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「道」のうえで -遠音とエンジンと消しゴム-
遠くから聞こえるすべての音というのは、なぜか懐かしく感じる。学校のチャイム、野球の練習をする少年の掛け声、通りを走る車のクラクション、花火の音、爆竹の音、雷鳴が聞こえると、遠くで降りすさぶ豪雨の音も聞こえる気がする。仮に隣の国で戦争が起きて、銃声や爆撃音が聞こえてきても、それは血みどろの争いを想起させる前に懐かしさを与えるのだろう。遠音が発生して秒速300mで僕の元へと訪れる。その数秒の間に起こ
もっとみるその日から離れた男が覚えていること
長い時間がたつと人は疲れるようにできている。それが楽しい、わくわくするような時間であっても同じで、愛する人々であろうが四六時中一緒にいればうんざりするものだ。仕事なら言うまでもなく当然のことで、男は長い時間を今日も耐えて、家に着いた。
荷物を居間に放り投げ、コンビニで買ってきたコーヒーを飲みながら煙草を一本吸って、玄関に置いてあったグローブと軟式ボールを持って外に出た。男の家の裏には廃校舎があ