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#16|うまくいくコミュニティの共通点(後編)

コミュニティは、人生をより豊かにする居場所となるー。
「偏愛物語」とは、オシロ代表の杉山博一が「偏愛」を紐解く連載企画。
第16回は、前回に続いてコミュニティがうまくいくポイントを紹介する。

前回はうまくいくコミュニティのポイントとして、目的の重なり、参加者の熱量フィット、ビッグバン現象の3つをお伝えしたが、今回はさらに4つ紹介する。

安心安全の環境づくり

コミュニティ運営において何よりも大事なのが安心・安全の場をつくること。これは、誹謗中傷や批判・悪口といったナイフを持っている人がいませんよ、ナイフがない世界だからこそ鎧を脱ぎ裸でとことん語り合えるよ、という環境をつくること。なんなら裸で寝そべっている(=コミュニティにいるだけ)だけでもいい。

それはナイフを持った人が入ってこれる無料の公園(オープンなSNS)ではなく、ナイフを持っている人が入れない場所をつくるともいえる。城壁(クローズドなSNS)によって安心安全が担保されるのだ。

では、どうやってこの城壁をつくるのか??月額会費の設定もひとつだし、身分証明書の提出、紹介制などもある。ただ、基本は、共通の興味関心ごと、大事な価値観がある場にすること。そして城壁の中での交通ルール(ガイドライン)を設定することだ。こうした入会条件や入会ハードル、ルールがあると、メンバーに安心感が生まれる。安心感があると、自然とコミュニケーション量は増え、ふるまいが浸透し、事故は起きづらいため、やがてはコミュニケーションの質が高まっていく。そうしてコミュニティが居場所になっていく。

難しいのは、この「安心安全」はコミュニティごとに違うということ。しかも、メンバーごとにも違う。ではみなさんどうされているか?ちゃんと話しあい、対話されているのだ。

たとえば、俳優の山田孝之さんが主宰となる「原点回帰」というコミュニティでは、入会時に身分証明書の提出を求めている。これは、身分を隠したいというような人が入ってこれない設計で、コミュニティの安心安全のために運営側で確認されている。
クローズドだからオープンになれる。この組み合わせを築けているコミュニティは、非常にうまくいっている。

余白

決めすぎないところがうまくいっている。もともとデザインをやっていた身からすると、デザインは余白で決まるといってもいいくらいの要素。コミュニティも同じだったのだ。

コミュニティの決め事もそうだし、コンテンツ記事や企画、行事までも。あえて未完成や不完全な状態にして、メンバーがコンテンツやコミュニティの作り手や担い手として入り込める余白を残しておく。見落とされがちだけど、メンバーが自発的になってコミュニティが活性化する上での大事なポイントだ。

これまで多くの運営者さんと話してきた中で、とくに初めてコミュニティ運営をすると運営側はついつい企画やコンテンツを作り込みすぎたり決めすぎたりしてしまう。しかしそうすると、運営側の負担が増え持続可能ではなくなってしまうだけでなく、実はメンバーが参加できる楽しみを損なうことにもなってしまうのだ。

メンバーにとっては、コミュニティのビジョンやコンセプトに強く共感していたり、自分が偏愛をもつテーマのコミュニティに入ると、アクティブに参加したいと思い、貢献したい気持ちを持つようになる。自分が大好きなことは、それを誰かと一緒に楽しみたいと思っているから。全員ではないが一定数こうした熱量の高いメンバーがいるのだ。

これは、実際に熱量の高いコミュニティをもたないとなかなかわかりづらいことであるため、運営者が直接こうしたアクティブなメンバーに出会ってから余白の必要性に気づくことも多い。

あえて余白を作る。それにより、メンバーの熱量や想いをアクティブな行動に変えるのだ。

おせっかいのギリギリ

「コミュニティを盛り上げてはいけない」。これは「ファンベース」を提唱するさとなおさん(佐藤尚之氏)がおっしゃった言葉である。例えるなら、キャンプファイヤーではなく、焚き火。楽天大学の学長である仲山進也さんも、焚き火理論として提唱されている。

ぼくはよくコミュニティを「ぬか床」に例えて説明する。うまくいくコミュニティは、かきまぜすぎず、かきまぜなさすぎず、ということを見つけた。実はこのいい塩梅のおせっかいができる人が多くない。

かつて地域にはおせっかいなおばさまがいた。情報通で、誰かを助けたり、人と人をつなげたり、地域の重要な役割を果たしたりしていた。でも介入しすぎると、「おせっかいだなあ」と疎ましく思われてしまう。

だからぼくらは適度なおせっかいの”ギリギリ”を攻めることが大事だと思っている。

たとえばOSIROでは、興味のあるテーマをタップできるようにして、なければ自分で作って、メンバー同士の共通点がわかるようにしている。ちょっとおせっかいギリギリな機能があることで、人と人がよりつながりやすくなるのだ。

最後は「愛がある」こと。
よい状態で続いていくコミュニティには、オーナーのコミュニティに対する愛がしっかりある。

それはたとえば、SNSやオープンな場では言えないことや自分が挑戦しようとすることをコミュニティのメンバーに打ち明けたり、大切な人にだからこそ言えることを明かしたり。また、自分の大切な価値観を共感・共鳴し合っている仲間という感覚があるから、メンバーと一緒に様々なことに挑戦したり、メンバーの挑戦を応援する気持ちも湧いてくる。

愛のあるオーナーさんは、コミュニティメンバーの夢や目標、挑戦を応援する人が多く、これは、OSIROの企画であるオーナーインタビューでの対談時、多くのオーナーさんが口にしていたことでもある。愛があるオーナーさんは、そもそもコミュニティの目的をTAKE的な位置づけではなく、GIVE的な位置づけにしているとも言える。

それはOSIROのコミュニティに限ったことではない。
たとえば、世界的に愛されるオートバイメーカー「ハーレーダビッドソン」は熱狂的なファンに支えられている。ハーレーはファン向けに毎年フェスを開き、チケットもそれなりの金額にもかかわらず、日本全国から約1万人も集まる。ハーレーというブランドは、ハーレーという相棒のあるライフスタイルサポートに徹しているのだ。これもサポート、GIVE的なある意味コミュニティでもある。

ぼくの持論ではあるが、「愛されるブランドとは、愛されるコミュニティ」でもある。

コミュニティ運営のコツについてはまだまだ書ききれないが、今回はここまで。いつか丁寧にまとめたいと思っている。

次回はサブスクコミュニティならではの魅力を伝えたいと思う。「サブスク」はハードルを高く感じるかもしれないが、じつはコミュニティにとっていいところがたくさんある。詳しくは次回に。

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