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マルチの本を燃やすまで②(答え合わせ編)

前回の記事はこちら


原因編ではなく答え合わせ編

経緯編を書き終えて思ったことが、自分が受けているマルチ勧誘が何なのかを全然調べていなかったことだった。強いて挙げるならば、「金持ち父さん貧乏父さん」がマルチによく使われていることを知った位だ。実際、高額商品の話をされることはなかったし(いらない化粧水を買ってしまったが)、組織に勧誘されるということもなかった。なんなら組織の名前すら知ることができなかった。だから、原因編を書く前にある程度今のマルチ商法について知っておく必要があるなと思い、調べてみたのだ。そうしたら、もう面白い面白い。経緯編で書いたあらゆる断片的証拠がマルチ商法へとつながっていた。正直、結局のところ彼女の背後でなにが動いているかまで分からないと思っていたので、こうも答えが散らばっていたと思うと逆に恥ずかしくなってしまった。なので、この記事は原因編ではなく答え合わせ編としていきたい。

参考にした本、記事

まず、現在のマルチ商法について調べるため、この本を読んでみた。
とても面白い本だった。お金を出して今のマルチを知りたかったらおすすめ。

無料で読める記事なら、以下の2つがおすすめだ。
前者はマルチ勧誘に騙された人の末路が、後者が実際にはまってしまった人がどうはまってどう抜け出したかについて書いている。

これらを読んでいて何度も「なんだこれは…たまげたなぁ」とつぶやいていた。99%の疑惑が100%の確信に変わった。自分が相手にしていたのは、マルチという言葉で捉えられない紛れもない悪質カルト集団だったのだ。

奴等の正体 「事業家集団 環境」

上記の本、記事、その他もろもろ読んだ限りだと、今流行りの悪質マルチは「事業家集団」「環境」「チーム」等と呼ばれているそうだ。ただ、自分が連中から話を聞いたときはそのような単語は1つも出てこなかった。やはり内部の実態を徹底的に漏らさないよう注意を払っているんだと思う。
この「事業家集団環境」というのが何をしているのかというと、詳しくは各自で調べた方がよいが、一応簡単に説明すると、この集団は会社で働くことではなく、構成員に対し起業して独立させることを目標とさせている。
組織構成の上位存在である「師匠」が下位存在である「弟子」たちに起業を成功させるために、自己啓発セミナーやオーガニックの化粧品なんかを売りつけるのである。そして、「弟子」たちは起業するために投資に邁進するのではなく、「ビジネスパートナー」という新規の勧誘者を開拓していき自分の傘下に取り込んでいくことを徹底させられる。そして、自分の傘下が十分な数となると免許皆伝よろしくオーガニックのセレクトショップ等の経営を任せられるようになるそうなのだ。しかし、たいていの場合そうはならない。「自己投資」とは名ばかりの上納金を納め続けていくうちに、首が回らなくなり借金する者、「師匠」の強い勧めによって「シェアハウス」といったらウソまみれのタコ部屋にぶち込まれてしまうそうなのである。「事業家集団」はマルチ商法のマルチ部分を法に触れないようにした結果、カルト化してしまった。構成員に合法的にものを買わせることを意識するあまり、構成員を洗脳するようになった。このようなことを調べていくうちに、マルチの本を燃やすまでの経緯で組織の全体像はつかめなかったものの、いくらでもヒントが転がっていたことに気づく。次はその経緯からのヒントを次々答え合わせしていきたい。

答え合わせ1 アニキ的な先輩、同級生のイエスキリスト

マルチの彼女は自分に対して頻繁に彼女が尊敬しているアニキの先輩や、この組織を紹介してもらっていた同級生の友達を紹介しようとしていた。思えば、彼女はアニキ達のすごいところばかり自慢していた。アニキの方は恵比寿で何件もの飲食店で関わりをもっていると説明されたし(待ち合わせ場所もほぼ恵比寿だった。そして、調べると恵比寿の文字がたくさん出てくる。)、イエスキリストの方は来年カンヌ国際映画祭を見学することを話して、うらやましいなんて言っていた。実際に彼女が彼らからものを買っているかどうか分からないが「師匠」にあたる存在なのだろう。アニキの方には実際に会って馬刺しを食べさせてもらった。そのアニキはあだ名で呼ばれていた。(これも特徴の一つである。奴等は本名で呼び合わない。)前も書いたが、おっさん特有の聞いて聞いて感が一切ないのがやり手だなと思った。相手の話を静かに聞き、自分の知識を少しだけ挟んでまた返す。また彼から起業・独立の是非についても話されることはなかった。今考えると、獲物が餌に食らいつくまでじっと待っていたんだと思う。だが、自分は馬刺しだけ針から外し逃げることに成功した。(会費は4000円払っている。)
彼と取り巻きを一夫多妻を教義としたセックス教団と揶揄したが、実態よりひどかったのだ。

答え合わせ2 オーガニックのセレクトショップ

個人的にはこれが一番びっくりした。奴等が「師匠」から買うのはオーガニック系の商品が多いというのだ。あーー!!オーガニックのセレクトショップ紹介されて、たっけえ化粧水買ってしまったことあるーーー!!!急いで、行った店名を調べてみた。うぅーー!!これはビンゴだ!!(ハンスランダ大佐)自分の行ったス〇〇ルテ〇〇ル(念のため伏字)の関連検索は「事業家集団」「環境」が多かった。オーガニック商品がべらぼうに高い理由は、オーガニック特有の手間がかかるからだと思っていたが、理由はそれだけじゃなさそうだ。
彼女は今の自分の働き方は正直合っていない、将来独立して自分のオーガニック店を持って自由に働きたい、と話していた。それを聞いた当時は立派な目標があって頑張っているんだなあと思ったが、結局そこに自分の意志はなく他人の入れ知恵だったという訳だ。より自由に働きたいと願い信じて行うことが、彼女をより不自由にしていく。


お店の関連検索 さすがになんjはなかった

答え合わせ3 幕張のイベント 恐怖のハロウィン会

月末に誘われた幕張のイベントは、予定があると嘘をついたので行けなかったのだが、調べているとやっていたのは奴等の「全国会議」だったんじゃないかと考える。これも調べてもらうと内部の音声が聞けるのだが、組織幹部の男性、女性がどれくらい努力してどれくらい稼いだかをオーバーに熱弁している。なんならドラえもんショーとかもやってたんじゃないかな…(顕正会)実際の熱狂ぶりは一目見たかったかもしれない。
もう一つの恐怖のハロウィン会については、実際に行ってしまった例である。こちらのヤバさは経緯編で全部書いたのだが、なにが一番ヤバかったのかというと、この集団に対してより人を増やしていきたいという一種の狂気をはらんだ空気感があるのに、肝心の集まったグループで何をするかという目的を一切明かさなかったことだ。いっそのことこの後皆でうんこ食べまーすwとか言ってもらった方が安心できた。たとえ知らない人ばかりでもそれが会社の飲み会ならいるのは同じ会社の人間であるし、サークルの飲み会であればいるのは部員やOBである。〇〇の飲み会の〇〇こそがポイントだった。ハロウィン会に前置修飾語はつかない、ハロウィン会だったのだ。
また、ハロウィン会では孤独の格差を感じた。周りの連中が互いに交換し合って話している一方、自分は先輩とだけ話しこの会をどう逃げるのか、どう妨害するのか話していた。奴等はより馴れ合い、自分はより孤独になっていくように感じた。ただ実際は違った。奴等は仲間と馴れ合うことで、正常な社会へと孤立していくのだと思う。孤独とかけまして、エントロピーととく。その心はどちらも増大し続けるでしょう。

実際の会の写真
こうやってモザイク処理するのちょっと楽しかった。

答え合わせ4 マルチな彼女

最後は自分を誘った彼女の不審な行動の答え合わせをする。
彼女は自分のことを誘っておきながら遅刻することが多かった。一回嘘だろと思ったのは、向こうから「師匠」の同級生の飲み会を誘ってきたのに、師匠は来ないどころか、彼女自身も30分後帰ってしまったことがある。一人残された自分はクリームソーダを飲んで帰った。当時は仕事で忙しいのかと思っていたが、実際はほかの勧誘が迫っていたとか、セミナーをしていたのだろう。
また、彼女の話を聞いているとプライベートの時間がなさそうに思えた。普通に会社員として働き、夜は「師匠」や連中同士の飲み会をしているのだろう。土日はオーガニックショップのバイトをしていると聞いたので、休む時間がどこにあったのだろうか。出会った当初は彼氏がいると聞いていたが、最後に会ったときもう一度聞いたら別れたと言っていた。こんなことにかまけていたせいで一方的に別れを告げられたとのかもしれない。そんな妄想をすると彼女がかわいそうになってしまった。
彼女は飲み会のたびに、自分の友達を連れてきてほしいと言ってきた。そもそも少ないし、こんな怪しい飲み会にホイホイくるようなアホな友達は自分以外に思いつかなったのでほとんど一人で行った。当時は向こうも友達を紹介するのだから、フェアじゃないなとは思ったが、今考えれば新規の「ビジネスパートナー」を探していたのだろう。ハロウィン会中に、彼女が自分の先輩に対して友達を紹介してとせがんだ姿を見たときは目も当てられなかった。
ハロウィン会の最後に、自分はもうこんなとちくるった場所に行きたくないと話したら、彼女は苦笑いしながらこう言った。「でも、こういう場所に行かないと彼女なんて一生できないよ?」もうね、アホかと。馬鹿かと。こんな場所に身を置きすぎてしまったせいで、交友関係を悪質ビジネスを通じてしか作れないと本気で思っているに違いない。こんな得体の知れない飲み会と比べたら、マッチングアプリの100倍マシだ。ちなみにマッチングアプリを通じて悪徳ビジネスを紹介されたことは一度もない。彼女ができたこともない。

ターニングポイントと選択する自由

ここまで自分が相手した連中が悪徳マルチであった根拠を書いたが、本当に勧誘され奴等の手先になる可能性は十分にあった。もっと彼女と気が合っていたらとか、「師匠」の話に感銘を受けていたらとIFのルートはいくらでもあった。
一番のターニングポイントは仕事でめちゃくちゃ怒られてカウンセリングへの相談を考えたときに、その日会うはずだった予定をキャンセルしたことだ。その日は、本来なら恵比寿まで行って話を聞いてもらおうと思ったのだが、冗談じゃないレベルで怒られたことと、平気で向こうがリスケしようとすることに腹を立て、どう考えてもこいつらに最初に相談するべきではないなと思ったのだ。キャンセルすることを伝えると電話がかかってきた。当時はなんでそんなに焦っているのだろうと思ったが、今考えると釣った魚を逃がしてしまったことを「師匠」に怒られると思ったのだろう。
そこから自分は休職することになった。休職中にこれから先どう生きるかはすべて自分で考え自分で実践するようにした。(もちろん、カウンセラー、心療内科の先生、家族、友人の支えがあってこそである。)あの時、予定をキャンセルしていなかったら、自分の判断を彼女とその「師匠」に明け渡していただろう。あとは皆様のおもちゃです。
その点、彼女はどこで判断を誤ったのかは分からないが、思考を他人に委ねてしまった。自分の手綱を自分で握るしかないのに。
マルチの本を燃やした理由についてもそうだ。自分は自分の決断によって彼女と決別することを選択して、マルチおよびカルト集団と一切関わらないことを選択するために燃やしたのだ。(燃やす意味は全くなかった。)
(あと調べるとロバートキヨサキさんはマルチとあんまり関係なく、著作だけがマルチの勧誘に使われてしまったそうなのだ。)

燃やしてしまってごめんなさい

真の被害者

「ルポ 脱法マルチ」でも書かれているが、この悪徳マルチの真の被害者は、未だに抜けれずにいる多くの構成員である。ルポの筆者は取材した構成員のことをとても心配していた。
今頃彼女はどうしているのだろうか。自分を誘うことができず落ち込んでいるのか知れない。それとも、次に誰かを誘うときのための反省をしているのかもしれない。縁を切ってすぐは、彼女が無事を店を経営して繫盛すればいいと思っていたが、悪徳マルチを調べるとそれが全くのまやかしであることが分かった。
調べているうちに彼女のことが本当に不憫になった自分は、ブロックを外しさっきの本を読むことをおススメした。既読はついていたが読んでくれているだろうか。今のところ返事はきていない。

一旦完結

軽い合コンの始まりが社会の闇の一旦を知る大きなきっかけとなった。
前回の経緯編が勢いだけで書いた文章だとしたら、今回は対峙したのが完璧な社会悪だと知りかなり熱をもって書いてしまった。
この続きを書くとしたら、もう一回奴等が主催する飲み会に参加し、なぜ勧誘するのか、なぜこの組織を抜けないのかを問い続ける「マルチのソクラテス」になる「実践編」とかを考えてみた。怖くてできる気がしない。
とりあえず、カルトについての勉強は続けたい。もっと人が群れて悪事をする理由が知りたい。
ここまで読んでくれた人がいたら本当にありがとう。
今度は芸人ラジオとかもっと軽いものについて書きたい。

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