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「変わらないためにも、変わり続ける」 豆虎 中目黒焙煎所 〔マメトラ ナカメグロバイセンジョ〕 ・ レイモンド 福西 アンドリュー

OPEN MAGAZINE "Based in Nakameguro"では、中目黒エリアに拠点を構える店舗や人を特集し、街の魅力を繋いでいきます。

今回は、豆虎 中目黒焙煎所〔マメトラ ナカメグロバイセンジョ〕。店頭に取り揃えているコーヒー豆は、常時20種類以上。世界各国から仕入れた生豆をその場で焙煎し、香り高くフレッシュなコーヒー豆を提供しています。

中目黒駅から徒歩1分という立地なので、コーヒーを焼く香ばしいにおいに釣られ、思わず立ち寄った人も多いはず。

コーヒー豆を通じて地域に根付いてきた豆虎 中目黒焙煎所ですが、どのような「場づくり」を行なってきたのか。店長のレイモンド 福西 アンドリューさんに「駅近に店舗を構えるメリット」や「自身の展望」についてもお話伺いました。

きっかけは、抽出器具

-- ご出身がイギリスとのことですが、日本に来られた理由について教えてください。

アンドリューさん:2008年に念願の来日を果たしました。幼い頃から日本の文学に興味があったので、ずっと現地を訪れてみたいと思っていました。
ですが、当時は日本語が全く喋れなくて。どうしても読みたい日本語書籍があったので、必死に勉強したのを覚えています。

もともと、日本には1年間だけいるつもりでしたが、それだけでは満足できずで。「もっと日本を学びたい」そんな一心で居続けていたら、あっという間に15年以上が経ってしまいました。

-- だから日本語がお上手なんですね。では、当時からコーヒーはお好きだったのでしょうか。

アンドリューさん:実は、今ほど好きではありませんでした。当時は味より、コーヒー豆を焙煎している香りの方が好きでした。あの香りを嗅ぐと心が落ち着いて、幸せな気持ちになるんです。

しばらくして、日本の抽出器具はワールドクラスの品質であることを知りました。私も「そんな抽出器具を使って、コーヒーを淹れたい」そうと思ったのがきっかけで、コーヒー業界に興味を持ちました。それ以来、カフェや喫茶店を巡るようになって、独学でコーヒーの勉強をはじめたんです。

-- なるほど。日本の抽出器具は高性能な上、種類も豊富で世界中から支持されていますよね。では、豆虎で働くようになった経緯について教えてください。

アンドリューさん:実は、妻が豆虎を紹介してくれたんです。私は栃木県に住んでいたので、東京のコーヒーシーンにはずっと憧れていました。「コーヒーを仕事にしよう」と思って上京したところ、今の妻に出会ったんです。それで、妻が「美味しいコーヒー屋さんがあるよ」って教えてくれて。

豆虎に惹かれた理由は、コーヒーの美味しさと、私が大好きなファイヤーキングのコーヒーカップを使用していたからでした。直感的にも「ここで働きたい」と思えたので、直ぐに面接を申し込んだんです。

客層に合わせた豆の種類

-- 開業の地に中目黒を選ばれた理由について教えてください。

アンドリューさん:豆虎の一号店は赤坂のオフィス街にあったので、二号店はよりローカルな場所で開業することを決めていたようです。それで、若い方や地域の方に楽しんでもらそうな場所ということで、中目黒を選んだとか。コーヒーショップも多く、コーヒーラバーが多く訪れる地域であったのも決め手だったそうですよ。

-- たしかに。中目黒は多様な人で賑わう繁華街であり、地域住民が暮らす生活の場でもありますよね。客層もかなり幅広いのではないでしょうか。

アンドリューさん:そうですね。中目黒は浅煎りをメインにするコーヒーショップが多いのですが、うちは浅煎りから深煎りまで幅広く取り揃えています。客層が幅広いからこそ、その分、豆の種類も幅広く取り揃えておく必要があると思っています。誰が来ても好みの味に出会える場所にしておきたいんです。

時々、浅煎りが好きな方でも深煎りの豆に興味を持ってくださることがあります。こういった偶発的な出会いが楽しめるのも、実店舗ならではの良さですよね。

-- 豆虎 中目黒焙煎所は、コーヒーの新たな魅力に出会える場所なんですね。次は「場づくり」についてお話を伺っていきたいと思います。

小さな繋がりが大きなパワーに

--日頃の接客で心がけていることがあれば教えてください。

アンドリューさん:ここはカフェではなく、コーヒーの豆の専門店です。自宅やオフィスなど、この場所以外で私たちのコーヒーを味わうことになります。なので、そのお客様は「どんなシーンでコーヒーを飲むのか」と想いを馳せつつ、多様なシーンに合わせた豆選びを心がけています。

-- とても素敵な心構えですね。では、駅から徒歩1分という駅近に店舗を構えるメリットについて教えてください。

アンドリューさん:やっぱり「多くの人に見ていただける」というメリットがあると思っています。ですが、「見ていただけるだけ」なので、認知していただけるような工夫が必要です。

例えば、店前にキャラクターのオブジェを設置したり、コーヒー豆の専門店だと分かりやすいように商品を並べたり、少しでもこのお店に興味を持っていただけるような工夫をしています。

駅周辺にいる方は、これから目的を果たすために行動される方がほとんどです。ふらっとでも立ち寄っていただけるように、この場所は常に「入りやすい場所」にしておく必要があると思っています。

-- 昨今ではネットで効率的に買い物ができますが、実店舗で買い物する価値について、どのようなお考えをお持ちでしょうか。

アンドリューさん:ネットショッピングは便利ですよね。ですが、実店舗で買い物する方が楽しいと思っています。自分の目で見てたり、香ったり、飲んだりして、五感を使いながら楽しむ。これこそ実店舗でしか味わえない体験だと思います。

あとは、実店舗だとお店の人に相談することができます。ネットでも調べることはできますが、人に直接聞いた方が圧倒的に早いですし、思いがけない情報にも出会えたりしますよね。

-- 五感を使って楽しめる体験は滅多にないので、改めて貴重な体験だと思いました。豆虎 中目黒焙煎所は、いつも地域住民のお客さんで賑わっている印象があります。このようなお店が地域にもっと増えるといいですね。

アンドリューさん:うちのような小さなお店でも、人やお店との繋がりを多く持てば大きなパワーが生まれると思っています。なので、地域の事業者さんたちが、もっとフレンドリーになって、お互いのお店に行き合うような文化が生まれれば、この地域はより活気づくと思いますね。

栄枯盛衰ある地域で「在るべき姿」とは

-- 豆虎 中目黒焙煎所を今後どのような場所にしていきたいと思っていますか?

アンドリューさん:「いい香りだったから」たったそれだけで、ふらっと立ち寄れる場所にしたいです。コーヒーが全く飲めない方でも、興味さえあれば気軽に足を運んでほしいです。これからも誰かの人生に「コーヒーという新たな選択肢」を与えられるように、精一杯コーヒーの魅力を伝えていきます。

-- 最後に、自身の展望について聞かせてください。

アンドリューさん:この場所に来る理由を増やすためにも、ヒット商品を生み出したいと思っています。定番商品も大切ですが、常に新しいものを生み出し続けないとお客様は離れていってしまうんです。お店は変わらない部分と変わる部分があるからこそ、成り立っていると思っています。

中目黒には老舗も多いですが、栄枯盛衰も激しい地域です。この地域でお店を続けていくためには、時代ごとに合わせた動きと、変わらない強さが必要だと思います。「変わらないためにも、変わり続ける」それは店舗としてだけではなく、私自身にも言える大切なことだと思っています。


豆虎 中目黒焙煎所〔マメトラ ナカメグロバイセンジョ〕

本格的なガス火の焙煎機を使用し、オーダー毎に生豆を焙煎するコーヒー豆の専門店。

OPEN = 11:00~21:00 (平日)/  10:00~21:00(土日)
Adress = 東京都目黒区上目黒3-3-7

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