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説得による態度変容

割引あり

この記事は、説得に関するお話です。の説得心理学ハンドブックという本を参考に解説します。


説得とは?

「説得」という概念には、6つの特徴があると言われています。

  1. コミュニケーションであること

  2. 主として言語によって行われること

  3. 社会的影響行為の一種であること

  4. 相手の態度と行動を変化させること

  5. 自分が意図的に行う行為であること

  6. 相手にとって非強制的な行為であること

これらの特徴を踏まえると、説得とは「送り手が受け手が非強制的な文脈にいる中で、主に言語コミュニケーションを用いて受け手を納得させながら、受け手の態度や行動を意図する方向に変化させるもの」と考えることができます。

説得は社会的影響行為の一種

説得の3つ目の特徴である「社会的影響行為」について解説します。
社会的影響行為は、「物理的手段を用いる行為」と「相互作用的手段を用いる行為」に大別することができます。

物理的手段を用いる行為は、武力、暴力、金品などを用いて他者に影響を及ぼす行為です。
例えば、テロ、脅迫、賄賂などによる影響行為が挙げられます。

相互作用的手段を用いる行為は、言語行動と非言語行動からなるメッセージを用いて他者に影響を及ぼす行為です。
説得は、相互作用的手段としての社会的影響行為になります。
ちなみに、説得以外にも、多様な影響行為が存在するので、後ほど解説します。

説得と、それ以外の社会的影響行為とを区別する基準には、7点あると考えられています。

変化させたい相手の反応水準

1つ目は「変化させたい相手の反応水準」です。
説得は、内的反応である態度変容を重視しますが、命令、指示、要請、承諾といった各方略は外的反応である行動変容を重視し、内的反応である態度変容に必ずしも重視しません。

社会的文脈の強制度

2つ目は「社会的文脈の強制度」です。
説得は非強制的な社会的影響行為です。
説得を受容するかどうかは相手の自由意志によります。
説得には、相手に受容や拒否の選択肢があるということです。
命令や指示は、相手に受容を強制するものなので、相手に受容や拒否の選択肢がない。

相手を納得させるための論拠

3つ目は「相手を納得させるための論拠」です。
命令、指示、要請、承諾の各方略は必ずしも論拠を含むわけではありませんが、説得には相手を納得させる「論拠」が含まれます。

情報内容の真偽

4つ目は「情報内容の真偽」です。
説得に使用される情報の内容は真実であることが暗黙の前提となっています。

情報の移動範囲

5つ目は「情報の移動範囲」です。
説得では、情報の移動範囲が当事者間(自分と相手との間)に限定されます。
例えば、デマのような現象は不特定多数の人々の間を連鎖しますが、説得にはこのような連鎖はないことが前提です。

ほかの相互作用的手段との併用

6つ目は「ほかの相互作用的手段との併用」です。
これは、例えば、取引、交渉、討論、葛藤解決といった各方略では複数の相互作用的手段から成り立っています。
説得は、その中で一つの役割を担っているに過ぎません

非相互作用的手段との併用

7つ目は「非相互作用的手段との併用」です。
この点は、洗脳やマインド・コントロール、悪徳商法といった社会的影響行為と説得を区別する基準になります。

洗脳やマインド・コントロール、悪徳商法といった社会的影響行為は説得的要素を備える相互作用的手段のほかに、身体拘束、薬物投与、情報遮断、睡眠妨害といった非人道的手段を使用しています。
説得という社会的影響行為は、その一部の構成要素に過ぎません。しかも、洗脳やマインド・コントロール、悪徳商法といった社会的影響行為では、虚偽の情報を利用することがあるため、「説得」という概念と区別されます。

説得によるコミュニケーション

説得を目的に行われるコミュニケーションは、説得コミュニケーションと呼ばれています。

説得コミュニケーションは、①誰が、②何を、③どのような方法で、④誰に伝達し、⑤その影響力がどうであったのかという対人コミュニケーションの5つの要因から考えることができます。

これらの5つの要因は、深田(1998)によると、①送り手、②メッセージ、③チャネル、④受け手、⑤効果性という5つの要因を意味します。

説得コミュニケーションでは、「送り手」が頭の中で思考する説得の内容を言語に変換してメッセージを生成します。これを「記号化」と呼びます。

送り手によって記号化されたものが「メッセージ」です。メッセージは言語情報(言葉や文字など)と非言語情報(表情やしぐさなど)から構成されていますが、説得に関するメッセージは言語情報が非言語情報に比べて優位です。

メッセージは「チャネル」を経由して受け手に伝達されます。
チャネルは、メッセージが運ばれる「感覚器官(視覚、聴覚、聴覚)」と「メッセージを運ぶ媒体(パーソナルメディア、マスメディア)」を含みます。
受け手は、送り手が記号化したメッセージを受け取り,そのメッセージを頭の中で読み解きます。これを「解読」と呼びます。
受け手は、送り手が記号化したメッセージを解読した時に、どのように感じたか、何を思ったかなど、受け手との関係性に及ぼす影響力について評価します。これを「効果性」と呼びます。

以上のことをまとめると、説得コミュニケーションは以下のように図解することができます。

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