本屋の楽しさを忘れていた私が…。「TAKIBI」@谷中はすごかった(行く前の話)
子どもの頃からずっと、読書が大好きだった。家の中のあちこちに本を置き、お風呂にも持ち込んで入った。暇な時間がもったいなかったのだ。
けれど、2011年、いろんなことに行きづまった私は、マレーシアに渡る。そのとき本をすべて処分した。
マレーシアでの10年、日本語の本を一冊も読まなかった。いや、読めなかった。そのときは理由がはっきりとは分からなかった。
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2021年、私は初めて小説を書いてみた。
不思議な話だけど、何も難しく感じなかった。まったく苦しくなかった。さらさらと思うままに書けて、それは仕上がった。
生まれてはじめて書いた小説を、自費出版のつもりで送った。
『ロッキング・オン』の創刊者の一人であり、岡崎京子が投稿していたことでも知られる『ポンプ』の編集長でもあった橘川幸夫さんに読まれると、すぐに出版に向けての話になった。
「こんな人がいつか現れると思ったら、もう来ちゃったよ」
橘川さんは、興奮してそう言ったという。
それが『ジミー』だ。
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コロナ禍だの出版だのいろいろな事情で、私は帰国することにした。
11年の間、日本に戻ったのは5日しかなかったから、何でも目新しい気がした。食べ物はなんでも美味しく、スーパーのお菓子コーナーですら興奮した。
生活が落ち着いた頃、本屋に行った。
子どもの頃は、駅前の小さな本屋が大好きだった。「夏の100冊」も楽しみで、いつも持って帰っては隅から隅まで眺めまわした。
東京にいた頃は、ジュンク堂やリブロ、紀伊国屋書店など選択肢が広がった。大きな書店には、何時間でもいることができて幸せだった。
東京はなんて素敵なところだろうと思った。
退屈なときも、落ち込んだ時も、寂しいときも、いつも本屋さんに行った。そこはいつも、自分に新しい喜びを与えてくれる場所だった。
帰りの電車のなかで、さっそく本を広げた。
お酒にもグルメにもメイクにも服にも、人付き合いにもスポーツにも興味が
ない私が、はしゃいでお金を使う場所。
それは、ずっと本屋だった。
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ところが、帰国して訪れた日本の本屋は、なんだかすっかり遠いものになっていた。
『ジミー』を書いてから、日本の本を少しづつ読めるようになった。だから、もう「読まない期間」は終えていたのに、なぜだかあまり楽しくなかった。
本屋は変わらないのだから、変わってしまったのは私なのだろう。
ワクワクもドキドキもたいして感じず、手にとっても「まあいいか」と戻した。
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さて、先月のことだ。
橘川さんの新刊『メディアが何をしたか? Part2』のトークライブがあった。(出版社からの「レビュー」では、私のものを扱ってもらってる)
対談相手は、「ファザーリング・ジャパン」などで知られる安藤哲也さん。よくメディアでも取り上げられる有名人だ。
安藤さんが、東京・谷中に、シェア型棚貸し書店「TAKIBI」を開くというので、橘川さんは大きく注目しているということだった。
橘川さんはすばやく棚のオーナーになった。棚はあっという間に埋まってしまった。「あの安藤さんが動く」というので注目されているのだろう。
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トークライブの場所は、外苑前の「FLAT BASE」。室内なのに、虫の声などが聞こえる音響。こだわりの素敵な場所だ。
橘川さんと安藤さんとは、ずいぶん以前からのお付き合いだということで、そんなあたりの話から始まった。
安藤さんが考えているのは、「本を使ったエコシステム(生態系)」だという。「シェア型書店」は、基本USEDだけれど、それが入り口となれば、読書人口が増える。読書する人が増えれば、新刊も買われる。
同時に、人の流れやつながりが生まれる。棚を貸す人同士でおしゃべりをする。小さな本屋さんだから、店主とも距離が近い。気軽に行ける場所が商店街にあることで、往来がうまれる。
「シェア型書店」というのが、私は、正直、それまでピンとこなかった。
「古本ばかりでは新刊が売れないのでは」「小さな本屋さんでは選択肢が少ないのでは」「売りたい本は、その人がいらない本ではないのか」とか。。。
だけど、安藤さんの話は、そんな小さなことではなかった。
本を読む人を増やし、人とのつながりを取り戻し、地方に元気を取り戻す「本のエコシステム(生態系)」なのだから。
谷中は、まずは実験的にやっていく場所で、これを地方に広げていくという。「これまでの新刊書店・古書店とは違う」ものを作るという。
なんとまあ、、壮大なワクワクする話じゃないか。
私はすっかり引き込まれていた。
「往来堂書店」の名物店長だったこともあり、書店のことはもちろんお詳しい。そのあとも様々な活動をしてきて、大きな影響力のある安藤さんだ。
実際、橘川さんを含め、アンテナを張っている人たちが素早く反応している動きなのだ。
少し先に、地方にたくさんの「本のエコシステム」ができている未来が見えるようだ。
その大きな流れの第一歩が「TAKIBI」なのだと思うと、、注目の的なのも当然だろう。
これは、すごいことを聞いたなあ、、
↓ (本好き、コミュニテイーに関心がある人、これぜひ読んで)
そういえば、この日は少人数の会だったので、安藤さんに『ジミー』を渡すことができた。
ただ、有名人の安藤さんには献本もたくさんあるだろうし、「TAKIBI」オープン前で激務のお忙しさだろうし、、。
正直、読んでもらうのは期待できないなと思った。
(あと、安藤さんというのは、ロックな感じの人で、なんかもう、かっこいいのだ。ちょい緊張する)
それでも、顔を覚えてもらえるかもしれないし、と思って渡した。横にいた橘川さんには「まさに名刺代わりだね」と笑われた。
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それから少しして、橘川さんが「TAKIBI見学ツアー」を企画されたのを知り「私も行きます」と言った。
いよいよ「TAKIBI」を実際に見るのだ。
オープンしてまだ5日後の7月10日。
根津駅でおりた
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