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創作初心者のためのラブコメ展開の作り方【②︰共同作業編】


 こんにちは、渡柏きなこです!

 前回の記事では、ラブコメ物語の導入編、主人公とヒロインが出会って、お互いに興味を持つところまでを解説しました。

 つまり、『強烈なファーストインプレッション』によりヒロインのことが気になるようになった主人公が、クラスメイトなどから『表面的な二次情報』を得るも知りたいことが知れず、今度は自分からヒロインに対しアクションを起こすことで『再会と確認』を果たし、ヒロインからも興味を持たれる、という流れがそれに当たります。

 前回は実例として私自身もその場で思いついたお話をチャートに沿って展開しました。未読の方はせっかくですから是非ご一読ください。10分もかからないと思いますよ!

【簡単創作術】あなたの物語にラブコメ展開を!①【出会い編】

 さて、本日の記事はその続き、互いに興味を持った主人公とヒロインがどうやって仲を深めていくのか? その王道パターンについて解説していきます。今回も先に結論だけ書いてしまいますが、ポイントになるのは『共同作業』をさせること! 詳しく見ていきましょう!

ーキャラクターの仲良し方程式ー

【Part.1:出会い】
・ファーストインプレッション
・表面的な二次情報
・再会と確認

【Part.2:共同作業】
・興味と質問
・咄嗟の救助と返報性の原理
・仲良しの儀式

《間》

【Part.3:自覚】
・周囲からの指摘
・特別という認識
・行動の変化とギクシャク

『Part.2︰共同作業』

 これ、創作界隈ではよく囁かれる魔法の言葉ですよね。キャラの仲を深めるには共同作業をさせよ。でもでも、これもただ淡々とやらせるのでは駄目なのです。

 大事なのは共同作業を通じて、お互いに相手を助ける場面が発生すること。そしてお互いに、相手の良い部分や好きな部分を発見していくことです。

 詳細なチャートは以下の通り。そして今回、2-1〜2-3は順不同です。入れ替えたり、どこかにクライマックスを入れたりして、独自のリズムを作ることができます。色々組み替えて、自分が書きたいお話に相性の良さそうな組み合わせを考えてみましょう。

2-1︰興味と質問(=秘密の共有)
ヒロインに興味を持った主人公は、ファーストインプレッションの際の出来事についてヒロインに訊ねます。基本的には「なんだそれは!?」という理由が語られるでしょうから、そこは主人公が大なり小なりツッコミを入れると読者が納得してくれやすいでしょう。ヒロインの事情を知ってしまった主人公は、ヒロインのことが放っておけなくなります。※主人公とヒロインは逆でも構いません。以下も同じくです。

2-2︰咄嗟の救助と返報性の原理
ヒロインがピンチに陥ったのを見て、主人公は咄嗟に助けてしまいます。助けてもらったヒロイン側も、返報性の原理によって、チャンスがあれば主人公を助けてやろう、という気になり、何らかの形で返します。借りを作りたくない、とすればツンデレっぽく。借りを返したい、とすれば素直な感じになります。

2-3︰仲良しの儀式
ある程度仲が深まって来たところで、二人は何らかの楽しみを共有します。一緒に食事をするとか、同じ部屋で眠る、ふたりで映画を見る、雪合戦とか対戦ゲームでもいいです。本音を交えたマジゲンカとかでもいいですね。河原で殴り合って中々やるじゃん、お前もな、みたいな古き良き展開もこれに入ります。ふたりで過ごすことによって、お互いに『あいつとは仲良しだ』という認識が芽生え、事実上かけがえのない存在になっていきます。

 以上がラブコメの主人公とヒロインを仲良くさせるための第二段階・共同作業のパートです。何故このパートの名前が『共同作業』なのかといえば、これらの出来事が、ふたりの共同作業の中で行われることが多いからです。

『共同作業』には「何らかのミッションをこなす」とか「二人で一つの作品を仕上げる」とかの明確な目的意識のある作業だけでなく、「ヒロインの秘密を守る」とか「穏便に過ごす」とかの突発的な作業も含まれます。

 これをうまく使っている流行のラブコメ作品として、『僕の心のヤバいやつ』は大変な良例ですので是非ご覧下さい。

 モデルである山田は案外ドジだったり、大食いだったり、泣き虫だったりします。それを主人公の市川くんが『そういうところって人に見られたくないだろうな』と察して行動し、山田を助けます。

 市川に興味を持った山田は血液型を聞いてみたり好きな食べ物を聞いてみたり、段々と仲を深めていきます。最終的には市川の昔のことや、根幹になっている考えなどを聞き、返報性の原理に従って、今度は市川の心を助けます。

 仲良しの儀式としては、毎日一緒に図書室で過ごしていることや、ふたりで渋谷に出かけたこと、自転車に乗って帰ることなんかがあげられるでしょう。

 ネタバレを避けるためアニメの内容のみをぼかした内容でお伝えしましたが、それだけでもこれだけあります。とても面白いのでぜひ……!

 さて、では今度は実例として、それぞれのパートを自作してみましょう。前回の記事で書いた二人組にもう一度登場してもらいます。子供の頃は「仮面ライダー555になりたい」という夢を持っていて、だけどいまは諦めてしまった高校生の男の子。そしてクラスのアイドルの金髪縦ロールな感じのお嬢様。彼らのお話の続きを考えていきます。

 お嬢様が仮面ライダー555の玩具のベルトを身につけているのをたまたま見てしまった主人公。クラスの友だちに聞いても彼女が仮面ライダー好きという話は聞かない。意を決して授業中に仮面ライダー555を見ている人にしか通じないネタを叫んでみると、クラスの誰も笑わない中、ヒロインのお嬢様だけが「ぷふっ!」と吹き出した。あいつは相当な仮面ライダー好きに違いない……! そんな折、主人公はヒロインに呼び出された。「ちょっとお面をお貸しくださる……?」ふたりはこれからどうなってしまうのでしょう?

2−1︰興味と質問

 昼休みの屋上に呼び出され、主人公はヒロインのお嬢様に問い詰められます。

「いくら欲しいんですの!?」
「……は?」

 どうやらヒロインは主人公が金目的でヒロインに脅しをかけているのだと判断した模様。主人公は否定しますが、お嬢様はなかなか信じてくれません。話してるうちに主人公は不思議に感じます。

「なんでそんなバレたくないのに、ベルトつけたまま学校に? 家で遊べばいいじゃないか」

 するとヒロインは答えます。

「ファイズドライバーが失くなってしまったら、私はへなちょこになってしまうのです……!」

 話によればヒロインは昔たまたま配信で見た仮面ライダー555に惚れ込み、自分も誰かのヒーローでありたいと強く思った。そして555のベルトを父親に内緒でじいやに買ってもらった。ベルトをつけると力が湧いた。そのおかげで家の厳しい教育や習い事に耐え、マナーや立ち居振る舞いにも気をつけることができたのだとのこと。

 彼女の気品や優雅さを保つため、555のベルトは絶対に必要で、外すとなんのために頑張っているのかわからなくなってしまうのだそう。

「め、めんどくせぇ……!」と思う主人公。しかしちょっとだけわからんではない。昔自分もベルトをつけて遊んだときは背筋が伸びたものだった。


 はい、ここまでが『興味と質問』のパートです。今回は紹介順に作ってみました。『バレたくないのに学校にベルトをつけてくる』という矛盾を解決するため、そこに理由付けをしています。ヒロインの弱点を知った主人公は、この後ヒロインのことが放っておけなくなるわけですね。さっそく続きを見ていきましょう。

2−2︰咄嗟の救助と返報性の原理

 ヒロインの事情を知った主人公は「とにかくバラす気はない」とヒロインに説明しますが、ヒロインは全然信じてくれません。「近日中にバレたら主人公がバラしたものとみなしますわ! お覚悟を……!」と宣言します。いいだろう、バラす気ないのは本当だし、と承諾する主人公。しかしヒロインは思ったより阿呆の子でした!

 スマホと間違えファイズの変身に使うガラケーを出してしまう。授業中に誤ってベルトのスイッチを入れ音声を流してしまう。体育のときベルトを付けたまま着替え始めてしまう、などなど……

 その全てをどうにか事前に察知し、主人公はほうほうの体になりながら防ぎます。おかげで着替え中に教室に入ったとクラスの女子連中からボコボコにされる始末。

「ドジすぎるだろ! なんでいままでバレなかったんだ!?」

 どうやらさっき話に出てきた『じいや』がいままでバレないよう対策してたらしいのですが、先日腰をやってしまったらしく、いまは助けに入れないのだそう。

 面倒見きれないぜ、もう放っておこうか……なんて主人公が検討していると、再びお嬢様に呼び出されます。今度はなんだよと再び屋上へ向かうと、そこには救急箱を持ったヒロインがいました。

「さすがにわかりますわ。あなたが打算ではなく善意で助けてくださっていること。今朝は、疑ってしまってごめんなさい」

 そう言ってヒロインは主人公の治療を始めるのでした。

 はい。ここまでが『咄嗟の救助と返報性の原理』です。人は自分を助けてくれた相手は助け返したくなるもの。打算無き善意には思いもよらぬ善意が返ってくるものです。傷を追ってまでヒロインを助けた主人公に、お嬢様は傷の治療という形で恩を返します。今回はこのまま『仲良しの儀式』まで繋げていきましょう。

2-3︰仲良しの儀式

 治療の際、二人は再び会話をします。なぜ他のライダーではなく555なのか? 好きなエピソードは? ゲーム版は遊んだか? 色んな話で盛り上がるふたり。その後、お嬢様は特製のお紅茶を主人公に振る舞いますが、主人公は飲んだ瞬間「熱っ!」と飛び上がります。

 それを見て「まぁ!」と喜ぶお嬢様。何を隠そう、555の主人公も大変な猫舌という設定なのです。

「いや、これはネタじゃなくて本当に猫舌なんだ……」
「あらま、どうかしら?」

 と二人して笑う主人公とお嬢様。そんなお嬢様の笑顔に、主人公はいつしか少し心惹かれているのでした。

 はい! 以上までが『仲良しの儀式』のパートになります。最初に話したときと同じ「学校の屋上」のシチュエーションを使うことで前回と今回のギャップを目立たせる構成にしてみました。主人公とヒロインのふたりが、冒頭の時点よりもかなり、それも自然に仲良くなっているのがおわかりいただけるかと思います。

 今回の流れを参考にしつつ、あなたのお話のキャラクターもじんわり仲良くさせてあげてください! チャートはあくまで一例ですので、自分なりにカスタマイズして楽しく進めるのがコツです!

 本日の記事は以上までとなります! 次回は気になる第3段階、ふたりの関係が両片思い化していくまでを描きたく存じます。主人公とお嬢様は一体この後どうなるのか……? まだ私自身も考えていませんが、楽しみにしておいていただけますと幸いです笑。

 それでは、また来週の記事でお会いしましょう! あなたの創作ライフが少しでも良くなることを願って。渡柏きなこでした!

前回:【簡単創作術】あなたの物語にラブコメ展開を!①【出会い編】

次回:【チャートで簡単創作】王道ラブコメの作り方【③︰自覚編】

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