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マスク考(1)~日本が心身ともに息苦しい社会になっている件

▼日本が心身ともに息苦しい社会になっていることを示す、と筆者には思われるニュースが2つあった。適宜改行と太字。

1つめ。共同通信。

〈郵便配達員、屋外はマスク外す 熱中症対策、10月末まで 6/5(金) 10:37配信〉

〈日本郵便は5日、配達員が車内や屋外にいる場合などは、適宜マスクを外す取り組みを始めた。気温と湿度が高い中でマスクを着用すると熱中症の危険があるためで、10月末まで。新型コロナウイルス感染症対策として、これまでは着用を原則としていた。

  屋外では配達時や休憩中、他人との距離に注意した上で外すことにした。郵便局の窓口や郵便物の集配時など人との距離が近くなる時には、引き続きマスクを着ける。 

 政府は、新型コロナと熱中症の両方を予防する必要から、屋外で近くの人と2メートル以上の距離を確保できる場合には、マスクを外すよう促している。

▼2つめ。NHK。

〈ヤマト運輸 人がいない場所でマスク外すこと認める 熱中症対策 2020年6月5日 21時40分〉

〈宅配大手のヤマト運輸は配達の際、周囲に人がいない場所などではマスクを外すことを認めることになりました。新型コロナウイルス対策とともに熱中症の予防も必要になるためで、日本郵便もすでに同様の方針をまとめています。

ヤマト運輸はこれまで新型コロナウイルスの感染対策として、ドライバーに対し業務中はマスクの着用を徹底するよう呼びかけていました。

しかし、これからの季節、感染対策とともに熱中症の予防も必要になることから、周囲に人がいない場所や荷台での作業中、それに同乗者がいない車内での運転中は、マスクを外すことを認める方針を社内に通知しました。

ヤマト運輸では、こうした対応をホームページに掲載し、利用者に対して理解を呼びかけています。

熱中症の予防をめぐっては、厚生労働省と環境省が屋外で人との距離が2メートル以上ある場合は気温や湿度などの状況に応じてマスクを外すことを呼びかけていて、日本郵便もすでに同様の方針をまとめています。〉

▼すでにお気づきだと思うが、わざわざこんな当たり前の情報がニュースになる、ということ自体が異常だ。そう思いませんか?

とっても便利で、とっても窮屈(きゅうくつ)な社会だ。

▼ここ数日、すでにマスクをつけて出歩いたことのある人なら誰でもわかっていることだが、暑い日にマスクをつけて外を歩くと、息苦しい。筆者は「これでは、お年寄りは死んでしまうな。あぶねえな」と思った。

実際、中国では、子どもが体育の時間にマスクをしたまま走って、死んでしまう痛ましいニュースが複数あった。

郵便局員も、ヤマト運輸のお兄さんも、屋外でマスクを外すのは当然である。なぜなら、死んでしまうからだ。

▼しかし、そんな当たり前のことを、ヤマト運輸がわざわざ〈利用者に対して理解を呼びかけています〉ということは、「利用者」は「理解」していない、ということだ。

つまり、「なんで配達員がマスクをしてねーんだよ!」というクレームが起こっている、という可能性が高い。

▼郵便局員も、ヤマト運輸の兄ちゃんも、いわば「衆人環視」のもとで仕事をしているに等しい。

「リスクはゼロが絶対。それ以外は絶対に認めない」という狂った思考ーーというよりも、無思考ーーに支配されて、心がささくれ立って、時間をもてあました、疑心暗鬼(ぎしんあんき)な人々から、これまで以上に不要な圧力がかかるだろう。

▼そもそも、記事にもあったが、政府は、夏の屋外では、基本的にマスクを外すように提唱している。あまりにも当たり前のことなのだが、上記のような郵便局やヤマト運輸のニュースが出るくらい窮屈(きゅうくつ)な世相になってしまっている以上、もっと大々的に広報したほうがいいと思う。

とにかくこれから猛暑なんだから、外で仕事をする人は、堂々とマスクを外して仕事をしてほしい。

▼こんなことを書きたくなるような世の中になるとは、想像もしていなかった。「新しい日常」とか、「ニューノーマル」とか、「新しい生活様式」とか、規律を求める動きが、どんどん人間の視野を狭める危険がある。

新しい生活様式、というもの言いには、「従うとともに、要注意」の姿勢で臨むのが、もっともヘルシーだ。

▼この観点で、面白い記事があった。精神科医の斎藤環氏による、「コロナ・ピューリタニズム」が広がっている、という懸念だ。(つづく)

(2020年6月6日)

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