーダーして下さいました。
涙でちゃいました。

空輸の直送ワインは、とくにシャルドネは、本当に美しい!と声を大にして申し上げたいのですが、
グランクリュなら尚更。

この白ワインははじめての経験です。
全てのワインを同じ醸造プロセスを経るというルイ・ジャドですが、比較するには畑のポテンシャルを1番感じることができるのかもしれません。
美味しすぎるので、細かいことを言わずに、
もう、このワインを楽しみましょう、
とホストの方がおっしゃいました。
それがこのワインを描写するのには一番よいかもしれません。

Grand cruのLes Demoisellsはルイ・ジャドの他に半々でルイ・ラトゥールも所有しています。
2015年は、ルイ・ラトゥールは全世界(!)で110ケースのみとの情報が。その倍ルイ・ジャドが所有していると考え、単純計算すると、全世界に2600本ほどしか流通していないグランクリュ。
日本でなかなかお目にかかれないのは当然のことですよね。

飲めばなくなる、そして記憶にだけ残る。
そんな一期一会、刹那的な魅力がワインにはあります。貴重な貴重や一本を私も楽しませていただきました。のんでしまった一本はもう戻らない。時間は戻せない。

きっともう、空輸の、この一本の味わいは簡単には手に入らないのだ。。。味を知ってしまうのは罪深い。

そんなChevalier Montrachet Les Demoisells はもう一本だけあるのですが…ボソッ。
ワインを愛している方がいつか、きっと楽しんでくださるはず。きっと、もうなかなか手に入らないものだから。
Premier CruのLes Demoisellsも届くのが楽しみです。予定では12月に中旬には、そのほかのワインも含め大量に。

仕事は楽しいです。ワインは愛おしいです。
お客さんが来てくれるというのは奇跡のような状態だと思うんです。いつもありがたいです。
書いていたらつい熱が入ってしまってごめんなさい。
外は急に寒くなりましたね。
ワインとごはんと、会話と、全部、欲張って下さいませ。あったかくなれるよう、私はヒータになります。

12月の、全体的に雲の上をはしっているような、
ふわふわ感が街に漂う感じは本当に好きなんです。
虚しくなっちゃうくらい、キラキラした表参道交差点とか。外に出て、白い息を出して目でなんとなく追うと、イルミネーションに負けず星が綺麗だと気付く感じとか。

素敵な1年の締めくくりになりますように。
さあ、わたしも頑張ろう。

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