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危機の構造を抜け出すには社会科学的分析能力が必須なのです。

「危機の構造 日本社会崩壊のモデル」という本を読んでいる。

この本は、小室直樹という人が書いた本で、私はこの人の本を以前准教授に教えていただいてからよく読むようになった。

最初に読んだ「数学を使わない数学の講義」という本は、大変読みやすくて面白かった。「数学とは論理学である」という主題について、宗教や政治などの社会科学的視点から小気味よい文章で綴られていて、あっという間に読めてしまうほどだった。

冒頭の本の中では、日本社会を崩壊に導く日本エリートの精神構造についての分析がなされており、それは戦時中の日本軍が破滅に向かった精神構造と何一つ変わっていないことが説明されていた。

この本の中で、その精神構造は「盲目的予定調和説」という言葉で表現されている。

ある組織目標が至上命題として定められたとき、日本官僚に代表されるエリートたちは一流の働きを見せる。その至上命題を達成するための行動にひたすら邁進し、それに無関係の物事は一切無視して、目標を達成する。そして、一度その目標が達成されれば、それ以外の要素は全てうまくいく、と考えるのである。

つまり、社会を構成する一要素としての働きは一級品であるが、その至上命題が社会全体においてどのような位置づけにあるか、その達成が社会に対してどのような影響を与えるのかについて分析したり考慮に入れたりする能力は皆無である、と断じているのである。

その代表例として紹介されているのが戦時中の日本軍組織であるのだが、その精神構造が現代日本の官僚組織にもしっかりと引き継がれており、日本はあの大戦争から、社会科学的な教訓を得た反省が一切行えていない、ということが述べられていた。

これは、もう一つの本として挙げた「数学を使わない数学の講義」の内容にも共通するところがあって、そもそも日本人が「論理」を苦手としていることと、「社会科学的分析」を苦手としていることに端を発するようだ。

特に、一見自分たちと無関係に見える事象が波及効果によって間接的に自分たちに影響を与えるような、例えば国際情勢分析など、そういう事象を代表とする社会科学的分析能力の欠如が大きな問題を生んでいるらしい。

今現在の日本のほとんど全てを牛耳っていると目される財務省官僚の精神構造が、もし戦時中の日本軍のそれと全く類似しているのだとすれば、この先の日本社会に希望を持つことはできないと思ってしまった。

このグローバル化が標準化された国際社会の中で適切に日本という国が生き残っていくためには、こうした国際社会の情勢分析や、社会科学的思考能力を持った人間を教育し、日本的組織構造に飲み込まれないリーダーを生み出すことが重要になるのだろう。

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