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クリエイティブな力を高めるコツ【クリエイティブディレクター/脚本家・山田英治さん】

「クリエイティブな力を高めるコツ」をテーマにした連続インタビュー。
今回お話をうかがったのは、クリエイティブディレクター/脚本家の山田英治さんです。
 
以下、山田さんの略歴です。
・大学卒業後、大手広告会社(博報堂)に入社。
・コピーライター、CMプランナーを経て独立。
・2018年春、社会テーマ専門のクリエイティブエージェンシー (株)社会の広告社 を設立。
・脚本家、映画監督、構成作家、作詞家、イベントプロデューサーなどとして多岐にわたる活動を展開。

山田さんのプロフィールを拝見し、まず気になるのは、その活動範囲の広さです。
起業された会社のお仕事のみならず、ドラマの脚本、映画監督、作詞やイベントなども手掛けていらっしゃる。
これはいったいどういうことなのか。
今回のインタビュー、まずはそこからお話をうかがうことにいたしました。

◎活動の広がりの背景について

僕のキャリアのスタートは、コピーライターでした。
その後CMプランナーとして、数多くのCMを手掛けました。
CMや広告づくりで最も大切なことは、「コンセプト」を考えることです。
課題を解決するには、誰にどうなってほしいのかを理解すること。
そして伝えたい相手を想定しながら、どんな情報を届ければよいのかを考えること。
短い時間で伝わる、心に刺さるメッセージを生み出すことも大切です。
これらを考えることが、コンセプトづくりの基本になります。
このスキルを活かしながら、僕の活動は多方面に広がっていったのです。
 
大きな転機は、映画づくりをはじめたことでした。
20代後半ごろ、僕は映画づくりに興味と憧れがありました。
TVCMは、15秒という時間制約のある世界です。
その枠を超えて、自分が表現したものを形にしたい。
そんな思いを強く持っていました。
そこで思い切って会社を1年間休み、映画学校に通いました。
はじめて触れる映画づくりの世界。
この学校で映画の基礎を学びました。
学んだ後は実践です。
アマチュアの監督兼脚本家として、インディーズ映画を何本か製作しました。
実際に映画をつくり、わかったことがあります。
それは、映画の世界も、大切なことは広告づくりと同じだということです。
アイデアの中心になるコンセプトを考えること。
伝えたい相手をイメージしながら、内容を考えること。
相手の心に響くメッセージをつくることも必要です。
CMと映画。
「入れ物」は異なるけれど、作るために必要なものは共通している。
そのことに気づいてから、僕の興味の対象は、多様なコンテンツへと広がっていきました。

◎ドラマの脚本づくりで行うこと

一時期、僕はテレビドラマの脚本も書いていました。
NHKで放映されていた「中学生日記」というドラマです。
以前製作した映画を見てくれたNHKの方が、興味を持ち、声をかけてくださったのです。
脚本づくりには、CMづくりの経験が役に立ちました。
CMをつくる際は、CMの登場人物やテレビの視聴者の気持ちになりながら、アイデアを考えます。
自分の独りよがりにならないよう、頭を切り替えながら発想をしていくわけです。
実はCMに登場するキャラクターには、緻密なプロフィール設定を施します。
性別や年齢はもちろん、どんな生活をしているのか。
どんな価値観を持つ人なのか。
それらの設定を考えた上で、動きやセリフを考えるのです。
また、登場人物だけではなく、視聴者の気持ちになりながら、中身を考えたりもする。
視聴者の関心ごとは何だろう。
どんな言葉が心に響くのだろう。
それらに意識を向けながら、CMの企画づくりを行います。
これ、ドラマも一緒なんですね。
ドラマでも、登場人物のキャラクター設定を、かなり緻密に行います。
さらにドラマを見てくれる視聴者のことを想像しながら、心を刺激するセリフや物語を考えていく。
そのように、CMづくりと近い感覚を持って脚本づくりの仕事を行っていきました。

◎自分の引き出しを広げるために大切なこと

アイデアを考える時は、自分なりにいろいろ「引き出し」を持っておくことが大切です。
広告会社の人間にとっては当たり前のことかもしれませんが、「引き出しを広げるためのお勧めのワーク」があるのでご紹介しますね。
それは、「心が動いたものを分析してみる」というものです。
例えば映画を見たとしますよね。
そしてその映画に感動したとします。
その時、「自分は何に感動したのか」を振り返ってみるのです。
例えば、感動の理由を明らかにしたり、自分の心の変化を探り、それを言葉として言い当てたりする。
すると、ああそういうことか!と心が動く理由に気づくことができる。
人との会話の中でも、これをやってみるといいですね。
笑えるような、何か面白い話題があったとします。
その時、何が面白かったのだろうと、その面白さの理由を考えてみるわけです。
これは怒った時でもいい。
泣いた時でもいい。
自分の喜怒哀楽に対して、「何でだろう」と考えてみる。
その理由に関する仮説を、あれこれと考えてみるのです。
自分ではなく、だれか他の人でもいい。
例えば奥さん。
奥さんが怒っているとする。
そうしたら、何で怒っているのか。
それをあれこれと考え、分析してみるのです。
(実際そんな場面に遭遇すると、冷静ではいられないことが多いのですが。笑)
大切なのは、いろんな角度から考えてみること
そして「言語化」を試みてみることです。
言語化のためには、頭の中だけで考えるのではなく、文字にして書いてみるとよいと思います。
僕もよく、スマホやノートなどに気づいたことを書き出すようにしています。

◎妄想を楽しむ

分析だけでなく、あれこれと「妄想」してみることも、発想力を高めるよい訓練になると思います。
僕の息子は野球をしています。
先日、試合を応援しに行ったのですが、そこでもいろいろ妄想が浮かびました。
例えば、夫婦で応援に来ている方を見ながら、
「このお父さんは、中学の時、部活は何で、どういうキャラで、今の仕事はこんな感じかな?」
「夫婦の言葉のやりとりから、あ、家ではママが仕切ってるな」、など。
2人の表情や動きを見ながら、楽しく想像してみるのです。
それが本当のことかどうかはわかりません。
でも、目に入った情報に対し、妄想力を駆使しながら、1つの物語を考えてみる。
それを楽しみながら行ってみる。
そんなことも、自分の引き出しを広げるよい訓練になると思います。

◎小さいころの経験

振り返れば、僕は小さいころから、考えることが好きでした。
妄想することが好きでした。
こんなことをしたら楽しくないか?
もっとこうしたら面白くない?
そんなことをいつも考えている子どもでした。
それが現在も、「楽しいこと」として自分の中にある。
もしかするとそれが、僕の発想力の源になっているかもしれません。
あなたにも、このような楽しい思考経験、ありませんか?
人って、子どものころは、いつも何かを妄想していたと思うんです。
そしてそれが楽しかった。
その楽しかった時間を、大人になった今、ほんの少しだけ取り戻してみる。
頭の中を自由に開放してあげながら、妄想を楽しんでみる。
これも、自分の引き出しを広げ、発想力を高める、大切なコツの1つかもしれません。

◎創作者になるためのアドバイス

「自分も生み出す側になりたい」
「創作する側でありたい」
もしそう思われるなら、自分なりの作品をつくってみることです。
つくるものは、自分が興味あるものでOK。
動画に興味があれば、実際に動画をつくってみる。
漫画に興味があれば、実際に漫画を描いてみる。
作り方は、インターネットを検索すれば、たくさん出てきます。
それらを確認しながら、見よう見まねで小さな作品を生み出してみる。
そして何か形にできたら、それを世に出してみる。
人の目にさらしてみる。
最初は、自分が思ったような作品にならないかもしれない。
でも、それでいい。
経験の数を重ねれば、スキルはきっと高まります。
そうすれば、作品の質は高まっていく。
そんなことを続けていくと、あなたに興味をもってくれる人があらわれるかもしれない。
その出会いが、次のステップへと導いてくれる。
 
これは作品ではなく、「アイデア」を生み出す時も同じです。
アイデアが生み出せるようになりたければ、まずは興味のあるテーマでよいからアイデアを考えてみる。
そして考えたものを人に見てもらう。
そうすれば、少しずつ生み出せるものの質が高まっていく。
そこから、次につながる道が開けていくのだと思います。
がんばってください。

◎振り返りとまとめ

以上、インタビューを通し、山田英治さんからうかがったお話をご紹介させていただきました。
 山田さんは自身のキャリアである、コピーライターやCMプランナーのスキルを活かし、クリエイターとしての活動を広げていかれました。
コアとなるスキルは、人それぞれ異なることでしょう。
まずは自分が得意とする経験やスキルを理解すること。
そして興味あるテーマがあれば、それを小さく形にすること。
すると、自分が持つスキルと興味あるテーマの接点が見えてくる。
もし見えたら、活動を続け、経験とスキルを磨く。
そのような積み重ねが大切だなと、あらためてお話を聞きながら感じたしだいです。
 
山田英治さんには、お忙しい中、貴重なお話をいただきました。
この場をお借りして、心よりのお礼の言葉を申し上げます。
本当にありがとうございました!


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