廣畑達也

書籍編集者。書店員、書店営業を経て現職。生きがいは書店めぐり・本屋活動。魂にはエレカシ…

廣畑達也

書籍編集者。書店員、書店営業を経て現職。生きがいは書店めぐり・本屋活動。魂にはエレカシ。経済性と社会性、都市と地方、テクノロジーと人間、そして人と人。二極化がますます進む世界で、「間」にある大事なことを伝えて/届けています。ここでは、考えすぎて溢れてきたことを書き綴ります。

最近の記事

一人称の経済へーー社会起業家を10年追いかけて見えてきたこと

■なぜ人は「きれいごと」だと思うのか 「いいことしてますね」 私はこれまで、編集者として「社会起業」「ソーシャルベンチャー」を10年以上にわたって取材し、これからの経済や社会のあり方を考えてきた。だが、そうした自分のライフミッションについて説明するとよく投げかけられるのが、冒頭の言葉。しかも、言外にこうした疑いの気持ちを感じることもあって少し切なくなることもある。 「いいことしてますね(でもそれってきれいごとでは?)」 経済性と社会性をともに満たす社会的企業の、どこに

    • 入稿から下版まで、フルリモートで1冊つくって気づいたことと、最後に一度だけリアルでやった「ある作業」について

      6/17配本で、『Spotify――新しいコンテンツ王国の誕生』という本を刊行する。Spotifyの誕生からこれまでをまとめた、世界で初めての本(スウェーデン語)の翻訳書。 しかし、今から書くのはその宣伝ではなく、それどころか内容とも関係のない製作過程についての個人的なエピソード、だ。 いや宣伝しろよ、という関係各所からの声が飛んできそうだが、なんでそんなことを書こうと思ったかというと、 「入稿から下版まで、在宅勤務の状態(フルリモート)でこなした」 にもかかわらず、

      • 『共感資本社会を生きる』を編集した先に待っていた世界(その2)

        “農村生活は詩を生み出しますが、都市は物語の発展を促します”  まったくのジャケ買いで入手したマリオ・バルガス=リョサの、『プリンストン大学で文学/政治を語る』。のっけからこちらを見透かしたような言葉に出会い、しびれた。  というのも、『共感資本社会を生きる』の対談の後編を秋田県で行った時の感覚がぶわっとよみがえってきたからだ。真夏の畑で感じた、地面から身体を伝って湧き上がってくるあの名状しがたい感情――あれは、詩だったのか。そう思うと、ストンと腹落ちした。  本をつく

        • 『共感資本社会を生きる』を編集した先に待っていた世界(その1)

           2019年11月、担当した『共感資本社会を生きる』という本が発売となった。取材から半年と少し、そして発売から約4か月。その間、担当編集者自身に、いったい何が起こったのか。その変化を一度まとめてみたくて、勢いで書きはじめてみることにした(どんな本やねん、と思った方は以下のリンクから)。なんと2本立て。 編集者としての直感。「あ、このふたりは……」 編集者をしていると、「この人とあの人が出会ったら、きっと面白いだろうな」とよく思う。そんなふたりをつなげる楽しさ、そしてその瞬間

        一人称の経済へーー社会起業家を10年追いかけて見えてきたこと

        • 入稿から下版まで、フルリモートで1冊つくって気づいたことと、最後に一度だけリアルでやった「ある作業」について

        • 『共感資本社会を生きる』を編集した先に待っていた世界(その2)

        • 『共感資本社会を生きる』を編集した先に待っていた世界(その1)

          書き手から読み手へ。今、改めて考えたい「本が届く」ということ

           街の本屋も閉まり、いよいよAmazonでも入手しづらいことが多くなってきた。図書館も閉まっているので、編集者としては資料が手に入らないのが痛いところだし、出版社としてはつくっても届ける手段はなくなっていくことを意味するので、まさに危機的状況。そんななか、さまざまな取り組みが動いている。書店さんが次々とオンラインショップを立ち上げたり、そうした書店さんを紹介する版元や編集者が現れたりといった動きには、本当に頭が下がる(里山社さんやナナロク社さんのnote参照)。今後は、自らネ

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          ルワンダの空を飛ぶ”医薬品”――Ziplineに見る「これからの物流」

           先日見かけた1つの投稿。WIRED編集長を務めた後、黒鳥社を立ち上げた若林恵さんのポスト。  この投稿に、「ついに来たか!」と興奮したのだが、その理由を書いていたら、Ziplineについてのこれまでの整理にもなったため、せっかくだからと公開してしまうことにした。 ドローン×医療品×ルワンダ Ziplineは、簡単に言えばドローンベンチャー。だが、そう聞いて僕たちが思い浮かべるようなものとは、いくつかの点で異なっている。  まずその形もよく思い浮かべるであろう複数のプロ

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