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「焼肉ライクとさくら亭」

みなさんには,他人に理解されようがされまいが,大切にしている自分だけの「こだわり」のようなものはお持ちだろうか?

私には15歳の時,自分に課した約束がある。
それは,絶対に「焼肉とお好み焼きだけはお店で一人では食べない」ということである。

まだ「ソロ活」とか「おひとり様」という言葉が生まれる前の話である。私は小学校高学年からこのソロ活を謳歌していた。自宅のある福岡の郊外からバスや電車を乗り継いで行く片道1時間の繁華街への買物から始まり,中学生になると一人で飛行機に乗って東京にも行った。その旅行で初めて東京芸術劇場へ足を踏み入れた時の感動は今でも覚えている。それ以来コンサートはもちろんのこと,映画,アート鑑賞,旅行などなど,気がつくとソロ活動歴約30年になろうとしている。だから飲食店に一人で入ることもなんてことはない。しかし,冒頭でお話したように「焼肉とお好み焼きは一人では食べるまい」と心に決めている。なぜかと言うと,こちらの食事はソロだと楽しみが半減してしまうからだ。

同じ網や鉄板で素材を焼き,想像以上に相手を慮りながらコミュニケーションをはかる。一見すると面倒くさい工程や時間の流れではあるのだが,強制的に発生する共同作業が初対面の人だろうとなんだろうと一気に距離を近づける。このスリリングでエキサイティングなひと時はソロでは味わえない。栄養を補給する以上の要素が,焼肉とお好み焼きには詰まっているのだ。しかし,こんな私でも,たまにとてつもなく肉を欲することがある。「肉が,しかもハラミが食べたい。しかし,焼肉は一人で食べたくない。ムムム。。。」それなら家で食べれば良いじゃない? とツッコミが入ると思うが,そういう問題ではない。ハラミを網で焼いて食べたいのだ。そんな「ただ単にハラミを食べたい」という悩みが,今宵ついに解決してしまった。「焼肉ライク」に出会ってしまったのだ。

「欲しかった、1人で行ける焼肉屋」というドンピシャなキャッチコピーに吸い込まれるように店に入った。席に着くと目の前には小さな一人用のロースター,引き出しを引くとおしぼりやお箸がセットされている。注文はタッチパネル。好きな種類の肉を指先一つでオーダーできる。ご飯を気兼ねなく大盛りにできる。「これこれ! こういうの待ってました!」と心踊るのと同時に,カップルで来ている隣客に向かって「なんでカップルで来るんだよ! 別々の網で肉焼いて楽しいのかよ! となりの牛●に行けよ!」と心の中で暴言,しかし至極真っ当な意見を叫びながら黙々と肉を口に運び続けた。

ということで,「焼肉ライク」の登場によって,ついに私のソロ活ラインナップに「焼肉」も加えられてしまった。しかし,もう一つの「お好み焼き」はこれからも頑なに拒み続けたいと思う。

「さくら亭」というお好み焼屋をご存知だろうか? こちら,なんとアートを楽しみながらお好み焼きを楽しむことができる。ストリートアート調に彩られた店内には,海外からのお客様も多く,表参道ヒルズに近いという立地ながらリーズナブルな値段でお腹いっぱいのお好み焼きを味わうことができる。いくらアートを一人で鑑賞できる私でも,ここでは気のおけない仲間と一緒に楽しみたい。形が崩れようと,真っ黒になろうと,みんなでワイワイと言いながら作ったお好み焼きを頬張りたいと思う。

さくら亭

http://www.sakuratei.co.jp

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