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テレワークはサイバーテロの餌食になりやすい件(2)

▼日本の新聞には、1面の下にコラムを載せるという不思議な伝統があるが、現在、全国紙のなかで頭一つ抜きんでているのは日本経済新聞の「春秋」である。2020年3月28日付は冒頭が秀逸だった。

〈今年の初めのころまでは、「ウイルス」と聞けば、むしろパソコンやスマホの話かと思ったものだ。〉

▼話はここから、新型コロナウイルスの流行にともなって一気に馴染(なじ)みのある言葉になった「テレワーク」に進む。

〈「実はテレワークの普及は、インターネット上で悪事をたくらむ者にとって、願ってもない機会になる」。警察幹部からはこんな警告を聞く。会社のシステムがいかに堅牢(けんろう)であっても、そこへ外からつながるパソコンの数が急増することでリスクが高まる。ウイルスに感染させて内部へと遡り、情報などを狙うのだという。〉

▼この「実は」は不要だ。実は、ではなく、周知の事実だろう。

2020年1月27日付の朝日新聞に、前号で紹介した、三菱電機がサイバー攻撃を受けた記事の解説が載っていた。(須藤龍也編集委員)

〈(中国のBlack TechやTickによる)攻撃の手口は巧妙だ。ハッカーは中国にある三菱電機の関連会社に目を付け、ネットワークの弱点を見つけて侵入し、国内の本社や拠点と結ぶ通信中継装置(ルーター)を経由して潜り込むことに成功した。〉

▼つまり、日本の本社はセキュリティーが強いから、セキュリティーの弱い中国の会社を狙ったわけだ。いったん忍び込めば、あとは簡単なようだ。

〈社員名や所属などが記録されているサーバー情報にアクセス。より広範な情報に触れることができる中間管理職のパソコンを探し出した。ウイルスで遠隔操作し、サーバーに保管されていた機密情報にアクセスを繰り返していたという。〉

▼三菱電機に対するサイバー攻撃に使われたウイルスは、汎用品ではなく、三菱電機専用の特注品だったそうだ。本気で狙われたら、ほぼ防げない。「戦争」という言葉がしっくりくる。

ここらへんの感覚は、たとえば筆者がまとめ途中の【『「いいね!」戦争』を読む】シリーズが参考になると思う。

▼こうしたサイバーテロの話は、三菱電機にかぎらず、山のようにある。それらを読むと、にわかに広がり始めたテレワークなど、絶好の獲物(えもの)であることがわかる。ご用心、ご用心。(つづく)

(2020年4月3日)

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