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【創作解説】一番簡単なお話の作り方:アウフヘーベン型ストーリー

はじめに

小説が書きたい! けど何から初めていいかわからない……そんな創作者の卵の皆様、こんにちは、渡柏きなこです🖋️

お話を書く時にはまず、全体のストーリーが必要。どんな主人公が、どんな問題を抱えていて、どんな人や出来事に出会い、どんな成長をして問題を乗り越え、その先にどんな変化があったのか……? それを描くことで、読者のみんなに主人公の成長を追体験してもらうのが、小説や映画や漫画やアニメ、全てに共通する『物語の王道な流れ』です。

さて、じゃあそれをどんな風に作ったらいいのか? プラモのパーツは全部揃ったけど、どう組み立てたらいいの? 美味しい素材は手に入ったけど、どう料理したらいいの? というあなたに、本日は最も簡単な最小の物語、『アウフヘーベン型のストーリー』について解説します。一緒にやってみましょう!



アウフヘーベンとは?

そもそもアウフヘーベンとは何か? これはドイツの哲学者・ヘーゲルが作り出した考え方です。その内容はこんな感じ。

ある考え方Aとそれに対立する考え方Bがある時、それらは片方がなくなってしまうのではなく、組み合わさることでより新しくより素晴らしい考え方ABができる。

難しく聞こえるかもしれませんが、簡単に言うと、きのこの山とたけのこの里、どっちも美味しいのだから、両方が半分ずつ入ってるお菓子を出したら良いのでは?みたいなことです。ではこれをストーリー作りに使うとどうなるのかというと……


実例:創作趣味の少年が主人公の場合

例えば創作が趣味の、中学生の男の子が主人公だったとします。彼はいつも家で本を読んだり、小説を書いたりして過ごしていて、だけど絶賛スランプ中。書くのがつらくて苦しくて、つい学校で楽しそうにしている陽キャのクラスメートたちが少し羨ましく感じてしまう……そんな毎日を過ごしているとします。

すると
A:このままひとり、同じ生活を続けていく。
B:趣味を捨てて、陽キャの仲間入りをする。

という二種類の選択肢が浮かんできます。物語の序盤では、Aの考え方をしていた主人公が、Bの考え方に変化していく様子を描くわけです。

例えば主人公がネタ帳を学校に忘れて、それを陽キャのヒロインに読まれてしまうとしましょう。陽キャのヒロインは案外物語が好きで、主人公の書いたネタを褒めちぎります。主人公は陽キャのヒロインとよく話すようになり、周囲に友達も増えて、遊ぶ時間が増えていきます。しかしあるときふと気づくのです。自分は遊んでばかりで、全然創作していない。

『最後にお話を書いたのはいつだろう……?』

こうすると主人公の中に葛藤が生まれます。Aも大切、Bも大切。自分はどっちがいいんだろう……? そして悩んだ結果、主人公は『どっちも大切だ、片方を捨てるなんてできない!』と決意して立ち上がるわけですね。そこからはAもBも両方を取るためにはどうしたらいいか? 主人公が考えて、工夫をこらす流れになっていきます。


コツは『両取りなんてできなそう……』と思わせること!

いかがでしょうか? 案外簡単でしょう? コツは『AとBの両取りなんてできそうにない!』と読者に思わせること。

今回の例で言うなら例えば、陽キャ集団にはルールがあって、『一人の時間はみんなの時間。誘いを断るやつは死刑!』みたいな合言葉をみんなが使っているとかにしてみます。すると主人公としては「こんな合言葉を言っている人たちに、小説が書きたいから今日は先に帰るねなんて言えないよ。どうしよう!?」となるわけです。

これを解決するためには、陽キャ集団のルールを変え、納得してもらうだけの主人公の熱意と、説得力、勇気、いろいろなものが必要です。主人公自身の言葉や、過去の作品、家の本棚や、机の上に広がるアイデアのメモの束なんかを目の当たりにし、ヒロインの説得とかもあったりなんかして、陽キャ集団は自らのルールを改める……良さげな展開になってきましたね。

あとは主人公自身が越えなければならない問題、スランプの脱出さえできれば話は完結します! 陽キャたちとの関わり、彼らなりの大変さ、大勢で遊ぶ楽しさなんかを味わったおかげで、スランプが脱出できたことにすると良いでしょう。

実はあの作品もアウフヘーベン型物語だった……!?

こんな簡単に、しかし骨太王道なストーリーが考えられてしまう『アウフヘーベン型ストーリー』ですが、なんと意外にも超有名な映画に使われていたりします。その有名映画とは、ディズニー&ピクサーの最高傑作と名高いアニメ映画『リメンバー・ミー』。

この作品の主人公・ミゲルくんはミュージシャンになりたいという夢を持つ少年。しかし家族はとある事情からそれを許してくれません。ミュージシャンになる夢を追うか、家族との絆を取るか、迷った末にミゲルくんは――? というストーリーです。ほら、どこかで聞いたことのある構造でしょう?

参考になるかもですし、本当にとっても面白い映画なので、よかったら『リメンバー・ミー』見てみてください! ディズニープラスで配信されてます!

おわりに

さて、今回の記事はいかがでしたでしょうか?

創作初心者の方や、たくさん書いていて行き詰まっていた方、色々考えてはいるけど言語化が難しかったよという方なんかに喜んでもらえていたら幸いです✨

役に立ったな、面白かったなという方はぜひハートボタンと、コメントなんかもくれたらとっても嬉しいです✨


渡柏きなこの創作記事は毎週水曜更新予定! 毎週日曜にはこれらのテクニックを駆使して書いた私自身の作品もカクヨムで更新されますので、そちらもぜひ楽しみにしていてくださいね。更新情報はX(旧Twitter)をご覧ください🙇‍♂️

それでは、あなたの創作ライフが少しでもよくなることを祈って……! また来週〜🖋️

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