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先天性心疾患を大まかに理解する②

先天性心疾患の構造を理解するときに、疾患名から覚えようとする方がいらっしゃいます。しかし、それをしてしまうと、いろいろな奇形が組み合わさったときに、「で、結局どんな風に血が流れているの?」と聞かれる、つまり「絵を描いてみて」ということなのですが、頭の中で矢印がぐちゃぐちゃに絡まる、、、ということになります。

本当に初学者に向けて(つまり、学術的な正確性はそこまでこだわらず)、超ざっくり考えてみます。

まずは正常の心臓から。

小学校、中学校の理科の復習です(笑)

正常な心臓の構造と血の流れを下図に示します。

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全身から帰ってきた黒い血液(酸素を使った後の血液)は

大静脈→右心房→右心室→肺動脈

と流れ、肺で酸素をもらい真っ赤になります。その後

肺静脈→左心房→左心室→大動脈

と流れ、全身に酸素を送り届け、また大静脈に戻ってきます。

この「赤い血」と「黒い血」は決して混合しないよう、左右の心房と心室の間は「中隔」と呼ばれる壁で仕切られていますし、動脈と静脈は互いに交通しないようにできています(つまり「上記の道はショートカット(短絡)できない」)。

また、右心室、左心室は筋肉の形から形態学的に分類できるので、見れば(どうやって??笑)区別できます。

そして、下大静脈にくっつくのが右心房(逆が左心房)、心室から出て先に分岐するのが肺動脈(逆が大動脈)です。

心臓をざっくり分けてみる。

心臓をざっくり分けてみると

① 静脈(大静脈、肺静脈)
② 心房(右、左)
③ 心室(右、左)
④ 動脈(肺動脈、大動脈)

の 4 つのパートに分かれます。そして、それぞれのパート毎で見てみると、左右の部屋で交通はしていない(ショートカットはできない)のでしたね。

上記を踏まえ、「正常な心臓である」ことは

① 右にあるものは右、左にあるものは左にあること(正しい位置関係)
② それぞれのパートの連結が正しいこと(正しい連結)
③ しきりの間に交通がないこと(ショートカット=短絡がない)

で定義されます。逆に言えば、先天性心疾患はこのどれか、または複数がおかしい、ということになります。

エコーを用いてこれらをチェックしていくことを「区分診断法」と呼びます。

形態の異常と血液の流れ方

形態がおかしくなれば、血の流れがおかしくなります。

そうすると各パートを流れる血液の「量」と「圧」が変化します。この「量」と「圧」が複雑な血行動態を作り出します。

手術はこの「血の流れ」とそれによって生じる「量」と「圧」の異常を調整していくことになります。



小児科、小児集中治療室を中心に研修後、現在、救命救急センターに勤務しています。 全てのこども達が安心して暮らせる社会を作るべく、専門性と専門性の交差点で双方の価値を最大化していきます。 小児科専門医/救急科専門医/経営学修士(MBA)/日本DMAT隊員/災害時小児周産期リエゾン