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シャンプーの香りに、二度と会えないあなたを思う

新しく買ったシャンプーが、とてもとても、もう本当に胸が苦しくなるほどいい香りがする。
お風呂場に入るとき、髪を洗うとき、乾かすとき。
違う香りのするボディーソープで体を洗うことが勿体ない、すごく勿体ない(仕方ないので洗う)。

香りをきっかけに記憶が蘇ることを、プルースト効果というらしい。
私はこのシャンプーを初めて買ったし、この香りにも初めて出会った。それなのに、この香りにあなたを思い出すのは何故だろう。

これもプルースト効果というのだろうか?

一応断っておかなければと思うが、
別に昔の彼氏がいい香りのシャンプーを使っていたとか、
二人で過ごした部屋の香りだとか、
そういうことではない。私にはそんな経験はない。

この深くて綺麗な香りを嗅ぐと、何故かあなたを思い出すのだ。
あなたに当たり前に会うことができた毎日を。

あなたに出会ってから毎日が幸せだった。
結ばれる運命にはなかったけれど、恋愛的な意味ではなくともきっと好いてくれていた。私はあなたが大好きだった。

お別れするとき、「寂しいね」とあなたは言った。寂しい。寂しいよ。
私は結局、連絡先を聞かなかった。聞けなかった。溢れ出る感謝を手紙に書いて一方的に渡して、それで終わりにした。それでもう、私は綺麗にお別れできると思った。そのときはそう思っていたのに。

そうでも思っていないと、涙が出そうだった。今みたいにしっかりと心から寂しさを感じていたら、私はあなたから離れられなかっただろう。

あなたにもう一生会えないだろうことが寂しい。わかっていたはずなのに、それを今痛感して胸が苦しい。
あんなに物分かりが良さそうに最後のお別れをした私は今、些細なことにあなたを思い出して切なくなっているんだよ。あなたは私を忘れてしまったかな。それすらもう確かめようがないことが寂しいのです。

もう連絡の取りようがない。どこの街に住んでいるか、どこで働いているか、それしかわからない。
そう確かに、職場へ行けば会えるのだろうけれど、
あなたも別れ際、何かあったらおいでと言ってくれたけれど、
私にはそんな勇気がないのです。
あなたに心から出迎えてもらえるかわからないから怖い。会いたいのに。すごくすごく。

あーあ、私が何も気にしないで会いに行けちゃうような子だったらよかったね。

あなたの住む街に出かけてみようと思った。
会いには行かない、行けないけれど。
たまたま買ったシャンプーの香りが、私をあなたの近くへ動かそうとしている。

もう本当に二度と会えないのかな。
運命みたいな何かが現れて、いつかどこかで会えたりしないかな。

しばらく忘れて楽しく暮らしていたのに、今更こんなことを考えて寂しくなっている馬鹿な私を笑ってください。
また忘れられる日が来るまで私は、シャンプーを使う度に何故かあなたを考えてしまうでしょう。


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