見出し画像

ダーウィン以来―進化論への招待


ダーウィン以来―進化論への招待

 進化論について、解説した本です。学術書ではなく、一般向けの啓蒙書ですね。

 大学の一、二年生くらいで読むと、ちょうどいいんじゃないでしょうか。高校生でも、生物学に興味がある人なら、読めそうです。中学生以下では、難しいでしょう。

 著者のグールド氏は、科学エッセイの達人として、知られた方です。本書でも、その筆が冴えています(^^)
 進化論について興味を持って、知りたいと思い始めたなら、本書を読むことを、お勧めします。
 進化論とは、どういうものかが、わかります。

 進化論は、本来は、純粋に生物学上の理論です。しかし、これは、いろいろと誤解されやすい理論です。変にねじ曲げられて解釈されたり、生物学と関係のない分野に、無理やり当てはめられたりしがちです。

 グールド氏は、そういった誤解や曲解を、丁寧に解きほぐしてくれます(^^)

 本書を読めば、(一部の)宗教が、いかに科学の発達を阻害してきたか、現在も阻害しているかが、わかります。
 倫理の砦【とりで】として、心に神を持つのは、良いことかも知れません。
 けれども、宗教と科学とをごっちゃにするのは、とんだ間違いです。

 また、本書には、人種差別の無意味さ、愚かしさも、書かれています。生物学や進化論は、人種差別の「いいわけ」として、使われることがあります。それは、科学的には、まったくの誤りです。

 グールド氏の冷静な筆致によって、「科学の衣をまとった偏見」が、解体されています(^^)

 以下に、本書の目次を書いておきますね。

プロローグ

第一部 ダーウィン小論
 1章 ダーウィンのためらい
 2章 ダーウィンの航海中の回心――艦長との五年間の会食
 3章 ダーウィンのジレンマ――「エヴォリューション」の長い旅
 4章 早すぎるダーウィンへの引導

第二部 ヒトの進化
 5章 ヒトとチンパンジーとの差――量の問題か質の問題か
 6章 ヒトの進化における灌木【かんぼく】と梯子【はしご】
 7章 ヒトの真の父親としての子ども
 8章 胎児として生まれるヒトの赤ん坊

第三部 風変わりな生物たちと進化の類例
 9章 アイルランドヘラジカ
 10章 生物の知恵――なぜキノコバエは母親を食べるのか
 11章 竹とセミとアダム・スミスの経済学
 12章 完成化の問題――魚をのせている二枚貝

第四部 生物進化のパターンと区切り
 13章 生命の五角形
 14章 知られざる単細胞の英雄
 15章 カンブリア紀の大爆発とシグモイド曲線
 16章 大規模な絶滅

第五部 地球の科学
 17章 トマス尊師の汚れた小惑星
 18章 斉一説と天変地異説
 19章 衝突するヴェリコフスキー
 20章 大陸移動説の妥当性

第六部 大きさと形――教会・脳・惑星
 21章 大きさと形
 22章 人間の知能の評価
 23章 脊椎動物の脳の歴史
 24章 惑星の大きさと表面積

第七部 社会における科学――歴史的考察
 25章 科学における英雄と愚者
 26章 姿勢がヒトをつくった
 27章 人種差別と反復説
 28章 自然の錯誤としての犯罪者――わが内なる類人猿

第八部 人間性の科学と政治
 I 人種・性・暴力
 29章 なぜ人種に命名してはならないか――生物学の見解
 30章 人間性の非科学性
 31章 人種差別論と知能指数
 II 社会生物学
 32章 遺伝的可能性と遺伝決定論
 33章 かく賢くも心やさしき動物

エピローグ

訳註
訳者あとがき
スティーヴン・ジェイ・グールド――進化史のメッセージを語り伝える 渡辺政隆
文献目録



この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?