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ZAZEN BOYS 12年ぶりの新作アルバム「らんど」に感謝を込めて(向井風オリジナル曲の歌詞)マイナーチェンジ

ZAZEN BOYS 12年ぶりの新作アルバム「らんど」に感謝を込めて(向井風オリジナル曲の歌詞)マイナーチェンジ

繰り返される
諸行は無常
それでもやっぱり蘇る
性的衝動

寒い日に酒買って
しどろもどろの夜
によくある打ち明け話
気付けばあたし
天気のはなし
ばっかりしよる
嘘の夜 

恋人たちは
なんかしよる
視線は伸びていくばかり
鳥の顔がよく見える
そんなこというのは
わたしだけ

夜中のyoutube
都会でひとり
焚火囲む
増えていく
皺の数だけ夢をみた

やるべきことはわかっとる
言うとるうちは

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急がない朝の女

急がない朝の女

その女は毎朝歩いた
ただ歩けばいいと言われれば
誰だって歩けそうな道を女は歩いた
片手には
夢の国から田舎の国まで
離れることのなかった地図と
男の印が隠された
トートバッグをぶら下げて

何度も聴いて
何度も聴いて
それはもう呪文になって
バス停から飛びたった気高き老女の歌声が
聞こえてきても聴きつづけた流行歌が
いまを告げている
運転手は今日も前を見ていて
女もそこから前を見ている

大きくな

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雑記

 幾度となく繰り返される冗談にもいつかは炎が灯ればいいと思っていた。それは毎日使う歯ブラシや運動靴、なぜ生えているのかわからない髭、歩きなれた町、そこに立つショッピングセンターの屋上から見える景色。そんな、さりげない会話のようなものに魔法をかけたところで、過ぎていく時間には埃が降り積もる。誰かが味見をしたからといって、特別美味しくなるわけでもない味噌汁やカレーのような既に満たされたものに感謝の気持

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ぬっ記

 目を閉じて、開けた。それが長い時なのか短い時なのか判然としないが2時間が経過していた。それからゴソゴソと起きだしてベットの上で虚脱する。胡座をかいて、少し顎をあげて、夜とひとりの呼吸に耳を澄ます。誰に呼ばれたわけでもないし、なにかを思い出したわけでもなく、合図もなしにまた動きだして、上着を羽織り外へ出た。寒空へ身体を引かれるように歩を進めて、田舎の夜の明かり場へと入り込む。はるか昔からこの地を治

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こぼれ落ちた角

こぼれ落ちた角

赤い鍵盤の上を鹿が走り抜けていく
冷めた視線に包まれた心臓がトクトクと鳴り
風は生臭さと共に老いていく
彼の角は折れている
そのためにどれだけ必死だったか
また、誠実であったか、愚かなクズであったか
絶望には飽き希望には手垢がつき
無には帰る場所ができ
山はなお
山としてうるさいだけだった

俺にとって書くことは
一人で立つということであって
見慣れた素振りでも
見たことのある景色でもない
都会の

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こぼれ落ちた過去

疲れた体で一人を追いかけるには、光を待ちわびる二人が必要だ
俺の嘘を広める三人は深夜のプールで溺れている
四人で始めた戦争は、五人の制服を炎で包んだ

空腹のままでは過去が物足りない

きわどい姿勢で電車に揺られていた少年も、中吊り広告と欲望の終わりとその日の昼食について真剣に考え抜いた男も、僅かな重力が支えている魂を空白と呼んでいた。俺が学んだ色褪せた電気は右肩の重さに比例して際立ち、自惚れた魚

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こぼれ落ちた並木

ひとたび書きはじめればなんの問題もない。初恋の淡い記憶に布団を掛けに行くと言って、親父が小走りで猫の後をつけていく。摺り足になれていない親父のスピードが日没近い夕暮れ波止場の、波の音につられて上がる。猫は布団に潜りに行きたい。親父の摺り足は加速し、既に予期されていたエナジーを越えていた。薄暗い夜道に現れた白い煙は郊外へと延びる、彼の足跡。行くあてのない少年少女がたむろするショッピングモールに向か

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こぼれ落ちた男

 どんな姿も果てしない影に比べたらどうでもいい食事のようなもの。適度に土をかき集めて札のついてしまった人々に配っていく。いま思い起こせば高くつくられたあの街々に、置き忘れてきた魔物達のたしかな思い出があって、そこで打ちあげられた波間の音や小石の勇気でどうにか恥を忘れずに過ごせていた。

ささいな気分で
ほんの少し指をこする

まぶたの裏から群青色の海が広がって空へ伸び、転覆する。そこから落下する円

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