タイプの女性:健康的な人
ーー 閑静な住宅街。
路面の落ち着いた喫茶店。席数はかなり少ない。
美咲は、あー…やっと見つけた。と
小さくつぶやき店のドアを押した。
「あ、美咲ちゃん?来てくれてありがとう
遠かったでしょ?ごめんね。座って!」
声の主の男を見た美咲は、息を呑んだ。
「拝見したお写真の通り、お写真以上に
かっこよくてびっくりしました…」
照れ隠しをするようなジェスチャーを
した男は、美咲を席に座るように促し
会話を続けた。
「ここは叔父が、カフェの真似事を
しようとして内装や調度品まで
集めたんだけど、そのままになってるから
たまに僕が友達を呼ぶときに使ってるんだ」
◆◇
男は美咲と、マッチングアプリで知り合った。
男は甘いマスクはもちろん、一族が医者を
している事を前面にアピールし、
なかなかに”楽しんで”いた。
今回の”獲物”が、この美咲だ。
「あ、紹介するね。彼は白井。
ここで出すものは彼に任せてる。
この前のアレ、
美咲ちゃんに淹れてあげて」
◆◇
店内を見回す美咲を、ジッと見つめる男。
美咲は運ばれてきた白井の淹れた
ハーブティを口に運ぶ
「美咲ちゃんは、顔色いいんだね。
もうちょっと近くで見せて。
肌のつやもいいし。
タバコも吸わないもんね。」
「やめてください!ちょっと恥ずかしいです…
夜も早く寝ますし。ジョギングも好きで。
お酒もお祝いの時くらいかな。
赤ワインを少し。」
「健康的なんだね。
ちょっと変なこと言ってもいい?」
「え、なんですか?」
「ちょっと、変な趣味なのかな。
女性がアッカンベーをするところを
見るのが好きなんだ。」
「もう、私にどれだけ恥ずかしい思いを
させるんですか!一瞬だけですよ。」
アッカンベー!
と、言いながら舌を出し
右目の舌を引っ張った瞬間、
美咲は突然眠りに落ち、テーブルに伏した。
◇◆
血色、舌、目から見ると、問題なさそうだな…
まとまった金が今回は手堅く
入りそうだ…と、つぶやく男。
「おい、白井!
血液、心電図、一通り
手早く調べて、大きな問題が
なさそうなら運べ!早く!」
人間は、臓器はもちろん
髪から血液、皮膚、目玉に至るまで
活用される市場は広がり
かなりまとまった金になる。
男の好きな女性のタイプは
健康的な人。
(fin)
** 自分でも気に入っている作品です。
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