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歴史が好きなら京都?東京?それともほかの場所?場所×あなたの個性で答えは無限大!

歴史にあふれる街は?と聞かれたら、まず「京都」と答える方が多いのではないでしょうか。

それなら、歴史を勉強するなら京都に住むのが一番いいのかしら?

私もそう思っていた人のひとり。でも4年間、東京の大学で歴史を勉強したあとに感じることは、意外と東京でも勉強しやすかったということ。しかし、京都で歴史を学んだ同級生の話を聞くと「やっぱり、京都っていいな」と羨ましく感じてしまうことも。

そこで今回は、歴史好きにとってのベストプレイスはどこか問題を、京都と東京をメインに紐解いていきたいと思います。

どこの時代が好きかにもよるよね

まず自分の好きな時代に栄えた場所はどこかを認識しておくことが、自分のテンションを上げるためにもとても大切です。大学などで本格的に歴史を勉強するのでも、歴史を感じるための居場所探しでも、その時代とつながりを持てているという自覚はモチベーションアップに大いに貢献します。

平安文化が好きなら京都。古代なら京都もしくは奈良。軍事史や文明開化以降の時代が好きなら東京がいいし、江戸時代が好きといっても、太平の世の文化が好きなら東京だけど、幕末維新の動乱に心が躍るなら京都のほうが嬉しい。同じ幕末といっても、幕末志士が活躍した京都なのか、彼らの地元のほうがいいのか……。

また、地方史をやるならその対象の地域がベストでしょうし、貿易や国際交流関係の歴史が好きだから神戸や横浜がいい!という考え方もあるでしょう。ひとえに「歴史」といっても、好きな対象を細かく見ていくと、選択肢はたくさんあります。

やっぱり東京は強い

選択肢が豊富とはいえ、今回のテーマは東京と京都。まずは東京から考えていきましょう!私が実際に東京の大学で歴史を専攻し、メリットだと感じたことを2つお伝えします。

1.資料が集まっている

東京には、国内で出版されたすべての本が揃う国立国会図書館があります。京都にもありますが、京都市から少し離れていて、駅からバスに乗らなくてはいけないと少々立地が悪いのがネック。その点、東京の国会図書館は永田町駅から徒歩圏内ですし、永田町は大きな駅なので比較的どこからでもアクセスしやすい場所にあるといえます。

また東京には、港区と多摩にかなり大きな東京都立図書館という公立の図書館があります。国会図書館は入館手続きなどが少々面倒ですが、こちらの図書館は手続き不要。借りられないことを除けば、利用方法はほかの公立図書館とほぼ同じで、誰でも入館・利用することができます。蔵書数は、港区にある中央図書館だけでも200万冊を超え、これは国内の公立図書館のなかでも最大規模です。国会図書館にお世話になるまでもなく、この都立図書館で事足りることがほとんどではないでしょうか。私も大学時代に何度も利用しましたが、必要な本で手に入らなかったのは高知県の有志団体が出している雑誌くらいでした。(高知県立図書館にはあったので、やはり地方史はその地域が強いですね。)よほどマニアックな資料でもない限り、東京にいればすぐに手に入り、また入手のハードルも低いと感じています。

2.博物館・美術館の数が多い

京都は歴史都市ですが、ある特徴があります。それは、博物館・美術館数が東京に比べて圧倒的に少ないこと。

寺阪昭信氏(流通経済大学名誉教授)が「全国博物館総覧」をもとに作成したデータを拝借すると、東京の博物館数は197で美術館数は74。対して京都は博物館数が74で美術館数は20。どちらも2倍以上、美術館数に至っては3倍以上の差がついています。

歴史が好きな人は、博物館・美術館を訪れる頻度が高いですよね。これだけの数の施設があれば、歴史漬けの休日が過ごせます。博物館に行けば行くほど自分の知らないジャンルに触れる機会も増えるので、新しい分野を開拓しやすい環境だとも言えるでしょう。また、大きな展覧会は大体東京に来てくれるところもポイント。数百円の電車賃とチケット代で、世界各地のお宝が見放題って、すごいことだと思いませんか?こう考えると、意外と東京も歴史をやるには向いている土地なのかもしれません。

1000年の都だって負けてない

ここからは、京都について考察していきましょう。京都で歴史を専攻した友人から聞いて「いいな」と感じたこと、また、学生時代に何度も京都を訪れた中で感じたメリットを2つ、ご紹介します。

1.街そのものが博物館

先ほど「京都は博物館が少ない」と述べましたが、京都は街そのものが博物館だとも言えます。最大の特徴は、古代から近代まで、様々な時代の建物が残っていること。私は近世史をメインに研究していたのであまり気に留めていませんでしたが、最近読んだ本にこう書かれていました。

もう一つ京都にこだわってこの本を書いた理由の一つは、神社の歴史を古代から近代まで、すべて一望できるところ、あらゆるタイプの神社が集中しているところ、そして誰もが知っている場所、ということでは、全国でも京都しかないでしょう。

岡田精司『京の社 神と仏の一三〇〇年』2022年、筑摩書房、P5

この本は神社の歴史を通史でみていくものですが、筆者は京都の特徴として「あらゆるタイプの神社が集中している」と述べています。1000年もの間日本の中心地であった京都には、それぞれの時代を象徴するような建築物が集まっていますね。また、空襲の被害が少なかったところもポイント。記録面での資料の数では東京に届きませんが、文字ではない「資料」が語るものは多いでしょう。特に神社やお寺の歴史、また建築史をやるなら、京都は絶好の地ではないでしょうか。

2.いたるところで歴史の伊吹を感じられる

京都に行くと、必ず目にする石碑。古くは平安京大内裏跡から千利休がお茶に使った名水、幕末の池田屋騒動跡まで、歩いているだけで幅広い歴史に触れることができます。東京にも石碑や案内板はありますが、京都ほど頻繁には見かけません。藩邸跡地など、史跡もそれなりに数があるはずですが、案内板がないことも多いのです。また、少なくとも江戸時代より昔の案内板はないでしょう。東京(江戸)は、あまりにも新しい街です。だからこそ京都に行き、近世以前の建物や遺構などを見ると、この街が果たしてきた役割に敬意を払わずにはいられない気持ちになります。

まとめ

この記事では、東京で歴史を学ぶメリットとして
1. 資料が多い
2. 博物館・美術館がたくさんある

を挙げ、
また京都で歴史を学ぶメリットとして

1. 古い建物(生きた資料)が残っている
2. 街のいたるところで歴史の伊吹を感じられる

の、それぞれ2つを述べました。

歴史学は、紙の資料があっての学問です。古文書が読めるようになるまでは、活字資料(普通の本など)にお世話になることがほとんどでしょう。そう考えると、大学院など高度な専門教育を受けるのでなければ、東京のほうが研究しやすい場所かもしれません。

しかし東京が紙やモノなどの資料が多いのに対し、京都は生活の中で歴史を吸収できるというメリットがあります。日本史と京都は切っても切れない場所ですよね。住んでいれば、文献を読んだ時も「あ、これはあそこのことだな」と自然と分かるようになるでしょう。場所と場所の距離感覚が掴めるのは強いです。資料を読んだ時に記述の違和感に気づきやすくなりますし、道を立体的に認識していると、資料を読むストレスが減ります。私は学生時代から何度も京都に行き、地図を見なくても歩けることもありますが、やはり、4年間京都に住んでいた人には敵いません。

「歴史を学ぶ」といったら京都が真っ先に浮かびますが、歴史は京都以外でも最大限に学べるのですね。その土地によって、得意なジャンルや手段があります。旅行に行く機会があったらぜひ「この土地ならではの歴史の学び方は何かな」と考えてみてください。その地の特性を考えることでより深く、旅先とつながることができますよ。

これから大学を選ぶ高校生の皆さんにはもちろん、歴史が好きな大人の方々にとっても、歴史学を考える上での新たな視点を提供できていたら嬉しいです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

参考資料
・都立図書館について、東京都立図書館(最終閲覧日:2022年11月17日)https://www.library.metro.tokyo.lg.jp/guide/about_us/index.html

・寺阪 昭信「都市ツーリズムと博物館 : ヨーロッパと日本の比較」『流通経済大学社会学部論叢』16巻1号、2005年、流通経済大学、P61
・岡田精司『京の社 神と仏の一三〇〇年』2022年、筑摩書房、P5



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