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「初演を聴く嗜みと楽しみー歴史的瞬間!? を味わおう!」

「なんだ! この音楽は! 金返せ,コノヤロー!!」
「黙れ黙れ! まさに天才だ! 貴様はこの新しい芸術の素晴らしさがわからんのか?」
「なんだと? この断末魔のような響きが芸術だと? やるかテメー! ◎△$♪×¥○&%#?!......」

1913年5月29日。ロシアの作曲家ストラヴィンスキーのバレエ『春の祭典』の初演時には賛成派と反対派の観客達がお互いを罵り合い、殴り合い、野次や足踏みなどで音楽がほとんど聞こえなくなったとか。

今日ではバレエの代名詞となったチャイコフスキーの『白鳥の湖』も,初演は大失敗。チャイコフスキー死後に,リバイバル上演された時にその真価が評価され,歴史に名を残した。つまり,チャイコフスキーは現在の状況を全く知らない。オペラのことを知らなくても,誰もがその題名だけは知っているであろうヴェルディ作曲の歌劇『椿姫』も,キャスティング・ミスも重なり初演は大コケした。

と,まぁ,現代で歴史に名を残す名曲と呼ばれる作品も,最初のお披露目,つまり初演時にはヤラカしてしまったという逸話が数多く残っている。しかし,ここで忘れてならないのは,「初演」は歴史上,たった1回しかないということ。

2019年6月現在,『春の祭典』をCDでも,Youtubeでも,そしてコンサートでも,演奏を聴くことは難しくなくなった。しかし,1913日5月29日のその日に戻って,『春の祭典』の初演を聴くことは不可能なのだ(タイムマシーンが発明されなければ)。

それに気がついた時,初演を聴く嗜みと楽しみに目覚めた。

「もしかしたら,この初演は後々語り継がれる演奏となるかもしれない,そんな歴史的な場面に立ち会った一人になれるかもしれない。しかも,そのコンサートには必ず作曲家が客席にいる。チャンスがあれば,その作曲家に直接もの申すことができるかもしれない。どさくさに紛れて『素晴らしかったです!』とか,満面の笑みで握手できるかもしれない。そんなヨコシマな気持ちもムクムクと沸き起こった......」

そうです。初演を聴く嗜みなんて書きましたが,結構安易!? な気持ちで聴いています(少なくとも私は…)。

ですが,考えてみると普通のコンサートでは味わえないスペシャルなことがたくさん詰まっていることがおわかりになると思います。

その1:「作曲家が必ず(と言っていいほど)会場にいる」
私たちはどんなに願ってもベートーヴェンやバッハ,ショパンと直接お話しすることはできません。それに引き換え、終演後無事に初演を終えてホッとしている作曲家をつかまえて「どんな気持ちで作曲したのですか?」というド・ストレートな質問をしても、曲を聞いてくれたということだけで真摯に答えてくれるはず(きっと)。

その2:「初演という日は2度と来ない」
作曲家・演奏家・聴衆など,その場に居合わせたすべての人にとって特別な日になります(泣いても笑っても)。

その3:「終わるまで何が起こるかわからない」
どんなにリハーサルで上手くいっていても,本番で何が起こるかわかりません。しかも,作曲家の筆が遅かった場合,その影響を被るのは演奏家。本番直前まで鬼の形相で練習するとかしないとか・・・(とてつもない緊張感が漂っていることは間違いない)。

新しければ新しいほど敬遠される世界。それがアートや現代音楽の世界。
しかし,ちょっと見方を変えれば,今まで味わったことのない面白さを発見できるはず! 令和元年,「初演」デビュー,してみませんか?

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アートな小部屋

「半径50mのアートマネジメント」をモットーに、アートと人々をつなげるハシゴを、読みやすい文章で作ることを目指すアートマネージャー。また、収納無しの16平米ワンルームに工夫を施しながら快適に生活するオプティマイザーな暮らしも探求中。そんな家主が届ける「アートな小部屋」な話。
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