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和仁・百年浮世絵解説『天下蕎麦四季歌』制作秘話 日本人の心象風景と独創

今回は、和仁・百年浮世絵『天下蕎麦四季歌』に描き込められた数々について語ります🎨

▼前回:浅草橋・手打ちそば和仁(わに)さんの名物料理『蕎麦・鴨・クエ・日本酒・蕎麦のスイーツ:チーズケーキとわらびもち』があります、こちらからお読みください。

店内奥に展示されています。和紙のぼんぼりライトが反射して、写真は見づらいかも。ぜひお近くで見て頂いて、細かい描き込みを楽しんで!江戸文化と名物料理に舌鼓をうちながら^^
ちなみに、和額も店内のサイズに合うものを探してきて、画の表装も自分で手がけました。画に合う掛け軸を探してきて、緞子(どんす)をばらし、画と和額のデザインとサイズに合うように、仕立て上げました。

◆制作の準備 日本の画風というもの

 制作にあたり、万単位の日本の芸術を見て、古来~江戸~明治・大正・昭和、そして現代に至るまでの日本の画風というものを対象に、デザインを考えていきました。
ここでは、簡単に系譜を記載しておきます。
日本画 - Wikipedia 西洋技法によらない
陶磁器のデザインの歴史も欠かせない。
西陣織 - Wikipedia テキスタイルのデザインも。飛鳥・奈良 5世紀~
源氏絵 - Wikipedia 屏風・襖絵含む 平安・鎌倉 8~12世紀
掛軸 - Wikipedia 室町・鎌倉 水墨・仏画 14~16世紀
浮世絵 - Wikipedia 江戸初期 17~18世紀 商業出版へ
錦絵 - Wikipedia 江戸中期・明治・大正
開化絵 - Wikipedia 西洋と日本文化の折衷
新版画 - Wikipedia 明治30年前後~昭和

Wikipediaを中心に定義等

 これだけではないのですが、「日本人が何を見てきて、どう感じてきたのか」、それから「西洋の文化の影響を受けてからは、日本人は何を大事にし、そして今に守り伝えるのか」、「何をもって日本や和というものを感じているのか」
また「忘れ去られたその時代の記号的意味のデザイン」(そこには、愛、喜び、楽しみ、嬉しさ、悲哀、富、健康、長寿、ユーモア、逞しさ、したたかさ、可愛らしさ、粋な生き方、など豊富で豊かな感情・文化が溢れる)について、時代を生きた人々の生活を理解し鑑賞し、そして現代に繋がるデザインを考える上で、デザインを創るための深堀していきました。
このあたりの話、活気溢れる江戸人の暮らしなどもまたいつか書きます。

◆和仁百年浮世絵 百年耐えうるデザインを。

 手打ちそば和仁さんが発展するように。百年耐えうるようなデザインを。昔からあったような日本人心象風景として心に溶け込むもの、それでいて独創的であり、そして未来への願いが込められている画を描きたいと着手しました。日本の画、和食文化の歴史も勉強して真意を捉えるのに数か月、様々な画風や技法を掴んで制作するのに数か月を要しました。
ゼロから、当時の食器や衣服のデザイン、船の構造をはじめとして、創り上げるには、大量の考証が必要でした。
和仁さんからは、いつでも構いませんと言って頂いていていたので、最高のものを創ろうと鋭意を込めました🥰

◆手打ち蕎麦 和仁(わに)

優しい微笑みのワニさん 和仁の優しい人々を表現しています。

和仁と鰐のダブルミーニング
 和仁(わに)さん、実はご主人の苗字が鰐川さんで、「鰐」にかけているのです😊🐊

◆オリジナルキャラクター「優しいほほえみのワニ」
 
生物のワニ(爬虫綱ワニ目)を色々と調べた上でオリジナルデザインを考え、優しい性格、表情のキャラクターを創り出しました。また、ゴツゴツうろこも恐竜みたいでカッコイイ🦖。細かく描いていきました。

和仁「和をもって仁となす」
 和仁さんの精神性を表現するものとして書きました。

◆巻物のデザイン
 巻物になっていますが、これは西洋画から着想を得ました。よくリボンが使われますが、これを和の巻物としてデザイン化しました。
和と西洋と現代の美しい感性と色彩を新たなオリジナルデザインとして生み出すこと。

蕎麦と天ぷらと日本酒と薬味
 そして、胎内に置くデザインは様々な古来の看板デザインから産まれているのかもしれません、このあたり、天の啓示のように降ってくるインスピレーションで創り上げています。蕎麦と天ぷらと日本酒と薬味のセットは、どれも和仁において、美味しい自慢の江戸から続く伝統料理なのです。これは江戸浮世絵なども参考にして描いています。

和仁・百年浮世絵解説『天下蕎麦四季歌』

◆和仁歌に込めた物語

この和仁歌が、画が伝えたい物語となっています。

和仁
日本一の名を轟かせし 和仁の手打ちそば
天下の将軍 これを食せんと欲し
忘れ難き 風光明媚な一興を 姫君と構ず
その話 伝え聞きて 異国船 和仁のそば 食せんと訪れる候 

和仁・百年浮世絵解説『天下蕎麦四季歌』 著 大樹七海

◆和仁歌の解説

 天下の将軍となれば、諸国から美味しい情報、腕利きの職人の存在などが入ってきます。
そこで、将軍は評判の和仁を呼び、手打ち蕎麦を食べたいと所望しました。

和仁のご主人、一世一代の披露です、真剣な表情そのもの。和仁の方々(ご主人・奥様・大旦那様)の着物柄に「わに」の文字が!
奥様が手にしているのは、そう、あの名物「蕎麦のチーズケーキ」なのです。

 そこで、一興を。単に美味しいものを食べるだけでは勿体ない。愛する姫君と友人達と、今でいうと、海辺のキャンプですね!当時のグランピングかも。美しい日本の自然の中で楽しく食事をしました。これは忘れ難い思い出となりました。

お殿様の服の文様や、食卓の布の文様に、輪〇の中に二、を描いていて、ワニと読めるようなデザインを描き込んでいます。料理を待ちながら語り合う時間も楽しくて。お付きの方々もちゃんと和仁のお料理を食べられましたよ!みんな満腹、大満足。

 当時の日本の画を見ると、将軍と姫が揃って食事をするものは見つけられないのですが、今の時代、家族・夫婦・カップル・友人で、楽しい食事のひとときを迎えることが自由にできます。その現代を織り込みました。

全員笑顔!楽しい歓談のひととき。着物の柄もそれぞれ違う描き込み。
これから始まる蕎麦の饗宴にワクワクが止まりません!
ちなみに食器類なども時代のデザインを様々考証。

 また、日本の海・浜・山・湖・森・林・野原・川・畑の風景、美しい桜、富士、松などの日本人が愛する心象風景を詰め込み、寺、神社と伝統継承を担ってきた信仰対象も描き込みました。

富士山、桜、松、神社、寺、山海、月の美しい日本ならではの捉え方。現代デザインを入れたりも。描画法と大胆な色彩構成。「金雲」で複数の画面構成を割り込み、焦点を当てさせるのも独特な手法。

 この素晴らしい、将軍の蕎麦会の話は、世界にも広まりました
そして、異国からも、和仁の手打ち蕎麦を食べたいと、やってくるようになるのです。

 今、飲食業は辛い状況にありますが、いつか、世界の人たちにも和仁の蕎麦を食べに来て欲しい(インバウンド。おもてなし精神)という願いです。

異国船の時代考証は難しい。大航海時代のキャラック船をイメージ。
波のダイナミックな描き方こそ、日本のデザインの真骨頂!


 この画は、日本の伝統、日本人の愛するもの、大切にするものを受け継ぎながら、新たな時代への夢を描いているのです。

 ぜひ、画を楽しみながら、和仁の蕎麦料理をお楽しみ頂ければと思います。また、引き続き、和仁さんに美術を提供していくと思いますので、お楽しみに🥰
(画の中に、大樹七海がいます。海の波模様の着物を着て、画を描いています。見つかるかな?また、画家の目を通して、この風景全体を見ている皆さまを現している、という視点の人物としても描いています。)


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