第8回note漁火

時代の光に照らされる “メガヒット曲“ は、どこに眠っているのか

最近は流行のサイクルが早く、ブームが去るのもとても早くなっています。お笑い芸人の一発芸などは、瞬時に日本国中に広がったと思えば、翌月には味わい尽くされて飽きられてしまいます。

ある意味、今は大衆がこぞって “流行りモノ“ をキャッチし続けるため、発信者も受信者も 動体視力“ ならぬ  動体心力“ が試されている時代だといえます。

では、ポップ・ミュージックの世界ではどうでしょうか。

以前は「One-Hit Wonder(一発屋)」という、一曲だけメガヒットを出して、その後はなかなかヒットに恵まれないことをいう、あまり嬉しくない言葉もありましたが、現在ではそんな言葉さえも見当たりません。

「とにかくその一曲でもいいから “メガヒット“ が欲しい」というのが本音ではないでしょうか。

メガヒットというのは、時代と時代の隙間を繋いでくれる “ボンド“ のようなもので、後から振り返ってみると、時代の境目の “楔(くさび)“ のような役割を担っていたように思います。

また、風が収まって別の方向から吹き始めるという、いわゆる “風向きが変わる時“ に生まれているようにも思います

そこで今回は “灯台と小舟“ の例え話です。

たくさんの小舟が、海面の至る所に停泊しています。そして暗闇でも小舟が迷わないよう、安全に港へ導くための灯台が岬に立っています。この灯台から発するライトは “時代のスポットライト“ のようなものです

同時に時代のスポットライトは、どんな舟が近くに停泊しているのか、海面を360度、くるくる回りながら探索しています。ある一曹の小舟にライトが当たれば、それは時代に注目され、選ばれたということになるわけです。

ところがいち早く港に着きたいと焦っている舟の船頭は、ライトに当たろうとして、後ろから必死に追いかけます。

その場面を想像してもらえればわかると思いますが、残念ながらライトの後ろを追いかけて全力で舟を漕いでも、決して光が当たることはありません。

逆に揺るぎない信念を持って、慌てず、じっくりと与えられた場所で力を蓄えながらチャンスを窺っていると、不思議とライトに照らされて、港へと導かれるチャンスが巡ってくるのです。

ライトが当たったら、今度は目指す港へと、勇気を持って思い切り舵を切れば良いのです。そのためにずっとこれまで地道に力を蓄えていたのです。そうすると今度はライトが舟の後ろを追いかけてくれるのです。

私はそのタイミングのことを「体重をかける」と言っています。

ライトが当たりそうな予感や、近づいているという感覚は、なかなか自分自身では分からないものです。ほんの一瞬なので、逃してしまう人もいますし、当たってもその場から全く動くことができない人もいます。

そのためにも岬で双眼鏡を持って、常に見守ってくれるコーチ役が必要なのです。

メガヒットは、時代の風向きが変わった瞬間に誕生し、その後追い風に乗ってくると、これまでの価値観を覆して、信じられないような “ドミノの逆倒し“ 現象を起こします

自分の作品が理解されないからといって必要以上に迎合せず、自らの舟の停泊位置を確認しながら、作品力を磨いていって欲しいと思います。

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