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起承転結じゃ足りねぇんだ。/愛を込めて「SAVE THE CATの法則」シリーズをご紹介したい【第1回】

シナリオライター12年生のしむらです。

青春時代を創作に全振りし、ゲーム専門学校→ゲーム会社勤務→フリーランスに。シナリオ学校に通うなどした後、ゲームシナリオ、脚本、小説、漫画原作など、いろいろ書くシナリオライターと化す。とにかく作るのが好き。パンダも好き。レッサーパンダも好き。

そんな私ですが、このところ《構成》を作る作業が楽しくてしょうがありません。昔から何かと「計画立てるの好き」な性格ではありましたけども、このところは「スキあらば構成考えてたい」と思うくらいに楽しくてしょうがない。

こんなお話を書こう!と決めたら、まず《構成》を考える。私の場合は、ポストイットに起こる事件などの内容を書き込み、それらを仕事場のクローゼットに貼り貼りしながら考えていく。自分だけが見る奴なのでむっちゃ汚い。それがいい。楽しい。来客にはいつも「うわっ」て言われますが。

しかしながらこの構成の作業、人によっては苦手意識を持たれていたりするかもしれません。

ある日突然、面白そうなお話のアイデアを思いつき、「よし書こう!」と決意し、執筆前に構成を始めてみたものの……アイデア以上の肉付けが難しくなって立ち止まってしまったり、書いてるうちに思いつくかも~と考えて書き始めてみたはものの、なにかしっくりこない出来になってしまったり、とか。

シナリオディレクターさんの立場でもありうるかもしれません。ライターさんからプロットが上がってきたものの、「ここの展開、中だるみしてるなぁ」と感じる。でも、改善案は思いつかない。どう伝えたらいいかわからない。ライターさんと2人で悩む。うーん。

大丈夫!!

もし、今シナリオの構成づくりに悩んでて、楽しくない、つらい……などと思ってしまっているシナリオライターさん・ディレクターさんがいたら、私は全力でこの書籍を読むことを勧めたい!!


SAVE THE CATの法則シリーズとは!

シナリオを書くという《大冒険》を最高に楽しくしてくれるガイドブック

私が一言で言い表すなら、こんな本。詳しい書籍の紹介はAmazonの商品説明に譲ります。

小難しい脚本術の分析書はいらない。シンプルで、しかも本当に大手映画会社が買ってくれる脚本を書くための最低限のコツを教えてくれ! 」そんな読者に、目からうろこの超実践的脚本マニュアルが本書。

ハリウッドに蓄積するストーリーのDNA[法則]。脚本とは芸術であり、科学でもある。科学である脚本を支配するこの法則は、不変のものなのだ。

学者の難解な分析本とは一線を画し、業界を知り尽くした筆者が、メジャーで売れる脚本の法則を簡潔に語りおろします。
ジャンル、プロット、構成、販売戦略、キャスティングなど、基本要素を踏まえながらも、誰も教えてくれなかった黄金法則は、驚くほど実践的。映画だけでなくテレビや舞台など、ストーリーを扱う全ての人が必読です!

https://amzn.to/3JxJ3tD

著者のブレイク・スナイダーさんは、ハリウッドで最も成功した競売向け脚本家のお一人。ブレイクさんの脚本を落札した方の中には、かの大監督スティーヴン・スピルバーグさんのお名前も。

こう聞くと、「私の書いているモノとは違う世界の人だな…」とかお思いになる方もいるかもしれません。実際、ハリウッドの映画製作事情が多いに反映された章もいくらか存在しますが、本書の真骨頂は、ブレイクさんの分析力・分解力が生み出した《最強のテンプレート》が持つ普遍性と揺るぎなさだと私は思っています。

小説でも、漫画でも、ゲームでも。あなたが書いているそれが《物語という名の冒険》である限り、この本はあなたとあなたの子どもたち──物語の主人公たちにとって、最高で最強の《ガイドブック》となること請け合いです。


物語とは冒険である

物語というものは《冒険》です。主人公にとっても、作家にとっても、観客・読者・ユーザーにとっても。

冒険。私、この言葉大好き。

すべての物語は冒険譚。拙作、ビジュアルノベル「エーヴィヒ」も。舞台は洋上の都市だけですが、物語が進むにつれ、この都市の見え方はどんどん変わりました。主人公エーヴィヒにとっても、私にとっても(そして遊んでくれた人にとってもそうだったら良い)
https://ewig.atelierpp.com/

作家は「こんな話を書こう」と思いついた時点で、冒険のスタートラインに立ちます。観客を乗せる乗り物である《主人公》を作り、主人公が向かうゴールを決め、主人公を加速させたり、あるいは停滞させたりする《味方や敵キャラクター》も考えて…。いざ、意気揚々と冒険スタート!

……そんなとき。たまに道を見失ったり、どこに向かったらいいかわからなくなることありません?


起承転結じゃ足りないんだよ!!!!!!

というわけで、第1回の本題に入ります。

面白いシナリオの構成には《型》があります。それを端的にわかりやすく伝えてきたのが、おなじみ《起承転結》や《序破急》なんて言葉。

私もシナリオ学校で、この2つを軸にさらっと構成のお勉強をさせてもらいました。

…が。

当時から私は「実際のところ構成って起承転結じゃなくて起承承承承承承承転結じゃね」だとか「構成って起承転結じゃなくてもっと細分化出来るし、複雑じゃない?」と思ってました。

本書の中でも、著者のブレイクさんがいわゆる「三幕構成」に対してこのように述べています。

でも、三幕構成だけじゃ充分じゃなかった。だだっ広い海で泳ぐのと同じで、幕と幕の間が広すぎて、途中で迷ってパニックに陥り溺れてしまうのだ。だから迷子にならないよう、途中で目印になるような島が必要だった。
(中略)
だから私は、自分独自の構成用テンプレートを作ることにしたのだ。

SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術より
著:ブレイク・スナイダー 訳:菊池淳子 フィルムアート社

「ほんそれ!!!!!!(本当にそれ)」

この一節を読んだとき↑のように叫び散らしました。


特に《承》は迷いやすい

構成の作業で悩むポイントとしては、起承転結で言うところの《承》あたりじゃないでしょうか。

一応、《結》や《転》──「お話のゴール」は決めていても、その途中途中に置いていく事件や、主人公が前進していることを伝えるための中間ゴールを考えるときなんか、私はよく自問してしました。「果たして本当にこれでいいんだろうか?」と。

《承》はジグザグ矢印。上がったり下がったり、でも上がってる。あるいは下がってる。

承の部分は、まるで弾むボールのように、良いことも悪いこともどんどん起こってくる、かつ、物語が良い方にも悪い方にも進行していくことが求められると教わりました。

が、起承転結を使った構成法から教わったのは、それだけ。

起承転結自体は揺るぎなき叡智だと思うのでディスるつもりはまったくないのですが(とっても大事な前置き)起承転結というものを旅行代理店で購入したツアーに例えるなら、「当日は東京都で集合です」とは言われたけど、東京都のどこで待ち合わせなのかは教えてもらえなかったみたいな感じ。

今はスマホがあるので、連絡を取り合えばその日のうちに集合できなくはないですが、もしいきなり奥多摩あたりに来ちゃって、「実は23区内が待ち合わせ場所でした」ってなったら、まぁ大変。

せめて市区町村レベルのヒントちょうだい…。というのが、私が起承転結を使った構成法(の特に承)について思っていたことでした。

んあーー!!!!(よくこうなってた)

そう。ブレイクさんの言う通り、三幕構成じゃ足りない、起承転結でも足りなかったのです。

ではどうするか?

さ あ 、 布 教 の お 時 間 で す 。


その名は《ブレイク・スナイダー・ビート・シート》

SAVE THE CATの法則シリーズ第一弾、本当に売れる脚本術では、《ブレイク・スナイダー・ビート・シート》と名付けられた、著者ブレイクさんが考案された構成──三幕構成や起承転結に変わるかもしれない、いわば《面白いシナリオ構成のテンプレ》が紹介されています。

これがまた「へぇーっ!!」となるほどよく出来ていて、かつ、見覚えがある構成なんです。

みなさんも、ご自分がお好きな映画のストーリーを思い浮かべながら、次のビートシートを眺め見てくださいな。

ブレイク・スナイダー・ビート・シート(BS2)
1 オープニング・イメージ
2 テーマの提示
3 セットアップ
4 きっかけ
5 悩みのとき
6 第一ターニングポイント
7 サブプロット
8 お楽しみ
9 ミッド・ポイント
10 迫りくる悪い奴ら
11 すべてを失って
12 心の暗闇
13 第二ターニングポイント
14 フィナーレ
15 ファイナル・イメージ

SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術より
著:ブレイク・スナイダー 訳:菊池淳子 フィルムアート社

このビート・シートを、私なりに「起承転結」と照らしてみると、以下のようになります。(シナリオによってはちょっとズレるかもしれないので、あくまで参考までに!)

起のビート

  • オープニング・イメージ

  • テーマの提示

  • セットアップ

  • きっかけ

  • 悩みのとき

承のビート

  • 第一ターニングポイント

  • サブプロット

  • お楽しみ

  • ミッド・ポイント

  • 迫りくる悪い奴ら

転のビート

  • すべてを失って

  • 心の暗闇

  • 第二ターニングポイント

  • フィナーレ

結のビート

  • ファイナル・イメージ

起だけでも5ビート、承も5ビート。転はわかりやすいですが、実は「フィナーレ」のビートにはさらに5つの要素が隠れていたりします(この5要素がマジで熱くて大好き)

やっぱり起承転結じゃ足りねぇかった。

お楽しみ、ミッドポイントなど、各ビートの詳しい役割の解説はぜひ本書を読んでほしいところですが……たくさんの物語を見てきた方や鋭い方は、このブレイクさん(と訳者の菊池さん)による絶妙~~~なネーミングから気づけるんじゃないかなと思います。

世に溢れるあらゆる《面白い物語》に、このビート・シートの構成が隠されていることに。

例えば、かの「タイタニック」。

(余談ですが、映画「タイタニック」では、このミッド・ポイントぴったりに「氷山との衝突」がやってきます。美しすぎるよ、構成が)

クリスマスに没頭して視聴した「ホーム・アローン」シリーズ。

(ホーム・アローンの《お楽しみ》のビートについては、以前↑の記事でもご紹介しました)

小説もです。「ハリー・ポッターと賢者の石」「ギヴァー 記憶を注ぐ者」

近頃連載を追いかけて読んでいる漫画にも見られました。未完結ですが「私がわたしを売る理由」にも、このビートが見られるように感じています。

古今東西の《面白い物語》に刻まれたDNAを解読した──つまり、ビート・シートを見つけ出したブレイク・スナイダーさん、すごい。

ブレイクさんもお書きになっていましたが、長い長い執筆という冒険には、道を見失わないよう、不安にならないように、《途中で目印になるような島》が必要です。

どんなにワクワクする冒険でも、どこに行けばいいかわからなくなったら、途端につらくなってくるものです。

「東京さ来て奥多摩ちゅうとこついたけど渋谷? そこにはどうやっていぐんだべか? は? スマホ? えきすぱあと? ええいわがるが!」

短気な田舎のおじさんならキレ散らかしそうなもんです。伝わる? 伝われ。

迷子になった人に、書くのに詰まって唸っている人に必要なのは、少々親切すぎるくらいの道標。ブレイク・スナイダー・ビート・シートは、まさにその最強の道標、《旅のガイドブック》になってくれることと思います。

え? 信じられない?


ビートシートに沿って初めて完成させたシナリオが好評だった話

経験談をひとつ。

私はとあるお仕事で、それまでまーーーーーっっっっっったく書いたこともないようなジャンルのシナリオ制作にチャレンジすることになりました。

たとえるならば《未知の冒険》。日本国内しか旅行したことのない私が、いきなり土地勘も何もあるわけがないアマゾンの奥地に秘宝を探しに行くことになったみたいな、そんな感じでした。

どこ行きゃええねん…?

うまく書けるのか……
とはいえお仕事として書かせて頂くのだから、中途半端なものは書けない…
アマゾン怖え……

といったプレッシャーと恐怖(?)の中で、私を《未知の冒険》に旅立たせる勇気をくれたのが、このブレイク・スナイダー・ビート・シートでした。

当時の私「たとえ未経験の、未知のジャンルであろうと、《物語=冒険》であることはきっと変わりない。迷子にならないようガイドブックを持っていけば大丈夫だ!」

と、当時覚えたてのブレイク・スナイダー・ビート・シートに沿って冒険の道筋を考え、プロット化し、執筆し……足りない知識は周りの方々にも補ってもらって、なんとかかんとか最後まで書き切ることができました。

初のジャンルだと言うのに、おかげさまでそのシナリオは一定の好評をいただけまして、その後同社さんからは同様のお仕事をいただいております。ありがたい!

このときビートシートに出会ってなければ、私はおそらく、承のあたりで自信喪失してたんじゃないかなーと思っています。

よくある問いかけ……「これ、面白いの?」って。


第1回のまとめ

  • SAVE THE CATの法則とは、シナリオを書くという《大冒険》を最高に楽しくしてくれるガイドブック!

  • 「起承転結」や「序破急」は叡智……だが足りない!!

  • 未経験のジャンルでも、この素敵なガイドブックを持っていったらうまくいった!

というわけで、愛を込めて「SAVE THE CATの法則」シリーズをご紹介したい【第1回】起承転結じゃ足りねぇんだ編をお送りしました。

「構成を立てることになったけど、承に入れる出来事が決まらないよ〜」とか「そもそも構成なんてしんどい!」と苦手意識を植え付けられちゃってる人にこそ、一回でいいからビートシートに沿った構成作りを体験してほしい。また《テンプレ》というものを使うのに抵抗感がある人にも、です。あなたの人生、変わるわよ。(テンプレへの抵抗感へのお話も、この先する予定です)

SAVE THE CATシリーズは、以下の3冊がAmazonで取り扱い中です!


▼こんなお仕事もします宣伝。


▼(3/23追記)第2回を公開しましたっ!


いただいたご支援は、今後の更なる創作活動のために活用したいと思っています。アプリゲーム作ったり、アニメ作ったり、夢があるの!(>ェ<)