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「AIの遺電子 Blue Age」7巻 面倒な人間関係をAIに丸投げする未来は

第31話「素晴らしき人間たち」より。
作品中には、AIに全てを委ねた街「新世界」があり、新世界の外の住人たちと価値観の違いなどで衝突することがしばしばあります。
今回もそれがテーマになっており、人間との面倒なコミュニケーションをAIに任せっきりにし、社会性を身に着けないまま大人になってしまった人が職場やSNSで何かと揉めてしまうというお話です(意訳)。

人間関係の面倒ごとをAIに丸投げする未来は

子どもの時、何気ない言動で他人を傷つけたり、SNSで過激な投稿をして炎上したり、みたいなことは誰もが経験したことがあるかと思います。そこで社会を学び、人を不快にしないコミュニケーションや集団での生活の心得を身に着けていく。
でも、生まれた時から賢いAIがいて、現実世界での会話内容や振る舞いなどをどうすればいいかアシストしてくれたり、メールやチャットなどオンラインのやり取りについては代わりに返事をしてくれる…となれば、それにかまけて「人間関係の面倒ごとから逃げて生きる」という道を選ぶことは十分考えられます。

そういう人がマジョリティーになった未来は…と想像しますが、そういう時代は「AIと賢く付き合う方法」みたいな本がベストセラーになっていたりするのでしょうか。今は、人間関係のライフハックや「あなたらしくゆるく生きよう」的な本がトレンドですが、AIでコミュニケーションの均質化が進み、煩わしさを代替してくれる世界のほうが、「自分らしさとは何か」「わたしとは何か」を追求する人が増えそうな。あまりよく考えずにAIに丸投げ、みたいな生活を送っていると、生きている時間がわきにくくなるのではないか、とか。

あるとよさげな「謝罪AI」

そして、面白かったのが人間をサポートするAIの振る舞いです。本人の代わりに、迷惑をかけた相手に謝罪するのですが、謝罪の仕方がとても人間っぽい。
「ま!こ!と!に申し訳ありません!!」
こういうノリで謝罪する店員さんいますね、そしてこちらの怒る気力をそいでくる。ひたすら低姿勢で誤り、相手を立てる。もはやプロの謝罪屋です。(本人にとって)重要な場面での謝罪は、人間にとって最もシビアで負荷のかかるコミュニケーションの一つだと思います。謝罪を生業とする産業AIロボット、SNSの火消しに暗躍する「火消しAI」とかも需要ありそう。

AIに足りないもの

謝罪にしても、火消しにしても、すべて言葉を介したアプローチです。AIのすごい頭脳に加えて、「すごい体」を使ったアプローチはどうなんでしょうか(会話がないと漫画映えはしなそうですが…)。
AI開発者でも、人間のような繊細な動きや力加減を実現する体(ボディー)の開発は難しい、みたいな話が数年前はありました(最近は進化したのかも)。体の開発はまだまだ進化途中なのかなと。

例えば、凄腕の整体師が施術するのと、整体師のノウハウを学習したAIロボットで、施術される側の反応やリラックス度が変わるのかとか。
師匠の動きを見よう見まねで覚えてきた武術の達人と、達人たちの映像を学習したAIロボットは、同じ動きができるのかとか(言葉で語られていないので、映像で動きを学習するイメージ)。

整体の例でいえば、ロボットの手から熱を発したり、解剖学的なアプローチで「この部位を、これくらいの強さで、この角度から、何秒押す」みたいな施術をしたりはできそうです。
でも、人間の手で人間の体を触るのと、ロボットの手で人間の体を触るのは、やはり違う感覚になりそうです。「触れる」のは同じだけど、「感じる」が違いそう。ロボットは「触る」はできても「触れる」は難しいのかも。触れるは、双方向な感じがする。
武術の達人の動きも、動き自体はそれっぽくできるかもしれないが、見た人がそれをどう感じるか。間合いに入った時の独特な迫力とパワーまでを感じられるのか。

体を使ったアプローチでも双方向のやりとりができれば、触れることで相手を癒やす、争う気をなくさせるとかもできそうな。逆の悪い使い方もできそうですね。

今回は、31話の漫画とコラムを読んで、そんなことを考えました。本作は、各エピソードごとに著者のコラムが挟まるので、作品理解が深まります。


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